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肺炎球菌ワクチンの国内導入経過(2025年12月現在)

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肺炎球菌ワクチンの国内導入経過(2025年12月現在)

(IASR Vol. 47 p26-28: 2026年2月号)

はじめに

肺炎球菌莢膜ポリサッカライド(以下, PS)は, 肺炎球菌の主要な表面抗原の1つで, 100種以上の血清型が知られている。現在用いられている肺炎球菌ワクチンは莢膜ポリサッカライドワクチンと結合型ワクチンの大きく2種類に分けられるが, いずれもPSが主たる標的抗原である。原則的にはワクチン含有血清型の肺炎球菌に対して免疫が誘導されることから, 疫学情報に基づき疾病負荷の大きい血清型を対象にワクチンが開発されてきた。

本稿では, 現在までに国内で製造販売承認(以下, 承認)された肺炎球菌ワクチン()の国内の導入経過をまとめた。

各種ワクチンの特長と導入経過

23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)は, PS単体を抗原として23種類の血清型に対応したワクチンである。1988年に国内でも2歳以上に任意接種が可能となった。

肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)はPSに結合させたキャリアタンパク質によって, ヘルパーT細胞が関与する免疫を誘導する。そのため, 免疫が発達段階にある2歳未満の小児においても抗体産生が期待できるほか, 免疫学的記憶が得られるなどの面で免疫原性に優れる。日本では, 2009年に7価PCV(PCV7)が初めて承認を受けた。血清型置換が進む中で, 13価, 15価, 20価と追加的に含有血清型の数を増やす形でカバー率の維持, 向上がなされてきた。

2025年8月に新たに国内承認されたPCV21は, 小児PCV導入後の成人における疫学情報をふまえた8つの固有血清型を含有する。代わりに従来のワクチンで共通していたPCV7含有血清型をはじめ, 一部の血清型を含まず, 対象血清型の範囲が従来と大きく異なるのが特徴である。

小児の定期接種

定期接種対象者は生後2~60か月未満の児で, PCVを通常, 初回免疫3回, 追加免疫1回の計4回接種する。なお, 諸外国では計3回接種, あるいは初回免疫を1回に減じた方法を採用している国もある1)

国内では, 2010年からワクチン接種緊急促進事業としてPCV7の接種が開始され, 2013年4月に定期接種に導入された。同年11月には用いるワクチンがPCV13へ変更(PCV7は同時に供給終了)され, 以後10年間あまり用いられてきた。この間にPCV13含有血清型肺炎球菌による侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal diseases: IPD)症例数は大きく減少し, ワクチン非含有血清型がIPD原因血清型の中心となった(血清型置換)2)。そうした中, 2024年にさらに多価のPCV15, PCV20が使用可能となり, 各々2024年4月, 同年10月に定期接種に用いるワクチンに位置付けられた。なお, PCV20の導入をもってPCV13の国内の販売は終了した。

高齢者の定期接種

2014年10月に高齢者肺炎球菌感染症が定期接種B類疾病に位置付けられた。65歳の者ならびに60~64歳の既定の疾患を有する者(注)を対象にPPSV23(1回接種)が用いられてきた(注:心臓, 腎臓もしくは呼吸器の機能の障害またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有する者)。

導入当初5(2014~2018)年度, さらに次の5(2019~2023)年度の計約10年間, 経過措置として対象を拡大し, 定期接種導入時点ですでに65歳を超えていた高齢者にも接種機会が設けられた。

成人においても血清型置換が観察されており, 2024年時点で15歳以上のIPD症例由来血清型のうちPCV13, PCV20, PPSV23含有血清型の割合は各々30.0%, 55.0%, 56.0%との結果が示された。こうした国内疫学情報および各種ワクチンの承認状況を踏まえ, 2026年4月から定期接種に用いるワクチンをPPSV23からPCV20へ変更が予定されている。また, PCV21についても今後, 定期接種導入に係る検討を進める方針が示されている3)

肺炎球菌感染症罹患のハイリスク者の接種

現在, ハイリスク者に関してPPSV23は2歳以上, PCV15, PCV20は全年齢, PCV21は成人に対して適応がある。ハイリスクと考えられる者の概要は各ワクチンの添付文書を参照されたい。用いるワクチンはPCV20またはPCV21, あるいはPCV15-PPSV23による連続接種が推奨されている4,5)

なお, PPSV23は2歳以上の脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防の目的で使用した場合, または一部指定の補体阻害剤投与患者に保険適応がある。

おわりに

肺炎球菌ワクチンは含有血清型の薬剤耐性肺炎球菌にも有効であり, その疾病負荷軽減, 薬剤耐性菌対策としても寄与することが期待される。多価ワクチン導入を受け, より効果的な予防には肺炎球菌血清型に関する継続的な疫学評価が重要であり, 今後の推移が注目される。


参考文献

  1. WHO, WER 39: 411-437, 2025
  2. Takeuchi N, et al., Vaccine 54: 127138, 2025
    https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2025.127138
  3. 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課, 第71回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会資料, 2025
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65000.html
  4. 日本感染症学会, 日本呼吸器学会感染症・結核学術部会ワクチンWG/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会, 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版)(最終更新日:2025年10月30日)
    https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=56
  5. 日本感染症学会, 日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会, 6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(第3版)(最終更新日:2025年4月9日)
    https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=57

  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所          
   予防接種研究部          
    森野紗衣子 高梨さやか 北村則子 鈴木 基            
   細菌第一部            
    常 彬 明田幸宏

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