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感染症発生動向調査に届け出された腸管出血性大腸菌感染症における溶血性尿毒症症候群, 2025年

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感染症発生動向調査に届け出された腸管出血性大腸菌感染症における溶血性尿毒症症候群, 2025年

(IASR Vol. 47 p89-90: 2026年5月号)

溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome: HUS)は腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli : EHEC)感染症の重篤な合併症の1つである。本稿では, 2025年に感染症サーベイランスシステムの感染症発生動向調査および病原体検出情報に報告されたEHEC感染症のHUS発症例に関してまとめる。

EHEC発生状況(2026年3月2日現在届出数)

感染症サーベイランスシステムの感染症発生動向調査サブシステムに基づくEHEC感染症の届出数(2026年3月2日現在届出数)は, 2025年〔診断週が2025年第1~52週(2024年12月30日~2025年12月28日)〕は4,338例(うち有症状者2,472例:57.0%)であった。有症状者の性別は, 男性1,101例, 女性1,371例で, 年齢群・性別にみると0~4歳が271例(男性133:女性138), 5~9歳が175例(同88:87), 10~14歳が158例(同89:69), 15~64歳が1,591例(同680:911), 65歳以上が277例(同111:166)であった。

HUS発症例

EHEC感染症例のうち届出時にHUSの記載があった症例は59例であった。性別は男性15例, 女性44例で, 女性が多かった(1:2.9)。年齢は中央値が7歳(範囲:1-90歳)で, 年齢群別では0~4歳が20例(33.9%)で最も多く, HUS発症例の年齢は10歳未満が約半数を占めていた。

有症状者(2,472例)に占めるHUS発症例の割合は全体で2.4%, 年齢群別では0~4歳が7.4%で最も高く, 次いで5~9歳が6.3%の順であった()。

EHEC診断方法と分離菌およびO抗原凝集抗体

HUS発症者の診断方法は, 便からの菌の分離が46例(78.0%), 血清からのO抗原凝集抗体の検出が10例(16.9%), 便からのVero毒素(VT)検出が3例(5.1%)であった()。

46例の便から分離された菌のO血清群(O群)とVT型は, O群別ではO157が41例(89.1%), O8とO121が各1例(2.2%)で, VT型ではVT2陽性株(VT2単独またはVT1&VT2)が37例(80.4%)であった。

感染原因・感染経路

確定または推定として報告された感染原因・感染経路(以下, 重複を含む)は, 経口感染が33例(55.9%), 接触感染が5例(8.5%), 動物・蚊・昆虫等からの感染が3例(5.1%), 「記載なし」または「不明」の報告が22例(37.3%)であった。経口感染と報告された33例中21例に肉類の喫食の記載があり, うちユッケ2例(推定感染地域国外:1例), 生レバー3例(推定感染地域国外:2例)の報告があった。

臨床経過(症状・転帰)

届出に記載されたHUS発症例の臨床症状は, 血便52例(88.1%), 腹痛52例(88.1%)が多かった。また痙攣5例(8.5%), 昏睡3例(5.1%), 脳症は6例(10.2%)であった。届出時の死亡は2例(3.4%)であった。なお届出時以降の死亡は捕捉できず, 過小評価となっている可能性がある。

病原体検出情報(2026年3月19日現在報告数)

感染症サーベイランスシステムの感染症発生動向調査サブシステムに報告されたHUS発症例から分離された病原体の一部が病原体検出情報サブシステムに登録されており, 2025年にはHUS症例17例からの報告があった。報告されたO群はO157が16例, O8が1例であった(本号3ページ特集関連資料1)。反復配列多型解析(multilocus variable-number tandem-repeat analysis: MLVA)法による解析結果が入力されていた報告は13例であった。その内訳は25m0226:2例, 20m0043, 20m0185, 23m0161, 23m0311, 25m0079, 25m0157, 25m0182, 25m0204, 25m0265, 25m0277, 25m0290各1例であった。

考察

2025年に届け出られたEHEC感染症の有症状者数(2,472例)は, 2024年(2,294例)と比べて178例増加した。有症状者に占めるHUS発症例は59例(2.4%)で, 2024年の73例(3.2%)と比べ減少していた。これは, 2012~2024各年のHUS発症例数と割合〔58-112例(2.6-4.3%)〕と比較して低い値であった。

感染原因・感染経路に関する記載では, 2025年においても例年同様「肉類の喫食」が一定数報告され, うちEHEC感染リスクが高い生肉喫食の記載も依然として数例報告されていた。さらに, 推定感染地域が国外の症例においても生肉喫食に関する記載が, 2024年の2例に引き続き2025年も3例認められた。

EHEC感染にともなうHUS等の重症化の機序は不明な点が多いため, EHECの感染そのものを予防することが重要である。EHECの感染予防策としては, 国内外にかかわらず生肉および加熱不十分な肉の喫食を避けること, 基本的な食中毒予防策の実施を励行することが重要である。この他にも, 患者や動物との接触感染予防のための手洗いの実施などの基本的な感染症対策を励行することも大切である。


  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所         
   感染症サーベイランス研究部第一室

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