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2026年におけるわが国の麻疹の疫学的特徴

2026年におけるわが国の麻疹の疫学的特徴

(IASR Vol. 47 p125-126: 2026年7月号)

はじめに

日本は2015年に世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局による麻疹排除認定を受けて以降, 排除状態の維持を目標に, 「麻しんに関する特定感染症予防指針」1)(以下, 指針)に基づき, 麻疹の発生および蔓延の防止に取り組んでいる。

近年世界では, 2023年以降, 麻疹症例の報告数が増加しており2), 麻疹排除を達成していたカナダや英国を含む欧州諸国においても, 麻疹排除認定の取り消しが報告されている3,4)

日本においても, 海外との往来が再開した2023年以降, 輸入症例を中心とした麻疹届出数の増加が認められ, 2023年は28例, 2024年は45例, 2025年は265例の届出があった。2026年第1~23週には525例と, 排除後最多であった2019年同時期(617例)の水準に迫っている5)

今後の麻疹対策および対応に資するため, 2026年第1~18週(2025年12月29日~2026年5月3日, 2026年5月15日時点)に診断され, 届出のあった国内の麻疹に関する疫学的特徴をまとめたので報告する。

発生状況

麻疹届出数460例のうち, 男性は295例(64%), 女性は165例(36%)で, 年齢中央値は26歳(四分位範囲:18-35歳)であった。20代が143例(31%)と最も多く, 次いで10代が105例(23%), 30代が95例(21%), 40代が50例(11%)と続いた。10代の症例の79%は接触者として把握されていた。なお, 0歳児は6例(1%)認められた。

ワクチン2回接種の対象年齢に達していない5歳未満の15例を除外し, 2回接種の対象となる年齢群の445例のうち, ワクチン接種歴不明を含めた2回接種未完了者は297例(67%)であった。特に, 20~30代は2回接種未完了者が179例(40%)と高い割合であった。なお, 1回接種者は30代が16/95例(17%), 40代が10/50例(20%), 50代が6/32例(19%)であった。

麻疹の3主徴(発熱・発疹・カタル症状)を呈した症例はワクチン2回接種完了者では57/148症例(39%), 未完了者では197/297症例(66%)であった。また, 発病から診断までに要した日数は中央値4日であり, 複数の症例で診断までに複数の医療機関を受診していたことが確認された。届出時点で少なくとも32例が入院し, うち31/32例(97%)は2回接種未完了者で, 0~5歳未満は6/32例(19%)であった。

推定感染地域は, 国内が334例(73%)と最も多く, 内訳は東京都(161例), 鹿児島県(23例), 神奈川県(21例)の順に続いた。国外は47例(10%)であり, インドネシア(14例)が最多であった。

2026年第8週以降は複数の自治体にまたがった集積事例の発生が, 同時期に複数カ所で確認された。疫学的関連がある2例以上の検査確定例が把握されたのは, 主に学校(4件), 医療機関(6件)であり, 飲食店や家庭, 共同生活の場などでの発生もみられた。学校や飲食店での集積事例では, 男性が大半を占めた。学校では, イベントを通じた集団発生と推定される集積や, 学年閉鎖が実施された事例が確認された6)。医療機関では, 麻疹患者の受診等を発端とした医療従事者の他, 清掃業者の感染が認められた。なお, 三次感染が疑われる症例が一部確認されたものの, 2018~2019年に生じたような症例数100例以上の集団感染7-9)には至らなかった。また, 2026年は5月15日時点でワクチン2回接種完了者(記録)からの二次感染が推定されたのは, 同居家族に限られた。

病型は, 検査診断例は457例(99%)であり, 遺伝子検査での診断は448例(97%)で, 遺伝子型はB3型が129例, D8型が177例であった。

まとめ

2026年の麻疹届出は, 2025年と同様に成人が多数を占め10), ワクチン2回接種未完了者の感染の割合が高かった。20~30代は麻しん含有ワクチン第3期・第4期の追加接種の対象世代も含め, ワクチン接種未完了者が一定数存在したと考えられた11)。また, 30代後半~50代前半は, 制度上, ワクチン接種1回の世代であり, その影響を受けている可能性がある。症状や入院の状況, 複数の集積事例における二次感染例の状況等から, 2回のワクチン接種の重要性が改めて示唆された。

2025年以降の訪日外客数は年間過去最多を更新12)し, 麻疹ウイルスが持ち込まれるリスクが高まっている。推定感染地域は国内の症例が増加した現在, 小児期の定期予防接種対象者の接種率のより一層の向上を図ることが重要である。さらに, 海外渡航予定者, 医療従事者, 学校関係者, 接客・サービス業従事者は, ワクチン接種歴や罹患歴を確認し, 必要に応じてワクチン接種を検討することが望まれる。

ワクチン2回接種完了者は非典型的な症状を呈することが多く, 受診や診断への遅れへの影響も懸念される。今後も, 指針に基づき, 麻疹が疑われた際の迅速な届出や検査, 対応により一層の連携に取り組むことが重要である。

謝辞:日頃より感染症発生動向調査にご協力いただいている医療機関や各自治体の皆様に深く感謝いたします。

参考文献

  1. 厚生労働省, 麻しんに関する特定感染症予防指針, 平成31(2019)年4月19日一部改正・適用
    https://www.mhlw.go.jp/content/000503060.pdf
  2. WHO, Measles cases surge worldwide, infecting 10.3 million people in 2023(アクセス日:2026年6月17日)
    https://www.who.int/news/item/14-11-2024-measles-cases-surge-worldwide--infecting-10.3-million-people-in-2023
  3. Public Health Agency of Canada, Measles: Canada’s response(アクセス日:2026年6月17日)
    https://www.canada.ca/en/public-health/services/diseases/measles/canada-response.html?utm_source=chatgpt.com
  4. WHO, 14th meeting of the European Regional Verification Commission for Measles and Rubella Elimination(RVC)(アクセス日:2026年6月17日)
    https://www.who.int/europe/news-room/events/item/2025/09/15/default-calendar/14th-meeting-of-the-european-regional-verification-commission-for-measles-and-rubella-elimination-%28rvc%29?utm_source=chatgpt.com
  5. 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, 麻疹 発生動向調査 速報グラフ, 2026年第23週
    https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/diseases/measles/graph/2026/meas26-23.pdf
  6. 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト, 麻しん施設別発生状況調査
    https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/measles/school-shut-down/index.html
  7. 大貫典子ら, IASR 39: 54-55, 2018
  8. 折坂聡美ら, IASR 39: 55-57, 2018
  9. 久高 潤ら, IASR 40: 53-54, 2019
  10. 塚田敬子ら, IASR 46: 134-135, 2025
  11. 多屋馨子ら, IASR 34: 28-31, 2013
  12. 日本政府観光局, 訪日外客数(2025年12月推計値)
    https://www.jnto.go.jp/news/press/20260121_monthly.html?utm_source=chatgpt.com
  
  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所         
   実地疫学専門家養成コース(FETP)
    田中昌子 小嶋華子 小倉弘也 喜久里昂哉          
   感染症サーベイランス研究部   
    小林祐介 高橋琢理 神垣太郎 
   応用疫学研究センター      
    塚田敬子 島田智恵 砂川富正

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