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マラリア治療薬と開発の現状

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マラリア治療薬と開発の現状

(IASR Vol. 47 p148-149: 2026年8月号)

1.はじめに

日本国内では2026年6月現在, マラリア治療薬としてリアメット(アルテメテル・ルメファントリン配合錠), マラロン(アトバコン・プログアニル配合錠), メファキン, プリマキンの4種類の薬剤が利用可能である1)。プリマキンは三日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫の休眠体を標的とし, これらのマラリアの根治療法に用いられる。一方で, glucose-6-phosphate dehydrogenase(G6PD)欠損症患者では重篤な溶血性貧血を引き起こす恐れがあるため禁忌である。

日本国内からマラリア流行地への渡航者に対する予防薬としては, メファキンとマラロンが利用可能である。メファキンは週1回, 1錠, マラロンは1日1回, 1錠の服用であるため, 長期滞在の場合はメファキンの方が費用負担は少ない。一方で, マラロンと比較してメファキンは副作用が強く, またタイ, カンボジア, ミャンマーの国境周辺など東南アジアの一部地域ではメファキン耐性マラリアが報告されている2)。そのため, 持病や渡航先などを専門の医師に相談のうえ, 適切な予防薬を選択する必要がある。日本国内におけるマラリア治療や対応医療施設の情報は熱帯病治療薬研究班の「マラリア 検査・治療・予防の手引き」2026年版を参照されたい1)

流行地で広く利用されているマラリア治療薬として, 世界保健機関(WHO)はアルテミシニン誘導体を基盤とする併用療法(artemisinin-based combination therapy: ACT)を推奨している。しかし, 東南アジアおよびアフリカにおいてアルテミシニンに部分耐性を示す原虫の分布が確認されている3,4)。このような状況を踏まえ, アルテミシニン部分耐性原虫にも有効な新規治療薬の開発が急務となっている。本稿では, 新しい抗マラリア薬開発に関する近年の進展について紹介する。

2.3剤併用療法(triple artemisinin-based combination therapy: TACT)

アルテミシニン部分耐性原虫への対策として, 既存のACTに異なる作用機序を有する薬剤を加えた3剤併用療法(TACT)の開発が進められている。TACTの中でも, アルテメテル, ルメファントリンに4-アミノキノリン化合物であるアモジアキンを加えたALAQは最も開発が進んでいる候補の1つであり, 多剤耐性マラリア原虫に対しても有効性を示すことが確認されている5)。公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)の支援を受け, 2025年9月から固定用量製剤による第III相臨床試験が開始されている。本試験では, アルテメテル・ルメファントリン(AL)とアルテスネート・アモジアキン(ASAQ)を対照として, ALAQの有効性, 安全性, 忍容性を評価することを目的としている。

3.Ganaplacide-Lumefantrine(GanLum)

Ganaplacideはマラリア原虫を用いた表現型スクリーニングによって選抜された化合物であり, 赤内期および肝内期に対する増殖抑制活性に加えて, マラリア原虫の伝搬阻止効果を有することが報告されている6)。Ganaplacideの詳細な作用機序はいまだ明らかではないが, 既存の抗マラリア薬とは異なる新規作用機序を有する治療薬であり, アルテミシニン部分耐性原虫にも有効性を示すことが明らかにされている7)。Ganaplacideとルメファントリンの配合剤であるGanLumについて, 第III相臨床試験の結果が2025年の米国熱帯医学衛生学会年次総会において報告された。アフリカのマラリア流行地12カ国で実施された試験において, GanLumは97.4%の治癒率を示し, 標準治療薬(94%)を上回る成績が得られた。現在, 早期承認に向けた準備が進められており, GanLumが承認されれば, 約25年ぶりの新規作用機序を有する抗マラリア薬となることから, 薬剤耐性マラリアへの対策として大きな期待が寄せられている。

4.おわりに

本稿で紹介した近年の抗マラリア薬開発の進展は, 薬剤耐性原虫に対抗するための重要な成果である。一方で, これまでに開発された抗マラリア薬に対しては, 例外なく薬剤耐性原虫の出現が報告されている。そのため, 将来的な薬剤耐性原虫の出現に備え, さらに新規作用機序を有する抗マラリア薬の継続的な開発を進めることが不可欠である。

参考文献

  1. 熱帯病治療薬研究班 オーファンドラッグ中央保管機関
    https://www.nettai.org/
  2. Price RN, et al., Lancet 364: 438-447, 2004
  3. Ariey F, et al., Nature 505: 50-55, 2014
  4. Balikagala B, et al., N Engl J Med 385: 1163-1171, 2021
  5. van der Pluijm RW, et al., Lancet 395: 1345-1360, 2020
  6. Kuhen KL, et al., Antimicrob Agents Chemother 58: 5060-5067, 2014
  7. Manaranche J, et al., J Antimicrob Chemother 79: 2877-2886, 2024

  
  長崎大学熱帯医学研究所
   感染生化学分野    
    佐倉孝哉 

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