カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales: CRE)病原体サーベイランス, 2023年

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales: CRE)病原体サーベイランス, 2023年
(IASR Vol. 47 p52-54: 2026年3月号)
カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)病原体サーベイランスは, 通知(健感発0328第4号, 2017年3月28日)に基づき実施されている。本稿では, 検体採取日が2023年1月1日~12月31日として病原体検出情報サブシステムに登録された株のうち, 保菌例などCRE感染症届出患者以外からの分離株である旨が明記された株を除く1,620株(2025年12月23日現在)の概要を示す。
1,620株のうち, 1,586株(97.9%)には発生動向調査届出患者由来であることを示す発生動向報告IDの記載があり, CRE感染症届出患者1,563名由来(うち22名は複数菌株分離)と考えられた。発生動向報告IDの記載がない残る34株(2.1%)にもCRE感染症届出患者分離株が含まれうるが, その数は不明である。検査実施状況の指標として, 1,620株を, 2023年のCRE感染症の発生動向調査届出(患者報告)数2,113例(感染症発生動向調査事業年報)で除した値を報告率とすると, 76.7%であった。報告率は, 2019年の77.1%1)をピークに2020~2022年は約70%に低下していたが2-4), 2023年は2019年に近い水準まで回復した。2023年のブロック別報告率は北海道東北新潟94.4%, 関東甲信静75.0%, 東海北陸33.1%, 近畿79.5%, 中国四国91.3%, 九州沖縄87.7%となり, いずれのブロックも2022年報告率4)を上回っていた。
1,620株の分離検体は, 尿(n=451, 27.8%), 血液・髄液(n=413, 25.5%), 呼吸器検体(n=298, 18.4%), 腹腔内検体(n=155, 9.6%), 皮膚・軟部組織検体(n=102, 6.3%), 穿刺液(n=82, 5.1%), 菌種は, Klebsiella aerogenes(n=687, 42.4%), Enterobacter cloacae complex(n=437, 27.0%), Klebsiella pneumoniae(n=211, 13.0%), Escherichia coli(n=100, 6.2%), Serratia marcescens(n=53, 3.3%), Citrobacter freundii(n=19, 1.2%)およびKlebsiella oxytoca(n=19, 1.2%)の順に多く, 検体の種類および上位5菌種の順は2017年以降1-6)変わらない。
表1に, 通知に基づき地方衛生研究所(地衛研)等で実施された各検査数と陽性数を示す。1,620株のうち, いずれかのカルバペネマーゼ遺伝子陽性株は215株(13.3%)であった。この割合は, 2017年のCRE病原体サーベイランス開始以降, 最も低い値となった。カルバペネマーゼ遺伝子陽性215株におけるカルバペネマーゼ遺伝子型内訳は, IMP型160株(74.4%), NDM型36株(16.7%), KPC型8株(3.7%), OXA-48型6株(2.8%), うち1株はNDM型とOXA-48型の両遺伝子保有株であった。その他の遺伝子型として, GES型5株(塩基配列決定による遺伝子型別報告の内訳GES-24, n=4), VMB型1株(地衛研での全ゲノム解読により判明)が報告された。
IMP型陽性160株の菌種は, E. cloacae complex(n=58, 36.3%), K. pneumoniae(n=51, 31.9%), E. coli(n=21, 13.1%), K. oxytoca(n=9, 5.6%)の順に多かった。IMP型陽性株の65.6%にあたる105株(18道府県)はカルバペネマーゼ遺伝子の塩基配列決定がなされた。IMP-1は58株(14道県)ですべてのブロックより報告があった。IMP-6は44株(7府県)であり, うち28株が近畿, 13株が東海北陸, 2株が中国四国, 1株が九州沖縄からの報告であった。その他の型として関東甲信静よりIMP-11, 近畿よりIMP-19およびIMP-70がそれぞれ1株ずつ報告された。
NDM型, KPC型, OXA-48型陽性株はあわせて49株であり, カルバペネマーゼ遺伝子陽性株(n=215)の22.8%を占め, CRE病原体サーベイランス開始以降最も高い割合となった。49株は47名より分離され, うち38名(80.9%)は海外渡航歴なし, もしくは不明の患者であった。49株のカルバペネマーゼ遺伝子型および菌種の内訳を表2に示す。菌種別では, E. coli 26株(53.1%), K. pneumoniae 15株(30.6%)の順に多かった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応等の影響で, 2020年以降低下していたCRE病原体サーベイランス報告率は, 2023年には2019年の水準まで回復した。その中で, IMP型陽性株数は過去最少となった一方, NDM型, KPC型, OXA-48型陽性株をあわせた数はこれまで1-7)で最多となった。NDM型, KPC型, OXA-48型陽性株の多くが海外渡航歴のない, もしくは不明の患者から分離されており, これらの株が国内に定着しつつあることが示唆された。検出されるカルバペネマーゼ遺伝子の分布が変化する中, 今後の動向について引き続き注視していくことが重要である。
参考文献
- IASR 42: 123-124, 2021
- IASR 43: 215-216, 2022
- IASR 44: 130-131, 2023
- IASR 45: 129-130, 2024
- IASR 39: 162-163, 2018
- IASR 40: 157-158, 2019
- IASR 46: 26-28, 2025
国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所
薬剤耐性研究センター
感染症サーベイランス研究部
全国地方衛生研究所
