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わが国における輸入感染症としてのマラリア:2007~2025年

わが国における輸入感染症としてのマラリア:2007~2025年

(IASR Vol. 47 p143-144: 2026年8月号)

マラリアは亜熱帯, 熱帯を中心とした100カ国以上の国々に広く分布し, 世界人口の最大40%が感染の危機にある疾患であり, 2024年において患者数約2億8,200万人, 死亡者数約61万人と推計されている。わが国におけるマラリア症例はすべて輸入症例であり, 世界の流行状況と渡航者の海外におけるリスク行動を反映すると推測される。2007~2025年に届出されたマラリア症例についての特徴を解析した。

わが国におけるマラリアは, 1999年4月に感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)に基づき, 診断した医師に全数届出が義務づけられている4類感染症である(届出基準:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-33.html)。国内の届出数は2001年まで年間100例を超えていたが, その後減少し, 2007~2019年までは40~78例で推移していた1)。2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行と海外渡航制限にともない, 2020年に届出されたマラリアは21例と最も減少したが, その後, 2024年まで増加が続いている(図1)。2007~2025年に届出された症例は941例であり, 原虫種別では, 熱帯熱マラリアが591例(62.8%)と最も多く, 三日熱マラリア207例(22.0%), 卵形マラリア39例(4.1%), 四日熱マラリア21例(2.2%)と続き, 不明は76例(8.1%)であった。その他は7例であり, 1例は二日熱マラリア原虫, 残りの6例は原虫種の判定が不確実なものであった。

941例のうち男性が727例(77.3%)と多く, 女性は214例(22.7%)であった。年齢群のピークは, 男性が30代(30.1%), 女性が20代(37.9%)であった(図2)。一般的に重症化するリスクの高いことが知られている幼児は, 10歳未満は男女合計で22例と少なかった。

マラリアの診断について, 感染症法に基づく届出基準では「顕微鏡下での血液の観察によるマラリア原虫の確認」, 「核酸増幅法による病原体遺伝子の検出(PCR法, LAMP法, その他)」および「フローサイトメトリー法によるマラリア原虫感染赤血球の検出」が診断根拠とされる。このうち「フローサイトメトリー法」および「PCR法以外の核酸増幅法(LAMP法, その他)」は2021年6月3日より診断根拠として使用可能となった新しい検査法である。マラリアの迅速診断キットは, 世界保健機関(WHO)の推奨が得られたキットに関しては感度・特異性ともに良い製品が多数存在するが, 国内では未承認のため補助的方法に位置付けられる2)。2007~2025年に届出された診断方法の重複回答別では, 顕微鏡検査法が最も多く77.1%を占めた(図3)。PCR法は2021年以降に利用件数が増加傾向にあり, 3.5%を占めた。フローサイトメトリー法は2022年以降に届出があり, その件数は全体の1.6%を占めた。その他の方法は17.7%を占め, LAMP法の届出はいまだなかった。PCR法の増加は, 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査体制の強化にともない, 全国的に遺伝子検出法が普及したことが影響していると考えられる。

参考文献

  1. IASR 35: 224-226, 2014
  2. WHO, The role of RDTs in malaria control
    https://www.who.int/teams/global-malaria-programme/case-management/diagnosis/rapid-diagnostic-tests/role-in-malaria-control
  
  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所         
   安全管理研究センター/寄生動物部
    荒木球沙           
   寄生動物部           
    中野由美子 案浦 健     
  国立国際医療研究所        
   熱帯医学・マラリア研究部     
    安田(駒木)加奈子

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