2025年における届出ガイドラインに則った国内百日咳の疫学のまとめ

2025年における届出ガイドラインに則った国内百日咳の疫学のまとめ
(IASR Vol. 47 p5-7: 2026年1月号)
はじめに
百日咳は, 2018年1月1日以降, 感染症法上の小児科定点把握対象疾患から5類全数把握対象疾患へと変更された。感染症発生動向調査への届出数のうち, 感 染症法に基づく届出基準に合致していることが医師届出ガイドライン(第三版)(届出ガイドライン)1)に則って確認された届出数は, 2018年11,190例, 2019年15,974例と推移していたが, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行した2020~2022年には大きく減少し, 2020年2,671例, 2021年712例, 2022年469例であった。その後, COVID-19にともなう水際対策の緩和後の2023年以降, 届出数の増加がみられ, 2025年は第1~44週(11月5日時点)で83,793例の届出があり, 2024年同時期(2,656例)の32倍となった。本稿では, 直近の2025年第1~44週に診断・届出され, 届出ガイドラインに合致した百日咳症例の疫学状況を報告する。なお, 各年の情報については「全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学」としてwebサイトに公開されている2)。
発生状況
2025年第1~44週までに届出のあった83,793例について, 性別は男性41,857例(50%), 女性41,915例(50%)であった(不明21例を除く)。年齢中央値は12(四分位範囲9~16)歳で, 10~19歳が43,529例(52%)で最も多く, 次いで5~9歳が20,377例(24%)であり, 前年までと比して大きく増加した(表)。重症化が懸念される乳児の届出数は2025年に著しい増加を示し, 0~5か月児では2019年と比較して1.9倍, 6~11か月児では3.7倍に増加した。なお, 届出時点の情報として, 発生動向調査上で確認された死亡例4例のうち2例が6か月未満児であった。感染経路が把握された13,222例のうち, 同胞(兄弟姉妹)との接触による感染が9,788例(74%)と最も多く, 次いで母親1,604例(12%), 父親1,235例(9%)と, 家庭内感染が大部分を占めた(感染経路の重複あり)。なお, 検査診断方法は2018年時点では分離・同定が123例(1%), 遺伝子検出(PCR法/LAMP法/その他)が5,483例(49%), 単一血清抗体価高値が5,035例(45%), 臨床決定は223例(2%)であった。2025年では分離・同定が971例(1%), 遺伝子検出(PCR法/LAMP法/その他)が51,509例(61%), 単一血清抗体価高値が16,489例(20%), 臨床決定は2,355例(3%)であり, 新たな診断方法として2021年に加わったイムノクロマト法による抗原検出2)は12,039例(14%)であった。
また, 百日咳届出患者(0~19歳)の都道府県別人口10万人当たりの届出数は, 高知県(1,112.6例), 新潟県(1,040.5例), 山口県(821.0例), 群馬県(813.8例)の順に多く, 届出状況には地域差が認められた(図)。なお, 重症例や死亡例に関する疫学情報のまとめも寄せられている3,4)。
まとめ
2025年は, 学童期~若年層の届出が最も多く, 家族内では同胞間の感染が多くを占めていた。学校等での曝露を契機に家族内で乳児へ感染を広げた事例も示されており, 学童期での流行が家族内での接触機会に一定の影響を及ぼしている可能性が考えられた5)。重症化リスクの高い乳児, 特に6か月未満児がいる世帯では, 家族内での感染に注意する必要がある。百日咳の感染予防には, 定期接種の対象月齢に達した乳児は速やかに百日せき抗原含有ワクチンを接種することが最も重要である。また, 流行が認められた地域では, 学童期~若年層を含め, 乳児や妊婦の周囲にいる者は, 長引く咳症状等に対し百日咳を積極的に疑い, 早期受診や感染予防行動を心がけることが求められる。
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所, 感染症法に基づく医師届出ガイドライン(第三版)百日咳, 令和7(2025)年3月26日
- 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, 感染症サーベイランス情報のまとめ・評価
- 中村祥崇ら, IASR 46: 108-110, 2025
- 加納恭子ら, IASR 46: 206-208, 2025
- Luo F, et al., BMC Infect Dis 25: 198, 2025
国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所
実地疫学専門家養成コース(FETP)
立花佳弘 清水恭子 小倉弘也 田中昌子
感染症サーベイランス研究部
小林祐介 駒瀬勝啓 高橋琢理 神垣太郎
応用疫学研究センター
塚田敬子 砂川富正
