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浜松市内精神科病院におけるOXA-48カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌感染症の集団発生事例

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浜松市内精神科病院におけるOXA-48カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌感染症の集団発生事例

(IASR Vol. 47 p113-115: 2026年6月号)

端緒

浜松市内精神科病院からX年10月にカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales: CRE)感染症患者の届出があり, 浜松市保健環境研究所(保環研)の検査でOXA-48カルバペネマーゼ遺伝子(blaOXA-48)陽性Escherichia coli(以下, OXA-48-E.coli)と判明した。X+1年5月, 同病院から2例目のOXA-48-E.coliのCRE感染症届出があった。保健所が同室者等に対してスクリーニング(SC)検査を実施したところ, さらに8例検出されたことから, 集団発生事例と判断された。同年7月に保健所が浜松医科大学医学部附属病院(浜松医大)および国立健康危機管理研究機構(JIHS)に対して, 実地疫学調査および感染対策向上に対する支援を要請し, 全体像・感染源・感染経路の検討および感染対策の助言を目的とする実地調査が実施された。

病院概要

当該病院は浜松市内の精神科病院であり, 主に精神科的治療を実施していたが, 一部で内科的治療も実施していた。感染対策向上加算の取得はなかった。

事例

症例定義を「X年4月1日~X+1年8月25日までに当該病院に入院中または入院歴のある患者の検体からOXA-48-E.coliが検出された者」とした。X+1年8月25日調査時点で計35例の症例(感染症症例3例, 無症状病原体保有者32例)が確認された。女性が24例(69%), 年齢中央値は90歳(範囲:73-99歳)であり, 分離検体は便が32例(91%), 尿が3例(9%)であった。転帰は入院中が25例(71%), 死亡退院が8例(23%), 生存退院が2例(6%)であった。

入院中症例25例の滞在病棟は, 精神一般病棟(内科治療あり)が13例(52%), 認知症病棟(生活自立なし)が9例(36%), 認知症病棟(生活自立あり)が3例(12%)であった(8月25日調査時点)。

ほぼ全面的な介護を要する「要介護度3」以上が24例(69%)であり, 医療・介護処置は, おむつ交換が35例(100%), 摘便が30例(86%)と多かった。一方, 尿道留置カテーテル使用は16例(46%)であった。また, 入浴が31例(89%)あり, うち介助なしは1例(3%)のみであった。

観察および聞き取り調査では, 入浴時の患者移送物品が患者ごとに十分に清拭消毒されていなかったことを確認した。また, 不十分な標準および接触予防策が観察された。入院直前に海外で侵襲的医療処置を受けた患者の受け入れはなかった。

JIHSにおいて実施した分離菌株10株の薬剤感受性試験結果は, 前述のCRE感染症届出例の2株以外はメロペネムに感性〔最小発育阻止濃度(MIC)<2μg/mL〕であった。他の薬剤感受性は, 全株でタゾバクタム/ピペラシリンは高度耐性(MIC>4/64μg/mL), ミノサイクリン感性(MIC≦4μg/mL), レボフロキサシン耐性(MIC>4μg/mL)であった。全ゲノム解析を実施した10株は, いずれも過去に国内分離株で報告のないsequence type 11672であった。保有する薬剤耐性遺伝子は全株で一致し, 完全長配列を得た1株でblaOXA-48が染色体上に2コピー確認された。

当該病院での対応

浜松医大による支援のもと, 病院が感染対策を強化した。保環研で便検体およびカルバペネマーゼ産生菌検出用選択分離培地クロモアガーTM mSuperCARBA(関東化学)を用いた当該病院の入退院時を含む病棟SC検査と, 当該病院入院歴のある関連施設入所者の検査を実施したところ, 52例が追加陽性となった(重複なし)()。病院が感染対策支援を受けて感染対策強化を開始して約1年が経過した, X+2年10月以降3カ月間, 市外医療機関からの転院時検査陽性例を除いて新規陽性例を認めず, 病院内の伝播は認められないとし, 同年12月に本事例の対応を終了した。

地域での対応

地域での拡がりを評価するため, 保健所から市内医療機関に協力を要請し, 下記のSC基準に基づき, 薬剤耐性E. coli検出状況をモニタリングした。その結果, X+1年11月~X+2年12月までに上記以外の陽性例は認めなかった。

SC基準:便検体を使用し, 菌種は大腸菌に限定する。この際, 培地はmSuperCARBAを用いる。臨床検体では保菌を含む大腸菌すべてを対象とする

  1. タゾバクタム/ピペラシリン高度耐性(MIC>4/64μg/mL), かつ, レボフロキサシン耐性(MIC>4μg/mL)
  2. メロペネムのMICが0.25μg/mL以上

1または2に該当した場合は, 保環研にてPCR検査を実施

考察

本事例は, 国内で初めて探知されたOXA-48遺伝子陽性腸内細菌目細菌の集団発生事例であった。感染源は外部からの持ち込みの可能性が高く, 同一と推定されるOXA-48-E.coliが排泄処理や入浴にかかわる手技等によって院内で感染伝播した可能性が考えられた。また, 浜松市内での拡がりは認められなかった。菌株の多くで, メロペネムの薬剤感受性が感染症発生動向調査の届出のために必要な検査所見を満たさなかったことから1), その検出に注意を要する2,3)

謝辞:本対応にご協力くださいました浜松市内精神科病院関係者の皆様に深謝申し上げます。

参考文献

  1. 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所, 病原体検出マニュアル カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)
  2. Lee YL, et al., J Antimicrob Chemother 79: 1581-1589, 2024
  3. Kaneko M, et al., J Infect Chemother 29: 530-533, 2023

  浜松市保健所生活衛生課      
   江馬康夫 秦 なな       
  浜松市保健環境研究所       
   鈴木麻希            
  浜松医科大学医学部附属病院感染制御センター         
   名倉理教 鈴木利史 澤木ゆかり 古橋一樹            
  国立健康危機管理研究機構     
   国立国際医療センター      
   国際感染症センター       
    窪田志穂 木村英恵 守山祐樹 大曲貴夫           
   国立感染症研究所        
    薬剤耐性研究センター      
     林 航 菅原 庸 松井真理 鈴木里和 菅井基行      
    実地疫学専門家養成コース(FETP)
     折目郁乃 地主 勝      
    応用疫学研究センター      
     加藤博史 島田智恵 砂川富正

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