令和7(2025)年度風疹予防接種状況および抗体保有状況―感染症流行予測調査2025年度速報値から

令和7(2025)年度風疹予防接種状況および抗体保有状況―感染症流行予測調査2025年度速報値から
(IASR Vol. 47 p68-70: 2026年4月号)
はじめに
感染症流行予測調査事業における風疹抗体調査(感受性調査)は1971年度に開始されて以降, ほぼ毎年実施されてきた。本調査は風疹に対する感受性者を把握し, 効果的な予防接種施策を図るための資料にするとともに, 将来的な流行を予測することを目的として, 乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層における予防接種状況ならびに抗体保有状況の調査を行っている1)。
感染症発生動向調査における風疹の届出患者数は, 2013年(14,344例)をピークに減少し, その後一時的に増加に転じたが, 2020年以降は再び届出数が減少し, 2020年101例, 2021年12例, 2022年15例, 2023年12例, 2024年7例(暫定値), 2025年11例(暫定値)であった2)。2018~2019年の流行では, 患者の多くは過去に風しん含有ワクチンの定期接種の機会がなく, 風疹に対する抗体保有割合(以下, 抗体保有率)が低い成人男性であった。そのため, この年齢群に対する対策として2019~2021年度まで, 1962(昭和37)年4月2日~1979(昭和54)年4月1日に生まれた男性(2023年度45~61歳, 2024年度46~62歳)が風疹にかかわる定期の予防接種(A類疾病)対象者(第5期)として追加された3)。その後, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生にともなう受診控え等の影響を考慮し, 2021年12月に2024年度末(2025年3月末)まで延長された。
今回は, 2025年度調査における, 風しん含有ワクチン接種状況および抗体保有状況について報告する。
調査概要
2025年度調査は, 北海道, 宮城県, 茨城県, 栃木県, 群馬県, 千葉県, 東京都, 神奈川県, 新潟県, 石川県, 長野県, 三重県, 山口県, 高知県, 福岡県の15都道県で実施され, 対象者は4,148名(男性2,193名, 女性1,955名)であった。抗体価の測定は各都道県衛生研究所において, 主に7~9月に各地域で採取された血清を用いて赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition: HI)法により行われた。予防接種歴は調査時点における接種状況が調査された。
風しん含有ワクチン接種状況(図1)
2025年度調査では, 1回以上接種者(1回・2回・回数不明を含む)の割合は, 1歳の男児で79%, 女児で80%, 2歳の男児で81%, 女児で95%であった。20歳以上群における接種割合(以下, 接種率)は男性が22%(各年齢群の接種率:2-34%), 女性が47%(3-73%)であり, 男性で低かった。風しん含有ワクチンの接種歴が不明であった者の割合は, 0~19歳では男性が3-54%, 女性が0-50%, 20歳以上群では男性が58-82%, 女性が24-94%であり, 20歳以上群では20歳未満群に比べ接種歴不明者が多い傾向であった。第5期接種対象者を含む45~64歳の各年齢群男性の1回以上接種者の割合は, 10-15%であった。
風疹HI抗体保有状況
HI法で陽性と判定されるHI抗体価1:8以上を有する者の割合は, 移行抗体の消失にともない乳児期前半から後半にかけて低下し, ワクチン接種の実施とともに上昇し, 2025年度の調査では2歳で89%であった(風疹抗体保有状況の年度比較2025)。
2025年度調査におけるHI抗体価1:8以上の抗体保有率は, 生後0~5か月で38%, 生後6~11か月で3%, 1歳で76%であった。2歳以降の年齢・年齢群では, おおむね90%以上(89-100%)であった。男女別に比較をすると, 女性では2~64歳の年齢・年齢群において, おおむね90%以上(83-100%)であった。男性では45~69歳の各年齢群で90%を下回り, 45~49歳群が87%, 50~54歳群89%, 55~59歳群88%, 60~64歳群が88%と, 女性に比べて低い傾向であった(風疹抗体保有状況の年度比較2025の図中凡例赤■2025参照)。
1962年4月2日~1979年4月1日生まれ(2025年度47~63歳)の者は, 女性のみが風疹の定期接種対象者となっていたことから, この年齢群の男性の風疹抗体保有率が低い傾向がみられていた。2016~2020年度調査では継続して80%前後で推移しており, 定期接種の機会があった1979~1989年度生まれの男性と比較して低かった。2021年度調査では抗体保有率の増加がみられ, 2022~2025年度においては80%後半を維持し, 1979~1989年度生まれの男性や同年代の女性と比較して低いものの, その差は減少していることが確認された(図2)。
まとめ
2025年度調査では, 第1期接種後の男女ともに2歳以降において, おおむね90%前後の高い抗体保有率を示したが, 2歳男児で抗体保有率が85%と, 例年に比べ低い結果となった。2歳男児のワクチン接種率は81%であり, 抗体保有率と近似していた。単年齢の調査対象数が少なくサンプリングバイアスを否定できないが, ワクチン接種率および抗体保有率を継続して注視する必要がある。
風疹の追加対策(第5期定期接種)対象者(2025年度47~63歳)の抗体保有率は, 開始前と比較し増加が認められ, 定期接種の機会があった1979~1989年生まれの男性とほぼ同等となり, 男女差は減少する傾向が継続して確認された。1962~1978年度生まれの男性を対象とした風疹の第5期定期接種は2024年度末で終了したが, 期間内に抗体検査を受けた陰性者のうち, 「ワクチンの偏在等に起因して接種対象期間内に定期の予防接種を受けられなかった4)」と考えられる場合は特例措置の対象となる可能性があり, 引き続き接種の機会は提供されている。今後も本調査を継続して実施することが重要と考えられた。
参考文献
- 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, 感染症流行予測調査について(アクセス日:2026年3月1日)
- 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, 風疹に関する疫学情報:2026年1月14日現在
- 厚生労働省, 風しんに関する特定感染症予防指針_風しん, 2025
- 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課, 麻しん及び風しんの定期の予防接種に係る対応について, 事務連絡令和7(2025)年3月11日
2025年度風疹感受性調査実施都道県
新潟県保健環境科学研究所
田澤 崇 昆 美也子
神奈川県衛生研究所
大屋日登美 政岡智佳
三重県保健環境研究所
矢野拓弥 川合秀弘
長野県環境保全研究所
加茂奈緒子 橋井真美
福岡県保健環境研究所
古谷貴志 中島淳一
高知県衛生環境研究所
北添詩乃 下元かおり
山口県環境保健センター
松本知美 安本早織
石川県保健環境センター
小橋奈緒 北川恵美子
東京都健康安全研究センター
岡田若葉 天野有紗 三宅啓文
群馬県衛生環境研究所
須永 蒔
北海道立衛生研究所
三津橋和也 駒込理佳
栃木県保健環境センター
赤松玲子 人見美子
千葉県衛生研究所
八幡 瞳 磯部秀太 藤浪裕士
茨城県衛生研究所
渡邉颯太 本谷 匠
宮城県保健環境センター
佐藤弘隆 沖田若菜 佐々木美江
国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所
バイオインフォマティクス・オミクス研究部
森 嘉生 坂田真史 梁 明秀
予防接種研究部
林 愛 山田華蓮 新井 智 鈴木 基
