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マクロライド耐性百日咳菌とBordetella holmesii共感染の2症例―神戸市

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マクロライド耐性百日咳菌とBordetella holmesii共感染の2症例―神戸市

(IASR Vol. 47 p99-100: 2026年5月号)

はじめに

本邦における百日咳は, 感染症法に基づき, 百日咳菌によって起こる急性の気道感染症と定義されている。一方で, 百日咳菌の類縁菌であるパラ百日咳菌やBordetella holmesiiもヒトに百日咳様症状を引き起こすことが知られており, 検査診断における病原体の鑑別が必要となっている。これまでの国内サーベイランスでは, 百日咳患者から百日咳類縁菌が低頻度であるものの検出されている1)。また, 2010~2011年に宮崎県で発生した百日咳の集団事例においては, 百日咳様症状を呈した複数の患者からB. holmesiiが検出されたことが報告されている2)。今回, 神戸市において2025年の百日咳流行中に, マクロライド耐性百日咳菌(MRBP)とB. holmesiiの共感染を認めた2症例を検出したため, その詳細について報告する3)

共感染症例1

症例1(2025-O-90)は, 2025年3月に市内クリニックにてBioFire® SpotFire® Rパネル(ビオメリュー・ジャパン株式会社)(以下, Rパネル)により百日咳と診断された。神戸市健康科学研究所へ搬入された鼻腔ぬぐい検体からDNA(スワブ由来DNA)を抽出し, 各遺伝子検査を実施した(表1)。4Plex real-time PCRにおいては, 百日咳菌の標的であるIS481のみが陽性となり, Loopamp 百日咳菌検出試薬キットD(栄研化学)によるLAMP法でも百日咳菌陽性を確認した4)。また, 23S rRNA遺伝子のシーケンス解析5)によりA2047G変異が検出され, 百日咳菌感染株がMRBPであることが推定された。しかしながら, 培養検査では, 百日咳菌は分離されず, B. holmesiiが分離された。分離されたB. holmesiiは, Etestを用いた薬剤感受性試験では, エリスロマイシン, クラリスロマイシン, アジスロマイシンの最小発育阻止濃度はそれぞれ, 0.125μg/mL, 0.38μg/mL, 0.064μg/mLであった。

そこで, RパネルにおけるB. holmesiiとの交差反応性について検討した。Rパネルは百日咳菌のf im2遺伝子を標的としているが6), 分離したB. holmesii株については, PCRにより f im2遺伝子を保有していないことを確認した。さらに, B. holmesii株のDNAを含浸させた綿棒を検体としてRパネルで測定した。その結果, B. pertussis Tohama I株のDNAを含浸させた綿棒は百日咳菌陽性と判定された一方, B. holmesii株のDNAを含浸させた綿棒は陰性であった。以上より, Rパネルにおいて百日咳菌とB. holmesiiとの交差反応性は認められなかった。

さらに, 4Plex real-time PCRではrecA遺伝子がB. holmesiiの標的となっているが, 本症例では陰性であった。そこで, スワブ由来DNAからB. holmesiiを検出する目的で, B. holmesii 特異的LAMP法およびB. holmesii IS1001-like(hIS1001)配列を標的としたqPCR(以下, hIS1001-qPCR)を実施した7)。その結果, LAMP法は陰性であったが, hIS1001-qPCRは陽性を示した(表2)。以上の結果から, 本症例はMRBPとB. holmesiiの共感染であったことが確認された。

共感染症例2

共感染症例の後方視的調査として, 2025年1~7月までの期間に, 神戸市健康科学研究所へ搬入された百日咳患者または疑い患者の鼻腔ぬぐい検体181検体について, hIS1001-qPCRを実施したところ, さらにもう1検体(2025-O-97)が陽性となった(表2)。当該検体からは培養検査で百日咳菌のみが分離され, エリスロマイシン, クラリスロマイシン, アジスロマイシンの最小発育阻止濃度が>256μg/mLと高度耐性を示した。以上の結果より, 2例目の共感染であったと推定された。

考察

2025年の百日咳流行下において, 神戸市ではMRBPとB. holmesiiの共感染が2症例確認された。宮崎県のB. holmesiiの事例では, ヒト間伝播の可能性が示唆されている2)。今回の共感染2症例の発症日は6日の差しかなく, 学年は異なるものの同一小学校に通学していたことから, 学校コミュニティ内でMRBPとB. holmesiiが同時に流行していたことが示唆された。

本研究の2症例では, 4Plex real-time PCRにおけるB. holmesiiの標的遺伝子であるrecAはいずれも陰性となり, 同法ではB. holmesii感染を検出することができなかった。一方, 分離されたB. holmesiiは全ゲノム解析の結果, recAは1コピーのみ有するのに対し, hIS1001は68コピー有することが明らかとなった3)。このことから, hIS1001配列を標的としたqPCRは, B. holmesiiをより高感度に検出できることが示唆された。以上の結果より, より正確な疫学的サーベイランスを実施するために, hIS1001を標的にしたB. holmesii検出系の導入を検討する必要があると考えられた。

謝辞:検体提出にご協力いただいた神戸市内医療機関および神戸市保健所保健課の皆様に深謝いたします。また, B. holmesii特異的LAMP試薬をご提供いただいた, 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所・細菌第二部第一室・大塚菜緒先生に深謝いたします。

参考文献

  1. Kamachi K, et al., New Microbes New Infect 8: 70-74, 2015
  2. Kamiya H, et al., Emerg Infect Dis 18: 1166-1169, 2012
  3. Komatsu S, et al., Research Connections 1: vmag011, 2026
    https://doi.org/10.1093/rescon/vmag011
  4. 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル 百日咳 第4.0版
  5. Wang Z, et al., Clin Microbiol Infect 20: O825-O830, 2014
  6. bioMérieux, BIOF iRE SPOTF iRE Respiratory(R)Panel
    https://www.biof iredx.qarad.eifu.online/ITI/JP/all?keycode=ITI0103
  7. Tatti KM, et al., J Clin Microbiol 49: 4059-4066, 2011

  神戸市健康科学研究所第2衛生研究部        
   小松頌子 岩本智花 中西典子
  たかのこどもクリニック    
   高野智子         

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