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海外帰国患者からのIMP-4カルバペネマーゼ遺伝子(blaIMP-4)保有カルバペネム耐性腸内細菌目細菌の検出事例

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海外帰国患者からのIMP-4カルバペネマーゼ遺伝子(blaIMP-4)保有カルバペネム耐性腸内細菌目細菌の検出事例

(IASR Vol. 47 p19-21: 2026年1月号)

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症は感染症法上の5類全数把握疾患である。今回, 国内での分離が稀なblaIMP-4保有CREが海外からの帰国患者から検出されたため報告する。

患者は60代男性で, 2024年に中国で脳出血により入院加療, 翌年帰国した。県内医療機関へ転院し, 入院時検査で喀痰からメロペネムの最小発育阻止濃度>2μg/mLとなるEnterobacter cloacaeが検出され, CRE感染症として届出がなされた。

当研究所にて通知1)に基づき, PCR法によりカルバペネマーゼ遺伝子探索を行ったところ, IMP-1型プライマーにより明瞭なバンドが認められた。なお, PCR試薬はTaKaRa Ex Taq® Hot Start Version(Takara), サーマルサイクラーはProFlex PCR system(Applied Biosystems)を用いた。IMP-1 allプライマーを用いたサンガー法により, プライマー領域を除く配列とblaIMP-4参照配列(NG_049203.1)との一致が確認された。β-ラクタマーゼ阻害剤を用いたディスク法はメルカプト酢酸ナトリウムで陽性, ボロン酸およびクロキサシリンで陰性, RAPIDEC CARBA NP検査キット(ビオメリュー®)では黄色となり陽性であった()。ディスク法による薬剤感受性試験の結果はに示すとおりであった。

国内で検出されるカルバペネマーゼはIMP型が多く, かつそのほとんどがIMP-1またはIMP-6であり, その他のIMP型はほとんど検出されていない2)。一方海外では, 台湾でIMP-8, タイでIMP-14など, 国によって多く検出されているIMP型が異なり3), IMP型にもいわゆる「海外型」が存在することを認識しておくことは重要である。

blaIMP-4は1990年代に香港4), 中国5)で確認され, 現在ではオーストラリアでも検出されている6)。国内では2022年に九州沖縄地方で1例報告がある2)。中国ではNDM型, KPC型に次いで多く検出されており7), 本症例は中国での入院時に感染した可能性が考えられた。

本県では, 2017年1月~2025年6月現在までに感染症発生動向調査によりカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)検出事例が71例ある。遺伝子型はblaIMP-6が65例, blaIMP-1が3例, blaKPC-2が2例で, 今回初めてblaIMP-4が検出された。blaIMP-6は県内の3保健所管内で多く, blaIMP-1は1保健所管内, blaKPC-2は海外由来の事例であった。県内の遺伝子型を把握することは, 県内で検出されていない遺伝子型を確認した際, 海外または県外からの持ち込みの可能性を疑うことができるため, 県内での拡がりをリスク評価するうえでも重要であると考える。

海外で入院加療を受けた患者からは, 国内では稀な薬剤耐性遺伝子を保有している病原体が検出される可能性があるため, 検体検査や患者管理には注意が必要である。平成25(2013)年には事務連絡8)が発出されており, 海外の医療機関において入院治療を受けていた患者を受け入れる際には, 各種の薬剤耐性菌のスクリーニングを実施するなど, 特段の注意が促されている。

今回, IMP-1型プライマーにてblaIMP-4を検出することができた。病原体検出マニュアルでは9), IMP-1型プライマーで検出される遺伝子型にblaIMP-4は含まれていないが, IMP-1型プライマーとはForward側の配列が1塩基異なるのみであることから検出することができたと考える。また, 事務連絡では遺伝子型別を必須としていないが, 今回の事例では表現型のみでは区別がつかず, 遺伝子型別を実施しなければIMP-1型であることしかわからないため, 稀な遺伝子型であるblaIMP-4を見逃していた可能性がある。IMP型であっても海外型の可能性があり, 遺伝子型別を行うことは重要である。

海外ではCPEの検出が増加傾向で10), 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策により減少していた海外との往来頻度の回復により訪日外国人数が増加しており, 海外からの薬剤耐性菌の持ち込みリスクは今後さらに高まると予想される。海外から持ち込まれた薬剤耐性菌を国内で拡大させないよう, 受け入れ医療機関における検査や院内感染対策など, 引き続き適切に対応していくことが重要である。また, 地方衛生研究所での遺伝子型別の実施は, 地域の拡がりを考慮した感染対策を実施するうえでも有用であると考える。

参考文献

      1. 「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症等に係る試験検査の実施について」〔平成29(2017)年3月28日付厚生労働省健康局結核感染症課長通知, 健感発0328第4号〕
      2. IASR 45: 129-130, 2024
      3. Matsumura Y, et al., Antimicrob Agents Chemother 61: e02729-16, 2017
      4. Chu YW, et al., Antimicrob Agents Chemother 45: 710-714, 2001
      5. Hawkey PM, et al., FEMS Microbiol Lett 194: 53-57, 2001
      6. Gordon KA, et al., J Antimicrob Chemother 75: 873-882, 2020
      7. Qi W, et al., Clin Infect Dis 67: S196-S205, 2018
      8. 「腸内細菌科のカルバペネム耐性菌について(情報提供及び依頼)」〔平成25(2013)年3月22日付厚生労働省医政局指導課・健康局結核感染症課事務連絡〕
      9. 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)令和7(2025)年4月改訂版_Ver3.0
      10. 菅原 庸ら, IASR 46: 30, 2025

三重県保健環境研究所      
 川合秀弘 大市真梨乃     
三重県松阪保健所        
 堀 康太郎 高山里香 高岡亮平

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