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2025年のエイズ予防指針の改正について

2025年のエイズ予防指針の改正について

(IASR Vol. 47 p184-185: 2026年10月号)

後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)は, 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)の施行にともない, 1999(平成11)年10月に厚生労働省によって策定された。おおむね5年ごとの見直し規定に基づき, 2006年, 2012年, 2018年および2025年に改正されてきている。最新の改正においては, 特に厚生科学審議会感染症部会エイズ・性感染症に関する小委員会にて議論が進められ, エイズ予防指針(図1)および性感染症に関する特定感染症予防指針(性感染症予防指針)(図2)の改正に至った。

2025年のエイズ予防指針の改正においては, HIV流行終息に向けて国連合同エイズ計画(UNAIDS)にて掲げている「偏見・差別, 新規感染者, エイズ関連死をなくす」ことを念頭に, 将来的なケアカスケードにおける95-95-95目標(第1に感染者等が検査により感染を自覚し, 第2に定期的に治療を受け, 第3に他者に感染させない状態にまでウイルス量を低下させるという一連のプロセスでいずれも95%以上を達成するという目標)の達成を目指すこととし, キーポピュレーション, U=U(Undetectable=Untransmittable:治療によりウイルス量が一定基準未満に抑え続けられていれば, 性行為により他者に感染することはないことを示す表現), PrEP(pre-exposure prophylaxis:曝露前予防)等のキーワードが記載されている。

改正のポイントとしては, まず第1に, 「HIV・エイズ対策における基本的人権の更なる尊重」が挙げられる。感染者等が偏見・差別なく, 適切かつ必要な医療・福祉サービスを受けることができる基本的人権の確保がポイントで, エイズ予防指針全体の構成を見直し, これまで第6に位置付けられていた「人権の尊重」が第1に位置付けられている。性に対する考え方の多様性に関する国民の理解が, 感染者等の予防行動, 検査および医療へのアクセス改善に寄与するとの認識が重要である点が示され, さらには, HIV感染症・エイズに関する最新の正しい知識習得が不十分であることによる診療やサービス提供等の拒否も偏見・差別に当たると認識する必要がある点も記載されている。

改正の第2のポイントは, 「個別施策層のHIV感染症に係る実態把握等の継続・強化」で, UNAIDSが提唱しているエイズ施策の鍵となる人々(キーポピュレーション)の記載をふまえ, わが国における個別施策層について述べられている。

改正の第3のポイントは, 「複合的な対策による予防, 検査・相談体制の強化」であり, 感染拡大抑制に向け, 下記の4点を強調している。

・U=Uの理解:早期診断・早期治療による新規感染抑制。

・PrEP:適切な使用により性的接触によるHIV感染に対する高い予防効果~HIV感染予防に有用な手段。

・早期診断につながる検査機会の確保:利便性の高い検査・相談の1つの方法として外部委託や郵送検査等の活用の検討も推奨。

・相談体制:継続的な検査後の相談および陽性者支援のための相談の実施。

改正の第4のポイントは, 「長期療養を見据えた医療体制の整備」であり, 長期的な療養を要する患者の増加を踏まえ, HIV感染症の診療について, より地域に根ざした環境の提供について言及している。具体的には, 地域の医療機関間の機能分担による診療連携の充実を図り, 包括的な体制を整えることについて記載されている。

  
 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所    
  俣野哲朗

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