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学生寮で発生した侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)事例と保菌検査結果について

学生寮で発生した侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)事例と保菌検査結果について

(IASR Vol. 47 p168-170: 2026年9月号)

新たに入寮した学生が侵襲性髄膜炎菌感染症(invasive meningococcal disease: IMD)を発症し, 発症後の疫学調査を実施し健康観察を行った。その後, 寮に在籍する希望者に対して保菌検査を実施したので結果を含めて報告する。

症例

10代男性, 基礎疾患なし, 運動部に所属。本人含む6人部屋で生活していた。入寮1カ月後(Day1)39℃台の発熱, 咽頭痛, 頭痛があり診療所を受診し, インフルエンザ・コロナ検査迅速キット陰性で対症療法となった。Day2に意識混濁した状態となり, 救急要請しA病院に搬送。意識障害遷延しており, B病院へ転院となりIMDと診断された。Day27に本症例は後遺症等なく退院した(血清群Y群)。

対応経過

Day2:保健所が積極的疫学調査を実施し, 寮の7名が抗菌薬予防内服した(表1)。

Day4~7:有症状者5名が受診したが, IMDの診断はなかった(図)。

Day22:健康観察終了とした。

3カ月後:寮に在籍する学生・保護者に保健所と大学が連名で今回の対応経緯とIMDに関する注意喚起文書と東京都のリーフレット1)を通知した。

7カ月後:大学および東京都・国立感染症研究所と検討し, 同部活の学生のうち希望者に保菌検査を実施した(表2)。

11カ月後:同部活の学生・保護者に対し経緯の説明文書を発出し, 対応終了とした。

積極的疫学調査

ガイドライン2)に基づき調査を実施した。学生寮には約400名が在籍し, 部活ごとに2-6人部屋となっており, 主に近接した部屋を使用していた。食堂・トイレ・風呂・洗面所は共同であるが, 生活パターンは部活により異なるため, 他部活の学生との交流はあまりなかった。

保健所から予防内服の効果等について説明し, 濃厚接触者19名のうち18名, 寮在籍者のうち希望者3名が予防内服した(表1)。Day4に同室者1名が発熱, 頭痛にて発症(Day2に予防内服済), 咽頭ぬぐい液検査にてB群髄膜炎菌を検出。Day6に同部活の学生1名(予防内服なし)と関係者1名, Day7に他部活の学生2名が有症状にて受診した。4名のうち同部活の学生1名もB群であった。受診した5名とも対症療法にて軽快した。

保菌検査

関係機関による協議のうえ, 保菌検査を実施する方針となった。34名のうち同意が得られた24名の咽頭ぬぐい液を検査し, 12名が培養陽性〔B群8名, Y群3名, NG(群別不能)1名〕であった(表2)。部屋の配置や学年に偏りなく陽性者がみられた。検査後に予防内服, ワクチン接種を受けた者はなかった。

考察

本邦の髄膜炎菌保菌率は0.4-0.8%2)とされているが, 今回対応した集団においては50%と高率であることが判明した。当該集団内で, 複数の血清群の髄膜炎菌が保菌されていたことが明らかとなった。なお, 今回の事例前に寮内での髄膜炎菌感染症を疑うエピソードはなく, 初発患者が髄膜炎菌を獲得した経緯は不明であった。

IMD発症予防としてワクチンがあるが, 任意接種であり, 国内で承認されている4価ワクチンではB群への予防効果は見込めないため, リスクとベネフィットについて, わかりやすい情報提供が必要である。なお, 検索した範囲であるが, 一部の大学では髄膜炎菌感染症に関する周知が行われていることが確認された3,4)。

本事例では, 保菌検査結果をふまえ, 予防内服やワクチンの効果も限定的な可能性があり, 丁寧な情報提供を行った。また, スポーツ分野における感染症リスクコミュニケーションの重要性を再認識する事例でもあった。今後も, 保健所では平時より地域における感染症予防の啓発を行い, コミュニケーションを円滑にしながら, 発生時には速やかに対応することが重要と考えられた。

謝辞:調査にご協力いただいた関係機関に深謝いたします。

参考文献

  1. 東京都感染症情報センター, 感染症ひとくち情報, 2025年5月30日
    https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/assets/diseases/invasive-m/hitokuchi-joho.pdf?20250530_2
  2. 国立感染症研究所実地疫学研究センター, 感染症疫学センター, 細菌第一部, 侵襲性髄膜炎菌感染症発生時対応ガイドライン〔第二版〕, 令和7(2025)年3月28日
  3. 信州大学総合健康安全センター, 髄膜炎菌感染症について(お知らせ)
    https://www.shinshu-u.ac.jp/campus_life/studentsupport/news/uploaddocs/%E2%91%A4kekouanzen_zuimakuen.pdf
  4. 東京科学大学保健管理センター, 侵襲性髄膜炎菌感染症と髄膜炎菌ワクチンについての情報提供, 2026 年1月13日
    https://www.titech.ac.jp/student-support/pdf/meningococcal-info-2026.pdf

  
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