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海外の麻疹―2025年の流行状況について

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海外の麻疹―2025年の流行状況について

(IASR Vol. 47 p124-125: 2026年7月号)

2025年の麻疹症例報告数は, 世界保健機関(WHO)が分類する6地域のうち, アメリカ地域で増加した一方で, ヨーロッパ地域で減少しており, 世界全体では2024年に比べて23%減少の276,240例であった(疑い症例数612,774例)1)。2024年における世界全体の麻しん含有ワクチン第1期接種(MCV1)の接種率は84%, 第2期接種(MCV2)の接種率は76%であり, MCV2としては2000年以降最高水準となった2)。しかし, 地域によってばらつきが大きく, 麻疹に対する集団免疫の獲得に必要な95%以上には到達していない。感染症数理モデルによる推定では, 年間の麻疹症例数は2000年の約3,800万人から2024年には1,100万人へと減少し, 麻疹による死亡者数も78万人から9万5千人へと減少しており, いずれも2000年以降で最も低い年間推定値となっている。また, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前の2019年の水準と比較すると, 推定症例数は8%増加した一方で, 死亡者数は11%減少している。これは, 近年, 疾病負担が致命率の低い中所得国へと移行していることを反映した結果と考えられる2)。一方で, かつて麻疹排除が認定された高所得国においても, 近年, ワクチン接種率が停滞あるいは低下している国や, 全国的な接種率が高いようにみえるものの接種率の地域差が大きく, 流行に対して脆弱な集団が一定数以上存在する国では, 麻疹の再流行がみられている。なお, 2026年2月末時点での麻疹症例報告数は30,135例である1)。現在, 世界各国で流行しているウイルスの遺伝子型はB3型とD8型の2種類である。本稿では, WHOが分類する6地域における2025年の麻疹流行状況およびその遺伝子型について報告する。

アメリカ地域(AMR):麻疹症例報告数1,3)は, 2024年の464例から2025年には14,477例へと急増し, その多くはカナダ(5,070例), 米国(2,283例), メキシコ(6,434例)からの報告であった。特にカナダでは, 2024年の142例から5,070例へと急増しており, この流行により麻疹排除認定が取り消された4)。AMRで流行しているウイルスの遺伝子型はD8型が主流であった。2024年におけるAMRでのMCV1, MCV2の接種率は, それぞれ88%, 77%であった5)。2026年2月までの同地域の症例報告数は8,384例である。

ヨーロッパ地域(EUR):2025年の麻疹症例報告数は33,998例であり, 2024年の127,412例から約75%の減少となったものの, 依然として流行は継続している6)。この減少は, 各国で実施された流行対策に加え, ワクチン接種率の低い地域社会でウイルスが広く蔓延する過程で, 麻疹に対する感受性人口が徐々に減少したこと, の両方を反映している。検出されたウイルス遺伝子型はB3型とD8型が混在していた。2024年のMCV1, MCV2の接種率は, それぞれ94%, 91%であった5)。英国, スペイン, オーストリア, アルメニア, アゼルバイジャン, ウズベキスタンの麻疹排除認定が取り消されたことで, EURで流行が継続または再燃している国は19カ国に増加した。

西太平洋地域(WPR):WPRにインドネシアが加わったことから, 2024年までとは麻疹症例報告数の集計が異なっている。インドネシアを含めた麻疹症例報告数は, 2021年の1,486例以降増加傾向にあり, 2022年6,753例, 2023年25,621例, 2024年19,202例となり, 2025年には43,764例と倍増した1,7)。症例数が多い国は, インドネシア(17,204例), モンゴル(13,174例), フィリピン(5,039例)であり, 特にモンゴルでは2024年の12例と比べて著しい増加がみられた。一方で, 2025年以降はベトナムからほとんど報告がされていない。WPRでの2024年のMCV1, MCV2の接種率は, それぞれ90%, 88%であった5)。流行しているウイルス遺伝子型は, B3型とD8型が混在しているが, マレーシアでは2024年に引き続きD8型が主流であり, フィリピンでは2024年に主流であったB3型から2025年にはD8型が主流へと置き換わっている。

南東アジア地域(SEAR):2023年のインドでの大規模な流行(68,794例)以降, 引き続きインドで流行が続いており, 2025年のインドにおける麻疹症例報告数は18,921例であった1)。この地域では他に, タイで2024年に8,897例から2025年には1,141例へと減少している。一方で, 2026年に入ってからは, バングラデシュで流行が発生し, 同年3月までに1,481例が報告されている。流行しているウイルス遺伝子型は, インドではD8型が検出されている一方, タイではB3型が主流であった。2024年のSEARにおけるMCV1, MCV2の接種率は, それぞれ96%, 91%と報告されている5)が, インドでは97%, 92%, タイでは93%, 87%であった。

東地中海地域(EMR):2025年の麻疹症例報告数は75,717例であり, そのうち報告数の多い国として, イエメンが32,448例, パキスタンが20,741例となっている。検出されたウイルス遺伝子型はB3型とD8型が混在していた。2024年のEMRにおけるMCV1, MCV2の接種率は, それぞれ80%, 75%であった5)。スーダンでは, 2019年には90%(MCV1), 74%(MCV2)であったが, 2024年にはそれぞれ46%(MCV1), 36%(MCV2)へと低下しており, 2025年の麻疹症例報告数は7,644例であった。2026年3月におけるEMRでの麻疹症例報告数は13,344例である。

アフリカ地域(AFR):2022年から急増した麻疹の発生が継続しており, 2025年も66,334例の麻疹症例報告があった1)。報告数の多い国は, ナイジェリア(19,225例), アンゴラ(11,909例)であったが, 2024年には30,201例の報告があったエチオピアでは2025年は5,381例へと減少している。検出されたウイルス遺伝子型は, 南アフリカではD8型が主流である一方, それ以外の多くの国ではB3型が主流であった。この地域では初めて, カーボベルデ, セーシェル, モーリシャスが麻疹排除認定された8)。2024年のAFRにおけるMCV1, MCV2の接種率は, それぞれ71%, 55%であった5)。2026年3月時点においてAFRでの麻疹症例報告数は3,590例となっている。

参考文献

  1. WHO, Immunization data, Global Measles and Rubella Monthly Update(アクセス日:2026年4月24日)
    https://immunizationdata.who.int/global?topic=Provisional-measles-and-rubella-data&location=
  2. WHO, WER 100: 591-604, 2025(アクセス日:2026年5月1日)
    https://iris.who.int/server/api/core/bitstreams/8c65dd54-ee98-4438-938c-e7114851f870/content
  3. WHO PAHO, Measles/Rubella bi-Weekly Bulletin(アクセス日:2026年4月24日)
    https://www.paho.org/en/measles-rubella-weekly-bulletin
  4. WHO PAHO, PAHO calls for regional action as the Americas lose measles elimination status(アクセス日:2026年4月24日)
    https://www.paho.org/en/news/10-11-2025-paho-calls-regional-action-americas-lose-measles-elimination-status
  5. WHO, Measles vaccination coverage(アクセス日:2026年4月24日)
    https://immunizationdata.who.int/global/wiise-detail-page/measles-vaccination-coverage?CODE=EMR&ANTIGEN=MCV1&YEAR=
  6. Science Media Centre Spain, Preliminary data show that measles cases in Europe declined in 2025, although they increased in countries such as Spain(アクセス日:2026年4月28日)
    https://sciencemediacentre.es/en/preliminary-data-show-measles-cases-europe-declined-2025-although-they-increased-countries-such
  7. WHO iris, Measles-Rubella Bulletin 2025(アクセス日:2026年5月8日)
    https://iris.who.int/handle/10665/380379
  8. WHO, Cabo Verde, Mauritius and Seychelles eliminate measles and rubella(アクセス日:2026年5月8日)
    https://www.afro.who.int/countries/cabo-verde/news/cabo-verde-mauritius-seychelles-eliminatemeasles-and-rubella
 
  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所        
   呼吸器系ウイルス研究部     
    佐藤佳代子 染谷健二 大槻紀之 梁 明秀

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