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茨城県における後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS)サーベイランス評価

(IASR Vol. 45 p163-165: 2024年10月号)

はじめに

後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS)のサーベイランスは、 1984年9月にHIV感染者やAIDS患者の発生を的確に把握することを目的として開始され、 1999年4月以降、 感染症法に基づく感染症発生動向調査において、 全数把握疾患に定められている1,2)。2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以前、 国内のHIV/AIDS届出数は年々減少傾向にあり、 HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占めるAIDS患者(いきなりエイズ)の割合は、 ほぼ横ばい3)で経過していた。COVID-19流行に対する保健所の業務負荷の増大にともない、 「保健所等におけるHIV抗体検査件数」が半数以下に減少(2019年142,260件、 2020年68,998件、 2021年58,172件、 2022年73,104件)4)し、 茨城県内保健所のHIV検査体制も縮小・休止することとなった。

本調査では、 医療機関/保健所での診断・届出、 保健所での受理・確認、 地方感染症情報センターでの確認、 中央感染症情報センターへの報告、 の一連の体制を発生動向調査に関連するシステム(以下、 本システム)とし、 COVID-19流行下においても、 本システムが、 適切に茨城県におけるHIV/AIDSの疫学情報を捉えられていたかに関する評価を行った。

方法

米国疾病管理予防センター(CDC)のUpdated Guidelines for Evaluation Public Health Surveillance Systems5)に準じ、 「安定性」、 「データの質」、 「受容性」、 「適時性」、 「代表性」の5項目について、 医療機関・保健所担当者へのインタビューによる質的評価および本システムのデータを用いた量的評価を行った。HIV感染者とAIDS患者の症例定義は、 厚生労働省エイズ動向委員会の定義に準ずるものとし、 COVID-19流行開始前を2017~2019年、 COVID-19流行開始後を2020~2022年と定義した。(国立感染症研究所 人を対象とする生命科学・医学系研究倫理審査委員会承認受付番号: 1635)

結果

COVID-19流行開始後も、 本システムはおおむね安定的に稼働しており(「安定性」)、 一部データの質の低下(「データの質」)が示唆されたものの、 総じて適切に疫学情報を捉えていた(「受容性」、 「適時性」、 「代表性」)(表1)。さらに、 本システムにより得られた情報から、 届出医療機関の傾向や患者の受診行動の変化を把握することができた(表2)。

考察

COVID-19流行開始後、 保健所検査体制の縮小・休止による届出数の減少により、 疫学情報が捉えられなくなる可能性が懸念されていた。しかし、 COVID-19流行前には届出の少なかった有床医療機関(500床未満)が、 保健所の検査機能を補完することにより、 県全体として本システムの機能を維持することができていたと考えられた。

本システムが、 COVID-19流行開始後も適切に機能したことから、 疫学情報に加え、 患者の受診行動の変化(AIDS患者の初診までの日数の延長、 いきなりエイズの割合の増加、 受検・受診先の変化)も捉えられていた。すなわち、 COVID-19流行開始後には、 HIV感染者の探知・治療が遅れていた可能性があると考えられた。保健所検査はHIV感染者の早期探知・治療に寄与していたことが示唆され、 パンデミック下においても維持できるような体制整備が望まれた。

制限

  1. 茨城県内のHIV/AIDS届出件数は年間15件程度と少ないこと、
  2. COVID-19流行開始後の保健所届出分を医療機関でどの程度補完したかは不明であること、
  3. COVID-19流行開始後の患者受検・受診行動の変化がすべてCOVID-19流行の影響によるものかは不明であること、
  4. インタビュー対象者が限定的であったこと、 が挙げられる。

謝辞: 本評価にご協力いただきました筑波大学附属病院 人見重美先生、 茨城県中央保健所、 茨城県つくば保健所の皆様に心より御礼申し上げます。

参考文献

  1. 厚生労働省, 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針, 平成30(2018)年1月18日
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000186686.pdf(外部サイトにリンクします)(PDF:266KB)
  2. エイズ予防情報ネット, エイズ発生動向調査の概要
    https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/data/2002/02nenpo/cyousa.htm(外部サイトにリンクします)
  3. IASR 44: 151-153, 2023
  4. 厚生労働省エイズ動向委員会, 令和5(2023)年エイズ発生動向年報(1月1日~12月31日)
    https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/nenpo.html(外部サイトにリンクします)
  5. German RR, et al., MMWR Recomm Rep 50(RR-13): 1-35, 2001
    https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5013a1.htm(外部サイトにリンクします)

国立感染症研究所

実地疫学専門家養成コース(FETP)   
宮崎彩子(現所属: 茨城県衛生研究所)

実地疫学研究センター
土橋酉紀 池上千晶 島田智恵 砂川富正

茨城県保健医療部疾病対策課

茨城県衛生研究所

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