コンテンツにジャンプ
国立健康危機管理研究機構
感染症情報提供サイト
言語切り替え English

トップページ > サーベイランス > 病原微生物検出情報 (IASR) > 成人侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の起因菌におけるペニシリン耐性の状況

成人侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の起因菌におけるペニシリン耐性の状況

logo35.gif

成人侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の起因菌におけるペニシリン耐性の状況

(IASR Vol. 47 p30-31: 2026年2月号)

はじめに

2013年4月より, 成人侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal diseases: IPD)が感染症法に基づく5類全数把握疾患となり, 菌株の収集と解析が進められてきた。本稿では, 成人IPDのサーベイランスデータを用い, 病型(髄膜炎・非髄膜炎)および血清型によるペニシリン耐性の現況について報告する。

対象と方法

研究班では, 15歳以上の成人IPDのアクティブサーベイランスを2013年より実施している1,2)。調査対象地域は, 北海道, 宮城県, 山形県, 新潟県, 三重県, 奈良県, 高知県, 福岡県, 鹿児島県, 沖縄県の1道9県である。分離された肺炎球菌の血清型分布とペニシリンG(PCG)に対する感受性の変化について検討した。血清型は莢膜膨化法で決定した。薬剤感受性試験は微量液体希釈法を用いて実施し, 2008年以後に使われているClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)の基準で判別した3)

結果

2025年12月時点で, 2013~2024年の間に収集された成人IPD由来株3,027株(髄膜炎403株, 非髄膜炎2,624株)が解析された。髄膜炎由来株(n=403)においては, 155株(38.5%)がペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae: PRSP)と判定された(図1A)。非髄膜炎由来株(n=2,624)においては, ペニシリン低感受性肺炎球菌(penicillin-intermediate S. pneumoniae: PISP)およびPRSPと判定される株はそれぞれ24株(0.9%)と13株(0.5%)にとどまった(図1B)。

髄膜炎由来株における血清型分布とPCG耐性の状況を図2に示す。髄膜炎由来株において最も分離頻度が高かった血清型は23A(72株)であり, 10A(60株), 35B(31株), 15A(30株), 3(30株)の順であった。これらの上位血清型において, 23Aおよび15Aで100%, 35Bで67.7%と, 極めて高率にPRSPが認められた。

髄膜炎由来株について, 肺炎球菌ワクチンによる血清型カバー率で比較した。分離株全体において, 15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)含有血清型が18.9%, PCV20含有血清型が46.9%, PCV21含有血清型が84.9%となった。一方, PRSP株に限定すると, PCV15で11.0%, PCV20で14.8%にとどまったのに対し, PCV21で88.4%と高い割合であった(図2)。これは, 高い耐性化傾向を示した血清型15A, 23A, 35Bが, PCV21に含まれているためである。なお, 23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の血清型カバー率は, 分離株全体で47.4%, PRSP株で12.9%であった。また, 既存のワクチンに含まれていない血清型6CにおいてもPCG耐性化が認められた。

非髄膜炎由来株において, PRSPは血清型19F(8株)および6B(3株)に多く認められ, PISPは19A(9株)が最多であった。PRSP株における, ワクチン含有血清型の割合は, PCV15で84.6%, PCV20で92.3%, PPSV23で92.3%と高値であった一方, PCV21では15.4%にとどまった。PISP株においても, PCV15で70.8%, PCV20で79.2%, PPSV23で79.2%であるが, PCV21では58.3%であった。PCV21含有血清型には, 19Fおよび6Bは含まれていない。

考察

肺炎球菌性髄膜炎の致命率は高く, 薬剤耐性が世界的に課題となっている4)。本研究の成人髄膜炎から分離された株において, 新たに定期接種に導入されるPCV20は, 約50%の血清型カバー率を示していた。ワクチンは肺炎球菌感染症を予防する中で, 薬剤耐性菌の抑制にも寄与することが期待されており, 高齢者における定期接種率の向上が望ましい。今後, 定期接種にPCV21が導入され広く用いられるようになれば, より高い血清型カバー率となり, 薬剤耐性菌対策においても意義が大きい。新規ワクチンの定期接種化にともないserotype replacement(血清型置換)が予想されるため, 成人IPDにおける血清型および病型別の耐性化傾向について継続的に監視・解析するサーベイランスが必要である。

参考文献

  1. Fukusumi M, et al., BMC Infect Dis 17: 2, 2017
    doi: 10.1186/s12879-016-2113-y
  2. 小児・成人の侵襲性肺炎球菌感染症の疫学情報
    https://ipd-information.com
  3. CLSI, Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing; CLSI supplement M100, 29th ed, 2019
  4. Li J, et al., Clin Microbiol Rev 38: e0008225, 2025

  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所        
   細菌第一部           
    高松優光 常 彬 明田幸宏  
   成人IPDサーベイランスグループ 
    渡邊 浩 田邊嘉也 黒沼幸治 大島謙吾 丸山貴也
    仲松正司 阿部修一 笠原 敬 西 順一郎 横山彰仁

PDF・Word・Excelなどのファイルを閲覧するには、ソフトウェアが必要な場合があります。
詳細は「ファイルの閲覧方法」を確認してください。