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横断的ICU情報探索システムの改良(改良型CRISIS)における百日咳重症例(死亡例)の特徴

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横断的ICU情報探索システムの改良(改良型CRISIS)における百日咳重症例(死亡例)の特徴

(IASR Vol. 47 p37-39: 2026年2月号)

日本ECMOnetと関連学会は2019年, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時に, 成人重症呼吸不全症例の迅速な把握と解析を目的として「横断的集中治療室(ICU)情報探索システム(CRISIS)」を構築した1)。当時, 小児症例については, 別途迅速把握の仕組みが運用されていたが2), このCRISISを改良し, 小児を対象として重症急性呼吸器感染症(severe acute respiratory infection: SARI)サーベイランス機能の充実を図ってきた(改良型CRISIS)。

感染症法に基づく全数把握疾患の対象である百日咳は, COVID-19流行下においては少ない届出数で推移していたが, 2024年以降は大きく増加し, 2025年は第44週時点ですでに84,679例と, 前年の年間総届出数を大きく上回っている3,4)

また, 届出数の増加とともに2024年以降マクロライド耐性百日咳菌検出例も相次いで報告された5-7)

百日咳はワクチンで予防可能な急性呼吸器感染症であるが, 1歳以下の乳児, 特に生後6か月以下を中心に重症化することがあり, 死に至る危険もある。百日咳国内流行を受けて, 2025年4月から日本小児集中治療連絡協議会(同協議会)は, 全国の関連施設8)に百日咳の集中治療を受けた小児集中治療室(PICU)入室症例の登録を呼びかけた。本稿は, 現時点までに得られた情報の暫定的なまとめである。

対象は, 2024年12月1日~2025年12月10日までの期間に, 改良型CRISISに百日咳として登録(2025年12月22日時点)された症例とし, 年齢層, 転帰等について記述的に解析した。百日咳の定義は, 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく感染症発生動向調査の5類感染症である百日咳の届出基準に準じた9)。なお, 本研究の実施にあたり, 対象となったすべての症例について, 代諾者からインフォームド・コンセントを取得した。

対象期間中に, 全国から65例の症例情報が改良型CRISISに登録された。医療機関の所在地域別では, 北海道6例, 東北1例, 関東甲信越8例, 東海北陸9例, 関西11例, 中国四国3例, 九州・沖縄27例となり, 九州・沖縄が最多, 次いで関西であった。診断週別では, 第16週(2025年4月14~20日)が最多の6例, 第15週(2025年4月7~13日)が5例であり(), この2週間に診断された11例中6例は九州・沖縄からであった。年齢分布は, 生後28日未満10例(15%), 生後4週以上1歳未満54例(83%), 12歳以上15歳未満1例であった。

症例の性別は, 男児26例(40%)であった。体重中央値は4.1(四分位範囲3.7-4.7)kgであった。基礎疾患の情報は1例のみ(早期産児1例, 発達障害1例)であった。転帰(登録時点)については, 死亡8例(12%), 軽快46例(71%), その他/未入力11例(17%)であった()。百日せき含有ワクチンの接種歴については, 未接種が40例(62%), 不明/未入力25例(38%)であった。

改良型CRISISにより把握された, PICUへの入室を要した百日咳重症例は1例を除きすべて1歳未満であった。人口動態統計等に基づくと, 2006~2023年までの百日咳による死亡者数は年間0~3例であったが10), 本調査では2024年12月1日~2025年12月10日までの約1年間に8例が探知された。致命率がPICU入室児の12%にも及んだことは, 百日咳の流行が乳児に及ぼした影響が非常に大きいことを示している。

本まとめにおける制限は, 症例の登録が参加医療機関による自主的な対応に任されており過小評価であること, 経過中の情報登録時期については症例ごとに異なること, 内容についても欠損値等の補完が十分でないこと, 等が挙げられる。国内の百日咳に対する予防接種戦略, 流行時の集中治療体制, ならびに検査を含めたサーベイランス体制の強化や公衆衛生対応に資する議論の礎とするためには, 今後も改良型CRISISを中心に, 死亡例を含む重症例を正確に把握する体制を全国的に強化し, その実態を明らかにしていく必要がある。

本研究は日本医療研究開発機構(AMED)[課題番号25fk0108723s0301]の支援を受けている。

謝辞:改良型CRISISにご協力くださった関係医療機関の皆様に深く感謝申しあげます。

参考文献

  1. NPO法人日本ECMOnet, NPO法人日本ECMOnet COVID-19重症患者状況の集計
    https://crisis.ecmonet.jp/en-general
  2. 日本集中治療医学会小児集中治療委員会日本小児集中治療連絡協議会新興再興感染症ワーキンググループ, 日本集中治療医学会雑誌 30: 202-207, 2023
  3. 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, 百日咳の発生状況について, 2025年4月22日時点
    https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/pertussis/020/2504_pertussis_RA.htm
  4. 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, IDWR 2025年 第44号
  5. 荒木孝太郎ら, IASR 46: 41-42, 2025
  6. 谷口公啓ら, IASR 46: 42-43, 2025
  7. 中村祥崇ら, IASR 46: 108-110, 2025
  8. 日本集中治療医学会, 小児集中治療室(Pediatric Intensive Care Unit)
    https://www.jsicm.org/provider/picu.html
  9. 厚生労働省, 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について, 21 百日咳
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-23.html
  10. 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, 感染症サーベイランス情報のまとめ・評価

兵庫県立こども病院小児集中治療センター 
 黒澤寛史 長井勇樹         
聖マリアンナ医科大学小児科学講座    
 清水直樹              
国立循環器病研究センター集中治療科   
 竹内宗之              
広島大学大学院 救急集中治療医学  
 志馬伸朗 大下慎一郎         
国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所
応用疫学研究センター         
 塚田敬子 砂川富正       

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