麻疹・風疹検査の外部精度管理(塩基配列・遺伝子型解析)

麻疹・風疹検査の外部精度管理(塩基配列・遺伝子型解析)
(IASR Vol. 47 p65-66: 2026年4月号)
厚生労働省外部精度管理事業は, 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」1)に基づき, 感染症の検査を行う公的検査施設(地方衛生研究所および保健所等)を対象として, 外部精度評価の機会を提供し, 検査の信頼性を確保することを目的としている。
本〔令和7(2025)〕年度の本事業では, 昨〔令和6(2024)〕年度に引き続き麻疹・風疹ウイルスの塩基配列・遺伝子型解析を評価対象とした精度管理が75施設を対象に実施された。盲検化された検体を各施設に送付し, 参加施設の解析手順にしたがって麻疹および風疹ウイルスゲノムの塩基配列の決定ならびに遺伝子型別判定を行うことを課題とした。
塩基配列決定の正答率は, 麻疹ウイルスで90.7%, 風疹ウイルスで82.7%であった(表)。遺伝子型判別の正答率は, 麻疹ウイルスおよび風疹ウイルスでともに98.7%であった(表)。以下に本課題で認められた主な注意点をまとめる。
塩基配列解析における注意点
(1)遺伝子型決定領域の正しい理解
シーケンス解析の波形データに問題がないにもかかわらず, それを塩基配列(テキストデータ)に変換する際の人為的なミスにより誤答となるケースが散見された。特に, 遺伝子型決定領域(麻疹:450塩基, 風疹:739塩基)を誤認しており, 前後に少しずれた領域を回答している施設があった(麻疹:3施設, 風疹:2施設)。病原体検出マニュアル2,3)等で, 正しい遺伝子型決定領域を再確認していただきたい。
(2)風疹ウイルス2断片
RT-PCR法における適切な塩基配列のトリミング
風疹ウイルスの遺伝子型決定領域は比較的長く, PCR増幅感度がやや低い。病原体検出マニュアル2)ではその改善のため, オーバーラップする前後2断片に分けて増幅し, その塩基配列をつなぎ合わせて全長配列を決定する方法を記載している。その際, オーバーラップ領域に含まれるPCRプライマー由来の配列を適切に除去する必要がある(図)。6施設でこの2断片の塩基配列のつなぎ合わせに起因する誤回答が認められた。図を参考に正しい手順の理解に努めていただきたい。
(3)シーケンスデータの品質確認
一般的に, シーケンスの読み始め付近などはデータ品質が低くなるため, PCR産物の両末端からシーケンス反応を行い, 波形データを精査したうえで品質の低い部分を用いずに配列を決定する必要がある。今回, 品質を十分に確認せずに塩基配列を決定したことによる誤回答が散見された。データの品質も考慮したうえで塩基配列を決定していただきたい。
まとめ
本年度の外部精度管理では, 昨年度の同事業と比較して風疹ウイルスの塩基配列決定の正答率がやや向上した(昨年度:73.7%, 本年度:82.7%)。昨年度の結果を受けて, ウイルス塩基配列決定法の理解が高まったためと考えられるが, それでも, 昨年度と同様の誤答が散見された。このことから, 今後も本事業を通して参加施設に評価結果や改善点をフィードバックしていくことが, 検査の信頼性を確保するうえで重要であると考えられた。
参考文献
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)
- 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル風疹 第5.0版, 令和4年(2022年)10月
- 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル麻疹(第4版), 令和4(2022)年10月
国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所
呼吸器系ウイルス研究部
中津祐一郎 大槻紀之
バイオインフォマティクス・オミクス研究部
森 嘉生 梁 明秀
