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北海道3保健所設置管内で発生したNDM-5メタロ-β-ラクタマーゼ産生大腸菌の菌株解析(2025年)

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北海道3保健所設置管内で発生したNDM-5メタロ-β-ラクタマーゼ産生大腸菌の菌株解析(2025年)

(IASR Vol. 47 p115-116: 2026年6月号)

はじめに

2025年3月19日~4月22日の期間, 北海道内の異なる保健所設置管内に所在する3つの医療機関から, 海外渡航歴のない入院患者3例がカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症〔メロペネムの最小発育阻止濃度(MIC)値が2μg/mL以上〕として届出された。これらの症例から分離された菌株(それぞれ菌株A, B, Cとする)は, いずれもNDM-5メタロ-β-ラクタマーゼ産生大腸菌であった。NDM-5メタロ-β-ラクタマーゼ産生大腸菌は, 道立保健所設置管内ではこれまで報告がなく, 同時期に複数の医療機関から分離されたことから, 同一クローンの拡がりが疑われた。そこで北海道立衛生研究所において, これら3株の薬剤感受性試験および全ゲノム解析を実施したので報告する。

方法

菌株A(血液分離株), 菌株B(尿分離株)および菌株C(尿分離株)について, β-ラクタム系の新規抗菌薬であるセフィデロコル1,2)の薬剤感受性を, Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)基準に基づくディスク拡散法およびドライプレートを用いた微量液体希釈法により評価した。また, MiSeqおよびNanoporeシーケンサーを用いてゲノム解析を実施し, 薬剤耐性遺伝子や耐性に関与する遺伝子変異の検索, multilocus sequence typing(MLST)解析, pMLST解析およびプラスミドレプリコンタイプの同定を行った。さらに, NDM-5メタロ-β-ラクタマーゼ遺伝子(blaNDM-5)を保有するプラスミドの全長塩基配列を決定し, 構造比較により伝播状況を検討した。

結果・考察

薬剤感受性試験の結果, 菌株Aおよび菌株Bはセフィデロコルに感性(それぞれ, 阻止円径20mm, 21mm, MIC値は4μg/mL, 2μg/mL)であった。一方, 菌株Cは阻止円径6mm, MIC値は>32μg/mLで高度耐性を示した。

遺伝子変異の検索の結果, 菌株Cではセフィデロコル耐性に関与するとされるペニシリン結合タンパク質(PBP)3の4アミノ酸(YRIN)挿入が認められた3,4)。菌株AおよびBでは, この挿入は認められなかった。また, 同耐性への関与が報告されている鉄輸送系関連遺伝子cirAの変異は, 3株いずれにも認められなかった。

MLST解析の結果, 菌株AはST405, 菌株BはST2011, 菌株CはST224であり, 3株はいずれも異なる系統に属していたことから, 単一クローンの拡散は否定された。

これら3株のプラスミドの解析から, いずれもblaNDM-5はIncFプラスミド上に存在した。プラスミド塩基配列長, pMLST型および薬剤耐性遺伝子プロファイル()はそれぞれ異なっていた。同一あるいは類似プラスミドの水平伝播によるblaNDM-5の拡散を示唆する所見は得られなかった。一方で, blaNDM-5を含む薬剤耐性遺伝子周辺領域の構造は類似性が認められ, IncFプラスミド群のなかでblaNDM-5遺伝子が他の薬剤耐性遺伝子とともに拡散すると同時に遺伝的多様性が形成されたことが示唆された()。

2025年5月以降, 道立保健所設置管内ではNDM-5メタロ-β-ラクタマーゼ産生大腸菌によるCRE感染症の新規発生は報告されていない。しかし, 複数のクローンがすでに道内に存在する可能性があり, さらに今回分離された3株中1株がセフィデロコル耐性を示したことから, 今後もCRE感染症の監視および分離株に対する病原体サーベイランスの継続, ならびに地域医療機関への適切な情報提供が重要である。

参考文献

  1. Wang L, et al., Drug Resistance Updates 72: 101034, 2024
  2. SHIONOGI, 新規シデロフォアセファロスポリン系抗生物質製剤「フェトロージャ点滴静注用1g」の国内における製造販売承認取得について, 2023年11月30日
    https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2023/11/20231130.html
  3. Wang Q, et al., Microbiol Spectr 10: e0267021, 2022
  4. 中山孝子ら, IASR 45: 103-104, 2024

  北海道立衛生研究所感染症部  
   佐藤 凜 川端 結 小川恵子

       

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