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東京都における感染症媒介蚊サーベイランスについて

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東京都における感染症媒介蚊サーベイランスについて

(IASR Vol. 46 p246-247: 2025年12月号)

東京都が感染症媒介蚊対策で実施している広域サーベイランス(以下, 広域調査), 重点サーベイランス(以下, 重点調査)および東京都健康安全研究センター(以下, 当センター)敷地内の蚊の発生調査(以下, 独自調査)における2024年と2025年のヒトスジシマカの捕集状況を報告する。

どの調査も地上1.0-1.5mの高さにトラップ(ドライアイス併用)を設置した。各捕集日, 施設ごとに蚊の種類を同定し, 捕集数を計数した。

広域調査:16施設において, 6~10月まで, 月2回(計10回), トラップを午前9~10時までに1カ所2台設置し, 翌日同時刻に回収した。

重点調査:9施設において, 1施設5カ所(代々木公園のみ10カ所)に, 5~10月まで, 月2回(計12回), トラップを午前9~10時までに1カ所1台設置し, 翌日同時刻に回収した。4月, 11月は捕集網を用いて行ったが, 今回の報告では省略する。

独自調査:当センター敷地内の2カ所に毎週月曜日の14時にトラップを設置し, 火曜日の同時刻に回収後, 水曜日に回収するトラップを設置した。この作業を金曜日まで繰り返し, 通年実施した。ただし, 祝祭日(ゴールデンウィークの期間を除く)とその前日は, トラップの設置と回収は行わなかった。

結果:ヒトスジシマカは都内に広く分布することが確認され, 同じ施設でも調査年により捕集数に差がみられた(図1)。25施設中15施設で2025年の方が2024年より捕集数が多かった。また, 例外はあるものの, 多くの施設ではヒトスジシマカが優占種で, 次いでアカイエカ群が多かった(図2)。当センター敷地内での独自調査では, 6月1日~9月15日までに2021年は76匹(日最高気温が35℃を超えた日数は15日, 以下同様)2022年は141匹(23日), 2023年は190匹(40日), 2024年は244匹(44日)および2025年は227匹(46日)捕集された。少なくとも独自調査の範囲内においては, 猛暑日日数とヒトスジシマカの捕集数には, 負の相関が認められなかった。また, 初確認日(最終確認日)は2021年は5月3日(10月13日), 2022年は5月19日(11月1日), 2023年は4月29日(11月15日), 2024年は4月16日(12月12日)および2025年は5月3日であった。12月に捕集されたのは2024年が初めてであった。日最高気温が10℃をやや上回る程度の低温でも捕集される日があった(図3)。

考察:ヒトスジシマカはデングウイルス等を媒介する重要な蚊である。本調査により, ヒトスジシマカについて, 1)都内に広く生息していること, 2)発生期間が長いこと, 3)優占種であること, 4)各施設で毎年発生状況が異なること, および5)猛暑日日数とヒトスジシマカ捕集数に負の相関は認められなかったこと, が明らかになった。感染症発生時の対応を考慮すると継続して調査を行う必要がある。また, 日最高気温が10℃を超えると捕集されることから, 11月以降でも暖かい日には蚊に刺されない対策も必要である。

東京都健康安全研究センター
 井口智義 原田幸子 川嵜大志
 山口綾太 横尾愛虹 秦 和寿
 伊賀千紘 滝澤 賢 堀内詩歩
 小林 巧 長島真美 木下輝昭
 猪又明子

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