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肺炎球菌のペニシリン耐性メカニズムと血清型35B肺炎球菌

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肺炎球菌のペニシリン耐性メカニズムと血清型35B肺炎球菌

(IASR Vol. 47 p36-37: 2026年2月号)

13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)および23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)がそれぞれ小児と高齢者で定期接種となって10年以上が経過し, 減少したワクチン血清型に代わり臨床分離肺炎球菌の中で多くを占めるようになった非ワクチン血清型の1つが35Bである。2014年以降, 単一施設で年齢や診断にかかわらず臨床検体から分離された肺炎球菌収集株では, 35Bは最も高頻度であるとともにペニシリン低感受性〔最小発育阻止濃度(MIC)≧0.12 μg/mL〕の株が多かった(図1)。multilocus sequence typingを行うと, 2014~2023年の35B 148株のうち遺伝子型ST558が83株と最多であり, その近縁型を含めたclonal complex(CC)558がペニシリン低感受性株の大部分を占めていた。

ペニシリン耐性は, 標的である細胞壁合成酵素penicillin-binding protein(PBP)の変異によって細胞壁合成が阻害されないことで生じることが知られている。35BではPBP1A, 2B, 2Xのすべてに変異を持つ株が多い。近年, 各PBPの遺伝子変異は配列によって番号が付されており, 番号の組合せによりペニシリンのMICが推測できる1)。ST558ではpbp1a:4, pbp2b:7, pbp2x:7が主な変異配列である。

2014~2018年(I期)の35B 86株と2019~2023年(II期)の62株の遺伝子型を比較すると, ST558が最多であることに変化はないが, II期には, それまで認めなかったST156が17株検出された(図2A)。ST156は2019年に1株検出後, 2023年に13株と増加した。ST156検出株の全ゲノム解析によって作成した系統樹では, これらの株が米国で報告されている35B-ST156と同一のクローンであり, 国内で広がったことが推定された2)図2B)。

また, 35B-ST156は, ST156がST558との莢膜遺伝子の交換(capsular switching)によって血清型35Bとなったクローンであり, PBP遺伝子変異はpbp1a:4, pbp2b:12, pbp2x:7であった。全株がペニシリンのMIC≧1 μg/mLであり, さらにMIC 2 μg/mLの株が他の遺伝子型よりも高比率であったため, 結果として35B全体のペニシリンMICの上昇傾向が認められた2)

すべての肺炎球菌株のペニシリン低感受性率(MIC≧ 0.12 μg/mLの割合)は, I期の36.6%(292/797)からII期38.4%(177/461)と有意な変化はなく, MIC≧2 μg/mLに限ると4.5%から8.5%へ有意に増加していた(p=0.004)(図1)。ワクチン普及にともなってワクチン型の低感受性株は減少したが, 35Bや15A, 23Aなど, 低感受性の非ワクチン型株の割合が増加したためと思われる。さらに, 上述のような遺伝子型分布の変化も耐性率に影響を与えていると考えられる2)

世界では薬剤耐性菌感染症による死亡の増加が問題となっており, 肺炎球菌も主要な菌の1つである。2025年に血清型35Bを含む21価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV21)が日本で接種可能となったことから, 今後35Bの検出が減少するのか, また, 肺炎球菌感染症原因菌の血清型分布や薬剤感受性が全国的にどのように変化するのかが注目される。

参考文献

  1. Li Y, et al., mBio 7: e00756-16, 2016
  2. Miyazaki H, et al., Microbiol Spectr 13: e0063225, 2025

  東京医科大学微生物学分野
   宮崎治子       
  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所    
   薬剤耐性研究センター 
    中野哲志      
   細菌第一部      
    常 彬     

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