コンテンツにジャンプ
国立健康危機管理研究機構
感染症情報提供サイト
言語切り替え English

トップページ > サーベイランス > 病原微生物検出情報 (IASR) > ウガンダから日本へ医療搬送された患者におけるCandida auris clade Iの定着背景

ウガンダから日本へ医療搬送された患者におけるCandida auris clade Iの定着背景

ウガンダから日本へ医療搬送された患者におけるCandida auris clade Iの定着背景

(IASR Vol. 47 p195-196: 2026年10月号)

Candidozyma auris(Candida auris)は, 多剤耐性を示し, 皮膚への定着や院内伝播を特徴とする真菌である。多剤耐性の点から, 世界保健機関(WHO)は本菌を「最優先」病原体に指定している1)。今回, ウガンダから国際医療搬送された患者に認めたC. auris clade I定着例を報告する。

症例

22歳日本人女性。ボランティアとしてウガンダ滞在中に重症熱帯熱マラリアを発症し, 人工呼吸管理および血液透析を含む集中治療を受けた。約1カ月後に状態が安定し, 医療搬送で当院へ転院した。

海外医療機関から転院した患者に対する院内の多剤耐性菌スクリーニングプロトコルに従い2), 喀痰, 尿, 便および鼻腔検体を採取した。結果判明まで個室管理と接触予防策を継続した。尿および鼻腔検体からC. aurisを検出し, 質量分析(MALDI-TOF MS)およびInternal Transcribed Spacer(ITS)・D1/D2領域シーケンス, CauMT1特異的PCRによりclade Iと同定した。尿路感染症などC. aurisによる感染症の所見はなく, C. auris定着と診断した。また, カルバペネム耐性Klebsiella pneumoniae, ESBL産生Escherichia coliおよびProteus mirabilisも検出された。

米国疾病管理予防センター(CDC)が提唱する暫定ブレイクポイント3)に基づいた薬剤感受性試験の結果, ミカファンギンおよびカスポファンギンに感性, アムホテリシンBおよびフルコナゾールに耐性を示した(表)。

入院3週間後, 額, 外耳道, 鼻腔, 腋窩, 鼠径部, 手掌および尿で追跡培養を実施したところ, すべて陰性であったが, 陰性化後の再陽性例が報告されているため4), 退院まで約2カ月間, 個室管理と接触予防策を継続し, 院内感染は発生しなかった。

考察

国際的な患者移送は, C. aurisを含む薬剤耐性菌の越境伝播リスクを高める。診断体制が十分ではない地域では, 本菌が見逃されている可能性もあり, 海外で医療曝露歴を有する患者は国内への持ち込み源となり得る。

また, C. aurisは従来法で誤同定されることがあり, MALDI-TOF MSに加え, 分子学的手法による確認が重要である。本菌は主に皮膚へ定着し, 米国CDCは腋窩・鼠径部を用いたスクリーニングを推奨しているが5), 本症例では入院時に腋窩・鼠径部のスクリーニングは実施しなかったが追跡培養では検出されず, 入院時の尿および鼻腔検体で検出した。

結語

国内で耳検体から分離されることが多いclade IIのC. aurisに関しては, 血流感染症を起こす頻度が低く, 大規模なアウトブレイクを起こす可能性が低いと考えられていることから, 検出時の隔離や接触予防策等の対応について各医療機関の感染対策チーム等で検討しておく必要がある。しかし, 海外での医療曝露歴を有する患者では, 血流感染症および薬剤耐性を起こすことが知られているclade IのC. aurisを念頭に, 他の多剤耐性菌同様, 複数の臨床検体を用いた入院時スクリーニングと適切な感染対策の実施が重要である。

謝辞:スクリーニングおよび感染予防・管理に関する助言をいただいた, 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所・応用疫学研究センター, ならびに実地疫学専門家養成コース(FETP)に感謝いたします。

参考文献

  1. WHO, WHO fungal priority pathogens list to guide research, development and public health action, 2022(アクセス日:2026年10月8日)
    https://iris.who.int/server/api/core/bitstreams/69af4379-4f27-4ac4-8973-74d7b52af7bd/content
  2. 国立研究開発法人国立国際医療研究センター国際感染症センター, 医療機関における海外からの高度薬剤耐性菌の持ち込み対策に関するガイダンス第2版(アクセス日:2026年7月2日)
    https://dcc.jihs.go.jp/prevention/resource/resource05.pdf
  3. CDC, Antifungal Susceptibility Testing for C. auris(アクセス日:2026年8月24日)
    https://www.cdc.gov/candida-auris/hcp/laboratories/antifungal-susceptibility-testing.html
  4. Arenas SP, et al., Infect Control Hosp Epidemiol 45: 762-765, 2024
  5. CDC, C. auris Screening: Patient Swab Collection(アクセス日:2026年8月24日)
    https://www.cdc.gov/candida-auris/hcp/screening-hcp/c-auris-screening-patient-swab-collection-1.html

  
  国立健康危機管理研究機構     
   国立国際医療センター      
    国際感染症センター      
     横地律子 石金正裕 山元 佳 黄 俊大 大曲貴夫     
    臨床検査部          
     黒川正美          
   国立感染症研究所真菌部     
    阿部雅広 小泉亜未      
  新宿区保健所           
   芳賀はるか 橋爪 健 誉田千晶 石原美千代
     

PDF・Word・Excelなどのファイルを閲覧するには、ソフトウェアが必要な場合があります。
詳細は「ファイルの閲覧方法」を確認してください。