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地方衛生研究所におけるHIV-1核酸増幅検査の外部精度管理調査

地方衛生研究所におけるHIV-1核酸増幅検査の外部精度管理調査

(IASR Vol. 47 p190-191: 2026年10月号)

わが国では, HIV検査へのアクセスを高めることが大きな課題であり, 保健所および自治体が委託して実施される無料・匿名検査がそれに大きく貢献してきた。

HIV検査では, スクリーニング検査で陽性と判定されても必ず確認検査を実施する1)。無料・匿名検査には通常検査と即日検査があり, 即日検査ではイムノクロマト法診断薬(ICA)が用いられている。HIV ICAは, 抗HIV-1/2抗体およびHIV-1抗原の検出により感染診断を補助する製品であるが(図), 厚生労働省により製造販売承認を受けているHIV確認検査用診断薬は抗HIV-1/2 IgG抗体を検出する製品であり, 抗原のラインだけが検出された場合の確認検査では判定保留または陰性判定となる。

数週間後の再検査を促し, セロコンバージョンが起きたかどうかを確認するのが1つの方法であるが, 検査結果が確定しないまま日にちが経過することは, 被検者にとって負担となる場合がある。HIV-1感染急性期には血漿中のウイルスコピー数が高くなるため, HIV-1核酸増幅検査(NAT)が確認検査法として有効である。近藤らが開発したin-house HIV-1 NAT検査法(KK-TaqMan法)2)が普及しており, 多くの地方衛生研究所において実施されている。

国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所エイズ研究センターでは2018年以降, 検査法の確認と精度管理を目的として(1)HIV-1 NAT検査用標準物質の配布, (2)教育訓練用検体の配布, (3)外部精度管理調査(EQA)共同研究, を開始した。TaqManプローブは高価で使用期限があり, HIV-1 NAT検査対応数が少ない自治体では検査法の維持が難しいことから, 2025年度より, より安価で簡便なコンベンショナルRT-PCR法を開発1,3), 新規に導入を希望する施設への技術支援も開始した。

2025年度のEQAには11施設, 技術支援に8施設が参加した。EQAでは, 国内の主要なHIV-1流行株であるサブタイプB, CRF01_AEに加えて, 近年増加傾向にあるCRF07_BCを, ICAで抗原ラインが観察される濃度の1/10以下である10,000コピー/mL前後になるよう調製した陽性検体とHIV陰性5検体を配布した。各施設で実施している検査方法の確認と, 異なる日にちで3回測定した結果を取りまとめた。技術支援では, HIV-1陽性・陰性検体と, 希望によりコントロール作製用検体, プライマー, プローブ等を配布し, 整備状況と結果について個別に議論した。結果は施設名を伏せた形で報告書にまとめ, 参加全施設に配布した。

EQAでは, 検出・検出せずの判定を誤った施設はなかったが, 定量検査を実施している一部の施設で, 定量スタンダードが原因と思われる定量値のずれがあり, その旨を報告した。3回測定の初回に測定値がばらつく施設が複数あり, 定期的な訓練が重要であることが示唆された。研究用として市販されているプライマー・プローブセットに, 国内HIV-1感染の10%以上を占めるCRF01_AE株を検出できない製品があり, 注意喚起を行った。また, 新規導入を試みた一部の施設で, 自動RNA抽出装置の整備状況に起因すると思われる検出感度の低下が見出された。製造販売企業と連絡を取りながらトラブルシューティングを進めている。

これまでに実施してきたEQAでは, 根本的な改善の対応が必要なケースもみられたが, 今年度の結果では, HIV-1感染急性期を判定するための確認検査法として十分な精度の検査が行われていることを確認できた。感染率が低く, 陽性的中率が低い集団で抗原ラインが検出された場合の偽陽性排除には, 陰性検体を常に正しく「検出せず」と判定できることが求められる。今回のEQAでは, HIV陰性検体はすべて「検出せず」と判定されていた。今後も現在の検査精度を維持するよう努めていただきたい。ちなみに, HIV-2 NATは技術的にやや難しいため, HIV-1陰性であってもHIV-2感染が否定できないケースについては, 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所エイズ研究センターに相談されたい。

参考文献

  1. 国立感染症研究所エイズ研究センター, 病原体検出マニュアル・後天性免疫不全症候群(エイズ)/HIV感染症2025年2月改訂版
  2. Kondo M, et al., J Virol Methods 157: 141-146, 2009
  3. Kusagawa S, et al., Heliyon 10: e24451, 2024

  
  国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所    
   エイズ研究センター   
    草川 茂 松岡佐織 

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