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魚類に寄生する粘液胞子虫の関与が疑われる有症事例の発生状況について

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魚類に寄生する粘液胞子虫の関与が疑われる有症事例の発生状況について

(IASR Vol. 47 p95-96: 2026年5月号)

目的

静岡市では, 魚類に寄生するKudoa属の粘液胞子虫が原因と疑われる有症事例が, 2016年以降3件発生している1)。粘液胞子虫に関しては, 病原性を疑われているものが数種ある2)が, すでに食中毒の病因物質に指定されているKudoa septempunctata以外は実態が明らかではないため, 調査を実施した。

方法

2025年3月, 粘液胞子虫の関与が疑われた有症事例の有無等について, 全国の都道府県, 政令市, 保健所設置市に照会した。対象期間は2020~2024年までの5年間とし, 141の自治体の回答を集計した。

結果

対象期間において事例が最も多かったのがKudoa iwataiで, 32件(患者数350人)であった()。2020年以降, 4-6件/年の発生があり, 2024年は13件(同155人)であった。地域別では, 中部地方の19件(同188人)が最多で, 次いで中国・四国地方の6件(同91人)であった()。北海道地方, 東北地方, 九州地方では発生がなかった。報告された事例で提供されていた魚種は, サワラが15件, スズキ(セイゴを含む)およびタイ・マダイがそれぞれ10件であった。季節を問わず発生があったものの, 12月が7件で最も多く, 7~12月で全体の7割を占めていた。

行政対応については, 32件のうち, 食中毒として報告された事例が6件, 有症苦情として処理された事例が26件であった。前者に関して, 残品からK. iwataiが検出(顕微鏡または遺伝子)された事例が4件, 患者検便から検出(遺伝子)された事例が1件, いずれからも検出されていない事例が1件で, すべての事例が病因物質は不明とされていた。後者では, 残品から検出された事例が15件, 患者検便から検出された事例が11件で, うち5件は残品と検便の両方から検出されていた。

その他の粘液胞子虫では, Kudoa hexapunctataに関する事例が15件(患者数206人), Unicapsla seriolaeに関する事例が9件(同136人)発生していた。K. septempunctata以外の粘液胞子虫については, 検査体制が整っていない自治体もあった。

考察

粘液胞子虫の中では, K. iwataiが関与する事例が最も多く, 特に中部地方で有意に多く発生していることが示唆された。また, 同期間のK. septempunctataによる食中毒は69件(患者数684人)3)であり, 集計方法が異なるため単純比較はできないが, 半数近くに及ぶ事例が発生していた。発生件数の推移をみると2024年が最も多かったが, コロナ禍の影響で, 2020~2022年頃までは食中毒件数自体が減っていたことも考慮しなければならない。

K. iwataiは多様な食用魚種に寄生するが, 魚の身に目視できるシストを作るという特徴がある。当市では, 予防啓発による防止効果が高いと考え, チラシの配布やYouTube動画の配信など, 機をみて啓発に努めている。その他の粘液胞子虫は目視で判別できないため, 発生件数は比較的少ないものの, 生鮮で生食する限り予防対策が困難である。被害を少しでも軽減するためには, 有症事例の発生状況の分析や, 寄生魚種の汚染率や分布域を明らかにすることに加え, 流通段階における簡便な検出方法の開発など, さらなる調査研究が望まれる。

本調査にご協力いただいた全国自治体の関係部署の皆様に深く感謝いたします。

参考文献

  1. 浅沼貴文ら, IASR 43: 97-99, 2022
  2. 八木田健司, IASR 46: 12-13, 2025
  3. 厚生労働省食中毒統計

  
  静岡市保健所食品衛生課          
   浅沼貴文 山崎朝子 高橋直人 中川美乃里 佐藤征教(現・中央卸売市場)
 

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