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血清型別不能事例を含むウェルシュ菌食中毒事例における全ゲノム解析の有用性

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血清型別不能事例を含むウェルシュ菌食中毒事例における全ゲノム解析の有用性

(IASR Vol. 47 p94-95: 2026年5月号)

はじめに

ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は大量調理施設を原因とする集団食中毒の主要病原菌である。従来の血清型別やパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法では型別不能例や分解能の限界があり, 疫学的関連性の評価が困難な場合がある。近年, 全ゲノム解析(WGS)は高分解能な株間比較を可能とする手法として有用性が報告されている1-3)。本市で発生した血清型別不能事例に対しWGSを実施し, 有用性を検討した。

事例概要および方法

令和7(2025)年10月, 市内で仕出し弁当を原因食品とする事例が発生した。本事例は疫学調査および検査結果に基づきウェルシュ菌による食中毒と判断され, 行政処分が行われた。患者3群および調理従事者群由来のC. perfringens 11株(cpe陽性, Hobbs型別不能)を解析対象とした。Ubuntu環境上で一連のゲノム解析を実施した(図1)。

結果

全株のアセンブリ品質は解析に支障のない水準であった。毒素遺伝子colA, cloSI, nanH, plc, cpeおよび耐性遺伝子tetA(P ), tetB(P )が全株で検出され, 患者株と調理従事者株で遺伝子プロファイルに差異は認められなかった()。multilocus sequence typing(MLST)では全株がST-149, cgMLSTでは全株がcgST-415に分類された。コアゲノム単一塩基多型(SNP)解析では最大5 SNP以内であり, 全株が極めて近縁であった(図2)。

考察

本事例では従来の血清型別では型別不能であったが, WGSにより株間の遺伝学的近縁性を客観的に評価でき, 単一汚染源由来の可能性が強く示唆され, 毒素・耐性遺伝子も同時に把握できた。一方, 同一ST/cgST内でも多様性が存在し得るため, 解析結果は疫学情報とあわせて解釈することが重要である。本解析は一般的なLinux環境で再現可能であり, 高度な計算基盤を必要としないことから, 地方衛生研究所における実装は十分現実的である。

まとめ

血清型別不能事例に対するWGS解析は, 分子疫学的裏付けを与える手法であり, 今後の食中毒調査に有用と考えられる。

倫理的配慮

本解析は行政検査の一環として分離株を対象に実施したものであり, 個人情報を扱う研究には該当しない。

謝辞:本事例におけるゲノム解析手法の構築にあたっては, 「地方衛生研究所におけるゲノム検査等に係る人員体制及び人材育成法を確立するための研究」(研究代表者:貞升健志)におけるゲノムデータ解析研修の内容を参考にした。また, SNP解析には国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所・細菌第一部により公開されているSNPcasterを活用した。

 

参考文献

  1. Kiu R, et al., Microb Genom 5: e000297, 2019
  2. Wu L, et al., Curr Res Food Sci 11: 101149, 2025
  3. Saito K, et al., JJID 78: 47-50, 2025

  宇都宮市衛生環境試験所    
   若月 章 高橋祐子 長島史子 竹村明紀 安野良一
   中田友理 関 哲
       

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