加熱不十分なハンバーグを原因とするO157による食中毒事例について

加熱不十分なハンバーグを原因とするO157による食中毒事例について
(IASR Vol. 47 p81-82: 2026年5月号)
令和7(2025)年9月に, 島根県内の飲食店が提供した食事(ハンバーグ)を原因とする腸管出血性大腸菌O157(以下, O157)による食中毒が発生したため, その概要を報告する。
概要
2025年9月8日県内保健所あてに, 2件の医療機関から食中毒疑いの通報があった。それぞれの医療機関に計3名の患者が入院しており, うち1名についてはO157陽性であることが判明した。患者調査の結果, 県内にある飲食店(以下, 当該施設)にてハンバーグを共通して喫食しており, その他にも患者が多数いることが確認された。最終的に当該施設を8月29日~9月8日に利用した客1,128名(ハンバーグの提供食数換算)のうち, 102名が症状を呈していた(図1)。
原因食品
患者全員が共通して当該施設が調理したハンバーグを喫食しており, 当該ハンバーグは厨房で表面を加熱した後, 客の目の前でホールの従事者が, ナイフとフォークを用いて半分にカットし, 鉄板に押し付けて焼いてから提供する。厨房での加熱調理は, チャコール(焼き目をつける焼き器)3分, グリドル2分の計5分間, 蓋をかぶせて加熱する。なお, いずれの加熱機器も300℃程度の温度であったが, 当該ハンバーグの中心温度は30℃程度であったことが, 後の検証により判明した。客席での最終加熱はハンバーグの焼き加減にミディアムとウェルダンがあるが, 特に焼き時間や中心温度を定めているわけではなく, 肉の厚みに応じて担当従事者の押し加減で調節している。この押し焼きについても, 保健所の検証時には中心温度が80℃に達する場所もあれば, 60℃に満たない場所もあり, 加熱ムラが確認された。これらのことから, 加熱不十分なハンバーグが原因食品であると推定した。
汚染経路等
従事者検便の結果, 従事者13名全員がO157陰性であったことから, 調理従事者由来で食品を汚染させた可能性は極めて低いと考えられた。9月8日に採取した食品検体ではO157は陰性であったが, 後述の原料肉の遡り調査の結果, O157に汚染された牛ミンチ肉を使用していた可能性があった。
原料肉の遡り調査
当該店舗でハンバーグに使用した牛ミンチ肉の流通経路は以下のとおり(図2)。
流通経路において, A社がミンチ肉の製造に使用した牛ミンチ材はB社またはC社から仕入れており, ロットごとに仕入れ元の管理ができておらず, 牛ミンチ材の遡り調査はできなかった。なお, A社, B社およびC社の流通先, 販売先等において同様の苦情情報は確認されなかったが, 原料肉仕入れ先(A社)の出荷状況から, 8月28日~9月3日あたりまで汚染されていた同ロットの牛ミンチ肉が小分けで卸されていた可能性があった。
考察
当該施設においては営業開始から30年, ハンバーグの調理および提供方法を変更せず営業を行ってきた。しかし, その調理方法が危害分析重要管理点(hazard analysis and critical control point: HACCP)に沿った衛生管理計画に基づくものではなく, 従事者の経験則に頼り, さらに繁忙により通常を上回る提供食数であったとのことから, 結果として汚染されていた食肉を十分に加熱することができず, 食中毒を発生させるに至ったと考えられる。また, 今回の事案において, O157を病因物質と断定したが, 当該病因物質は感染症法において3類感染症に指定され, 就業制限等の食品衛生法以外の対応が求められる。本県においては, 本事案探知後同日中に行政処分を判断し, 被害拡大防止および直ちにその病因物質を周知したことにより, 適切な医療の提供や, 迅速な二次感染防止対策を講じることができた。このことから, 日頃より食品衛生担当者および感染症担当者間の連携を図ることが可能な体制整備, 事案を想定した訓練や意見交換による自治体間の迅速な連携を図ることが可能な組織づくりが今後も重要であると考える。
島根県健康福祉部薬事衛生課
廣江純一郎 永井 元 柳楽大気 久武怜市
松江市・島根県共同設置松江保健所
日野揚之 高山 優
