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沖縄県八重山地域におけるレプトスピラ症の発生状況と検査診断および保健所の対応, 2025年

沖縄県八重山地域におけるレプトスピラ症の発生状況と検査診断および保健所の対応, 2025年

(IASR Vol. 47 p137-138: 2026年7月号)

国内のレプトスピラ症の約60%は沖縄県での感染が推定され, 県内では沖縄本島北部と八重山地域における感染例が多い1,2)。2025年に沖縄県八重山保健所に届出されたレプトスピラ症例について, 患者聴き取り調査および分離菌株解析を実施したので報告する。また, 当所でのレプトスピラ症対策の現状を報告する。

レプトスピラ症患者の聴き取り調査結果概略

2025年の当所管内におけるレプトスピラ症届出21例のうち20例について, 詳細な行動歴や河川入水時の状況などの聴き取り調査を実施した。推定感染地域については, 発生届において記載がなかった3例を含め20例全例で確認された()。また, 推定感染日については, 発生届に記載がなかった3例のうち1例は詳細不明であったが, 1例は推定感染日が確認された。残り1例は感染機会が複数日あったため, 特定が困難であった。次に, 推定感染日の記載があった17例の行動歴の確認から, 7例は感染機会が複数日あり, 5例については届出記載日とは異なる日に感染した可能性が示唆された。聴き取り調査から得られた推定感染日および発病日から, 感染から発病に要した日数は中央値11日(範囲:9-14日:n=12), 発病から初診までに要した日数は中央値3日(範囲:0-6日:n=20)であった()。

レプトスピラ症例の検査診断

21例の検査診断の結果, 16例はPCR法により病原性レプトスピラの遺伝子(flaB)が検出された()。PCR陰性5例のうち, 血清診断が3例, 病原性レプトスピラの分離同定陽性が4例あった。県立八重山病院および県立八重山病院附属診療所では, 疑い例診察時にレプトスピラ分離用培地に速やかに検体を接種し, 衛生環境研究所にて分離同定を試みている。21症例中17例からLeptospira interrogansが分離され, 血清群は多様であった()。

八重山地域におけるレプトスピラ症診断の課題として, 検体を沖縄本島の衛生環境研究所まで航空便で送付するため, 診断までに時間を要することが挙げられる。そこで, 2025年より県立八重山病院では, 一部の疑い例について自院の検査室でreal-time PCR法による診断を実施することとした。その結果, PCR陽性例では初診から診断までの日数が中央値1日(範囲:0-5日:n=7)であった。従来通り衛生環境研究所で実施したPCR陽性例では, 初診から診断までの日数が中央値3日(範囲:2-8日:n=9)であった。自院での検査は診断を早め, 治療および保健所の積極的疫学調査の着手を早めることにつながる可能性が示された。

八重山保健所管内のレプトスピラ症集団事例

事例1:石垣市の河川での川遊びが原因と考えられる学生の集団感染(計5例)が確認された(表の症例12-14, 16, 183)。国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所・実地疫学専門家養成コースの協力のもと調査を実施した。患者らは複数日にわたり2つの河川への入水歴があったが, これらの河川を同時期に利用した非発病集団の行動歴との比較から, 9月j日のA河川での感染の可能性が示唆された。また, 患者らのレプトスピラ症に関する知識は限定的であることが確認され, 教育関係者と協力した感染予防の啓発活動の必要性が示された。

事例2:2025年第33週に計5例の届出を受理した(表の症例4-8)。聴き取り調査により, 症例7および8は, 7月f日に西表島のB河川のイベントに別グループとして参加し, 河川水との接触による感染機会があったことが判明した。症例4と6は異なる事業所の観光ガイドで, 両名とも西表島の複数の河川での入水履歴があったが, 7月f日にはB河川を利用していた。4名の発病日はB河川利用の9日または10日後であったため, 潜伏期間においてもB河川での感染に矛盾はみられなかった。また聴き取り調査では, 4名とも入水時の河川Bが大雨の影響で増水し濁っていたことを記憶しており, 下腿に擦り傷あったことも確認された。同一河川での感染が疑われる4名の分離株は, それぞれ異なる血清群であった()。特に, 同一イベント参加症例(症例7, 8)であっても感染血清群が異なることから, 同一環境が複数の血清群に汚染されている可能性が示唆された。

八重山保健所のレプトスピラ症対策の取り組み

当所は行動歴などの聴き取り調査の全例実施を目指している。感染地域(入水河川を含む)を詳細に聴き取ることで, 感染地域および感染日の推定の精緻化に努めている。また, 感染例が多い竹富町西表島で活動する観光ガイドへの啓発活動を強化した。2025年5月から竹富町役場と連携し, 町条例に基づく観光ガイド義務講習会においてレプトスピラ症に関する講習を行った(全10回, 189名受講)。講習会では, レプトスピラ症の感染リスクや, 受診時に行動歴を医師に伝えることで適切な治療に繋がる可能性があることを周知し, ツアー参加者にも情報提供をすることを依頼した。観光ガイドから参加者に対する注意喚起により, 観光客等が居住地に戻った後に発症した場合も, 居住地での早期診断に繋がる可能性があると考える。

参考文献

  1. 越湖允也ら, IASR 44: 29-30, 2023
  2. 喜屋武向子ら, IASR 37: 105-106, 2016
  3. 沖縄県, レプトスピラ症の集団発生事例について, 令和7(2025)年10月16日
    https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/036/773/20251016_reptospirosis.pdf

  
  沖縄県八重山保健所        
   比嘉幸緒 真玉橋理子 増田ちえみ 三浦芳典 竹本のぞみ 大西 真 
  沖縄県衛生環境研究所       
   平良遥乃 柿田徹也 久手堅 剛 照屋盛実            
  沖縄県立八重山病院        
   仲間美香 町田絵都 八幡照幸       

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