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NDM型カルバペネマーゼ遺伝子陽性サルモネラの検出事例―鹿児島県

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NDM型カルバペネマーゼ遺伝子陽性サルモネラの検出事例―鹿児島県

(IASR Vol. 47 p192-194: 2026年10月号)

本県では, 平成29(2017)年3月28日付通知(健感発0328第4号)により, カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症の届出のあった菌株を収集し, カルバペネマーゼ遺伝子等の試験検査を行っている。今回, CRE感染症として, 国内では稀なサルモネラによる届出があり, 検査の結果, NDM型カルバペネマーゼ遺伝子が検出されたため, 概要について報告する。

患者は県内在住の50代男性。令和7(2025)年7月下旬より続いていた下痢症状のため, かかりつけ医療機関を受診。急性胃腸炎疑いで8月A日に採取した便培養から, メロペネムに耐性〔最小発育阻止濃度値(MIC)8μg/mL〕を示すサルモネラが分離されたため, CRE感染症の届出があった。

8月A+21日に保健所を通じて鹿児島県環境保健センター(当センター)へ菌株が搬入され, 「病原体検出マニュアル」に準じ, (1)β-ラクタマーゼ阻害剤(メルカプト酢酸ナトリウム:SMA)を用いたディスク拡散法, (2)PCR法, (3)Carba NP test, の3法によってカルバペネマーゼ産生性およびカルバペネマーゼ遺伝子の確認をした。

ディスク拡散法では, SMAによりメロペネムおよびセフタジジムディスク周辺の発育阻止円に拡張を認め(図), PCR法ではNDM型カルバペネマーゼ遺伝子の存在が確認された。また, Carba NP testでも陽性と判定され, NDM型カルバペネマーゼ産生菌として矛盾しない結果であった。

しかしながら, 国内ではほとんど報告例のないサルモネラからのカルバペネマーゼ遺伝子の検出1)であったため, 他の菌の混入の可能性も考え, DHL寒天培地に再塗布して得られたサルモネラ様の単独5コロニーから直接PCRを行ったところ, すべて, NDM型遺伝子の増幅が認められた。なお, サルモネラの血清型名はSalmonella enterica serovar Indiana(4:z:1, 7)であった。その後の国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所(感染研)での全ゲノム解析の結果, 本菌は中国で多剤耐性クローンとして報告2)のあるsequence type 17であった。NDM型遺伝子はblaNDM-9であり, blaNDM-9を含む複数の薬剤耐性遺伝子が染色体配列上に存在した。

届出医療機関によると, 患者は基礎疾患に対する移植治療後, 通院しながら免疫抑制剤を使用中であった。海外渡航歴はなく, 独居で, 体調のことも考え普段から食事には気を付けていた。知人とともに外食していたが, 下痢を呈したのは患者本人だけであった。急性胃腸炎疑いで8月A日からレボフロキサシンと整腸剤の内服治療が行われた。8月A+14日, NDM型遺伝子陽性サルモネラの薬剤感受性結果(表)から, ミノサイクリンと整腸剤へ処方変更となった。診断から4週後時点(9月B日)では下痢症状が続いていたが, 9月B+14日には症状は軽快した。同日に届出医療機関で行った便培養ではサルモネラが陽性であったが, 9月B+28日には陰性となった。

本事例の発生を受け, 9月B+10日に鹿児島大学感染症専門医養成講座, 感染研薬剤耐性研究センター第四室, 届出医療機関, 県感染症対策課, 管轄保健所, 当センターの6者によるweb対策会議が開催された。会議では, 患者対応, 曝露源の推定, 拡散状況の評価について協議が行われた。また協議を受け, 保健所から管内医師会・医療機関に対し, CRE感染症の届出基準再周知およびサルモネラ胃腸炎疑い時の便培養検査提出の呼びかけが行われた。

当センターでは患者の陰性確認の他, 友人や接触者について, CREスクリーニング培地を使用してサルモネラを含むカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)の検索を受け入れることとしたが, 当センターへの検体搬入はなかった。

本菌検出以降, 令和8(2026)年8月現在までに本県ではCRE感染症の届出は7例認められた。そのうち, 6例からの分離株が当センターに搬入されCRE検査を実施したが, サルモネラを含む新たなNDM型遺伝子陽性CRE感染症は認められなかった。

近年, 海外渡航歴のない患者からNDM型遺伝子が検出されたケースの報告も増加傾向にあることから3), 今後も国内で薬剤耐性菌のサーベイランスを継続することが重要である。

参考文献

  1. Hosoda T, et al., JJID 68: 75-76, 2015
  2. Sun R-Y, et al., J Antimicrob Chemother 77: 2937-2945, 2022
  3. 松井真理ら, IASR 46: 26-28, 2025

  鹿児島県大島支庁徳之島事務所保健衛生環境課   
   園田大敬 相星壮吾      
  鹿児島県環境保健センター    
   遠藤葵依 上野伸広 濱田結花 松岡洋一郎          
  鹿児島大学感染症専門医養成講座 
   川村英樹           
  公益財団法人慈愛会今村総合病院 
   血液内科           
    宮園卓宜          
   感染管理室          
    鶴園由加子         
  鹿児島市感染症対策課      
   内野大海 仮屋崎美紀 中村匡宏 四元大輔 新小田雄一     
  鹿児島県感染症対策課      
   長埼崇幸           
  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所        
   薬剤耐性研究センター      
    松井真理 稲嶺由羽 鈴木里和 左 卉 菅原 庸
    山岸拓也 菅井基行 大西 真
   

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