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修学旅行における腸管出血性大腸菌O157食中毒事例について

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修学旅行における腸管出血性大腸菌O157食中毒事例について

(IASR Vol. 47 p82-83: 2026年5月号)

2025年10月, 沖縄県内の大量調理施設において, 患者202名の腸管出血性大腸菌(EHEC)O157による集団食中毒事例が発生した。本事例は広域に及ぶ複数団体の受け入れ施設で発生しており, その概要について報告する。

事例の概要

2025年10月22日に神奈川県川崎市より修学旅行で沖縄県を訪れた高校生等が腹痛, 下痢, 血便等の症状があり, そのうち5名からEHEC O157が検出されたとの内容で調査依頼があった。その後24日には, 山形県山形市および長野県長野市からも修学旅行から戻った生徒より同様の報告があり, これら3団体の共通食として沖縄県南部保健所管内の飲食店が浮上した。当該施設は, 同月25日より自主休業を開始。当該施設は観光名所に隣接し, 主に修学旅行等の団体客に利用される大量調理施設で, 24日までの利用客を確認したところ, 他2団体においても同様の患者がいることが確認された。

南部保健所は, 患者の便からEHEC O157が検出されたこと, 症状および潜伏期間がEHEC O157のものと一致すること, 共通食が当該施設で提供した食事のみであること, から食中毒と断定し, 10月29日に営業禁止措置を講じた(営業禁止は12月17日に解除)。

調査結果等

 1.症例情報および微生物学的検査

調査段階の患者は5団体であったが, 腹痛, 下痢, 血便, 発熱, 吐き気, 嘔吐のいずれかの症状を呈した者, かつEHEC O157陽性者が確認された4団体を本事例の対象とし, 最終的な患者数は202名, O157陽性者は110名となった。平均発症率は23.3%(9.8-39.2%)()。入院を要する事例はみられたものの重篤事例は確認されなかった。また, 分離株の反復配列多型解析(multilocus variable-number tandem-repeat analysis: MLVA)typeの多くがMLVA type 25m0468を示し, 一部typeが異なる株も同一のMLVA complex 25c055に属しており, 単一の汚染源が強く示唆された。

 2.原因食品の追及

当該施設は, 飲食店の他に弁当の仕出しも行っていたが, 全4団体の共通メニューとして「タコライス」と「沖縄そば」が特定された。10月14~24日の施設利用団体におけるタコライスと沖縄そばの各摂取とEHEC O157陽性者発生との関連をみたところ, 沖縄そばに比べ, タコライスを含んだメニューを喫食した際のリスク比が有意に高く, 患者のうちEHEC O157陽性者は全員タコライスを喫食していた。また, タコライスの喫食時間を起点とした各団体の潜伏期間は, 4日±10時間でEHECの潜伏期間と矛盾しなかった。

これらのことから, タコライスが原因食品であると強く疑われたが, 検食や施設のふきとり検査, 調理従事者便からEHEC O157が検出されなかったこと, 原材料の遡り調査において同様の苦情が確認されなかったこと, 施設の衛生管理状況から食品の二次汚染や交差汚染の可能性が除外できなかったことから, 特定の食品を原因と断定するには至らなかった。

 3.施設調査

施設調査にあたっては, 原因施設が大量調理施設であったため, 県内重点監視施設の監視を所管する沖縄県中部保健所と調査を行った。

当該施設は, 重点監視施設として沖縄県中部保健所にて定期的に監視指導が行われ, 危害分析重要管理点(hazard analysis and critical control point: HACCP)に沿った衛生管理は一部実施されていたものの, 施設調査の結果, 衛生管理の不備が確認された。本事例に起因する事項では, 未加熱で提供する野菜の取り扱い不備, 鼠族昆虫対策不足, 調理器具の管理不足, 貯水槽の清掃不足, 衛生的な手洗いが徹底されておらず, 記録も不十分であった。

特に未加熱で提供する野菜の取り扱いでは, 洗浄槽やザル等の器具の使い分けがなく, 下処理は洗浄のみで消毒工程がなかった。野菜の洗浄からカットまでの工程は, 使用する数日前から行われることがあり, 千切り後のレタスは水を張った容器にて使用日まで冷蔵保管されていた。盛り付け後は, 客に提供するまで温度管理がされていない室内で保管されていた。また, 盛り付け後の余った野菜は, 別の容器に移して冷蔵保管して翌日以降も使用されることもあり, 先入・先出が徹底されていなかった。

考察

本事例は, 疫学調査からタコライスの喫食がEHEC O157陽性と有意に関連していたが, 適切な衛生管理および記録が不十分であったため, 二次汚染や交差汚染の可能性を除外できなかった。また, 本事例発生前後において調理工程, 調理従事者, 使用設備等に変わった点は確認されず, 患者の発生が一時期に限定されていることから, 発生要因は原材料由来の汚染であった可能性が高いと考える。原材料に付着していたEHEC O157を調理工程で汚染を広げ, 盛り付け後の不適切な温度管理により, 提供までの間にEHEC O157が増殖したと推測した。事件発生当時は1日800食以上を調理し, 店内飲食と弁当の仕出しの調理, 年中無休の状況であり, 過剰負担が調理工程におけるリスク管理の形骸化を招いた一因と考えられる。処理能力に見合った受注管理が衛生管理に不可欠であることを改めて浮き彫りにした。観光立県である本県には, 団体客が利用する大量調理施設が多くあるなかで, 今後の食中毒防止にむけ監視指導体制を見直す機会となった。

調査にご協力いただいた各自治体担当者の皆様, 調査開始時よりデータ分析等にご協力をいただきました国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所関係者の皆様に深く感謝をいたします。


  沖縄県南部保健所         
   菅野育代 宜保公子 松田聖子 長棟美幸            
  沖縄県中部保健所         
   仲宗根猛智 西田佳子 上原寛明 久高 潤 宮里義久       
  沖縄県衛生環境研究所       
   高良武俊 大西 真       
  沖縄県薬務生活衛生課       
   宮城 匡 上原ゆきの 山内 努 平良勝也            
  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所         
   実地疫学専門家養成コース(FETP)
    藤井英里 喜久里昂哉     
   応用疫学研究センター      
    中村夏子 小林祐介 八幡裕一郎 島田智恵 砂川富正

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