HIV/AIDS 2025年

HIV/AIDS 2025年
(IASR Vol. 47 p179-181: 2026年10月号)わが国は, 1984年9月にエイズ発生動向調査を開始し, 1989年2月~1999年3月はエイズ予防法, 1999年4月からは感染症法のもとに施行してきた。診断した医師には全数届出が義務付けられている(届出基準はhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-07.html)。本特集の統計は, 厚生労働省エイズ動向委員会:令和7(2025)年エイズ発生動向年報に基づいている(同年報は厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課より公表されている:https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/nenpo.html)。
新たにHIV感染症と診断され, 届出された者は, エイズ発生動向年報においてHIV感染者とAIDS患者に分類される(定義は下記脚注の通り)。1985~2025年の累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く)は, HIV感染者25,818(男性23,119, 女性2,699), AIDS患者11,447(男性10,500, 女性947)である(図1)。なお, 「血液凝固異常症全国調査」(2024年5月31日現在)によると, 血液凝固因子製剤による感染者は累積1,440である。2025年, 世界中で約4,100万人のHIV感染者/AIDS患者がおり, 年間約120万人の新規感染者, 約57万人のAIDS関連疾患による死亡者が出ていると推定されている(UNAIDS FACT SHEET 2026:https://www.unaids.org/sites/default/files/2026-07/2026_UNAIDS_Global_HIV_Factsheet_en.pdf)。
本邦の2025年のHIV/AIDS報告数:2025年の新規報告数は, HIV感染者624(男性596, 女性28), AIDS患者266(男性248, 女性18)であった(図2)。HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占めるAIDS患者の割合は29.9%(日本国籍31.0%, 外国国籍26.3%)であった。HIV感染者624中, 日本国籍者は467(男性451, 女性16), 外国国籍者は157(男性145, 女性12), AIDS患者266中, 日本国籍者は210(男性202, 女性8), 外国国籍者は56(男性46, 女性10)であった。日本国籍男性, 日本国籍女性, 外国国籍女性のHIV感染者新規報告数はそれぞれ前年より69件, 3件, 6件減少し, 外国国籍男性のHIV感染者新規報告数は前年より40件増加した。日本国籍男性, 日本国籍女性, 外国国籍男性のAIDS患者新規報告数はそれぞれ前年より51件, 2件, 13件減少し, 外国国籍女性のAIDS患者新規報告数は前年と同数であった(図3)。
HIV感染者新規報告において, 同性間性的接触(両性間性的接触を含む)が64.7%(404/624)〔日本国籍男性の70.1%(316/451), 外国国籍男性の60.7%(88/145)〕を占め, 異性間性的接触は14.6%(91/624), 静注薬物使用は0%(0/624), 母子感染は0.2%(1/624), その他は7.1%(44/624), 不明は13.5%(84/624)であった(図4)。日本国籍男性の81.4%(367/451), 外国国籍男性の97.2%(141/145)は20~40代であった(図5)。
注)国籍については, 届出票の記載1日本, 2その他( ), 3不明のうち, 1を日本国籍, 2と3を外国国籍として集計している。
HIV感染者の推定感染地域:1992年までは海外での感染が主であったが, それ以降は国内感染が大部分である。2025年のHIV感染者の推定感染地域は, 国内感染が全体の72.1%(450/624), 日本国籍男性の81.2%(366/451), 日本国籍女性の68.8%(11/16), 外国国籍男性の49.7%(72/145), 外国国籍女性の8.3%(1/12)であった。
報告地(医師により届出のあった地):2025年のHIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数は東京都(HIV感染者210, AIDS患者63), 東京都を除く関東・甲信越(HIV感染者134, AIDS患者64), 近畿(HIV感染者108, AIDS患者28), 九州(HIV感染者44, AIDS患者51), 東海(HIV感染者69, AIDS患者24), 北海道・東北(HIV感染者35, AIDS患者11), 中国・四国(HIV感染者23, AIDS患者22), 北陸(HIV感染者1, AIDS患者3)の順に多かった。報告地ブロックの区分はエイズ発生動向年報表10-1に基づいている。
診断時のCD4値:2019年から診断時CD4値が発生届に追加され集計が開始された。2025年新規報告のうちCD4値の記載のあったものはHIV感染者で61.5%(384/624), AIDS患者で88.0%(234/266)であった。CD4値の記載のあった2025年HIV感染者新規報告のうち, CD4値<200/μLの割合は31.5%(121/384)〔2024年:33.7%(147/436)〕であった(図6)。
参考情報1 献血者のHIV陽性率:2025年は献血件数4,988,605件中, HIV陽性件数24件(男性24件, 女性0件), 献血10万件当たりのHIV陽性件数は0.481であった。HIV陽性24件のうち核酸増幅検査のみ陽性は4件であった(図7)。
参考情報2 自治体が実施したHIV抗体検査:自治体が実施する保健所等におけるHIV抗体検査実施件数は, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以降の2020~2022年に年間6-7万件前後まで大きく減少し, 2023年以降は10万件台で推移しているが, 2025年(106,756件)は前年(108,988件)より減少した。COVID-19流行以前の2019年(142,260件)と比較すると低い水準が続いている(図8)。陽性件数は2025年320件(2019年437件, 2020年290件, 2021年293件, 2022年269件, 2023年316件, 2024年267件), 陽性率は2025年0.30%(2019年0.31%, 2020年0.42%, 2021年0.50%, 2022年0.37%, 2023年0.30%, 2024年0.24%)であった。このうち, 保健所での検査陽性率は2025年0.23%(155/67,337)〔2024年0.21%(152/71,751)〕, 自治体が実施する保健所以外での検査における陽性率は2025年0.42%(165/39,419)〔2024年0.31%(115/37,237)〕であった。その他に, 2025年9月9日以降は, 自治体が実施するHIV郵送検査件数について集計が開始された。2025年の自治体が実施するHIV郵送検査件数は, 送付件数が327件, 結果判定件数が216件であった。
まとめ:2020~2022年に, HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数が大きく減少し, 2023~2024年には2年連続の増加がみられていたが, 2025年はHIV感染者新規報告数, AIDS患者新規報告数ともに前年より減少した。2020年以降の動向については, 国内で2020年1月に初めて報告されたCOVID-19の流行にともなう検査機会の減少等の影響で, 2020年以降, 無症状感染者が十分に診断されていなかった可能性に留意する必要がある(IASR 42: 213-215, 2021)。前年までと同様に, 日本国籍男性における同性間性的接触を推定感染経路とする新規報告が大半を占めている。一方で, 外国国籍男性について, HIV感染者新規報告数およびHIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数は, 2025年に過去最多となった。特に20代と30代が, 外国国籍男性のHIV感染者新規報告の大半を占めている。HIV感染者新規報告における外国国籍男性の割合は, 近畿と東海で高く, それぞれ35%と30%であった。外国国籍男性における推定感染地は, HIV感染者新規報告においては約半数を国内が占めた。外国国籍を有する者に対する検査体制や受診しやすい環境の整備が重要である。
HIV感染症は根治はできないものの, 適切な治療で血中ウイルス量を抑制することにより, 免疫機能を維持・回復し, 良好な予後を見込むことが可能となり, 性交渉による他者への感染を防げることも明らかとなっている。引き続きエイズ予防指針に基づいた予防対策を進め, 人権に配慮したうえで, HIV感染症の早期診断, 早期治療のために検査の必要性を広報し, 多様な場面での検査機会の提供, および自治体での検査体制をより充実させることが求められる。
脚注HIV感染者:感染症法に基づく届出基準に従い「後天性免疫不全症候群」と診断されたもののうち, AIDS指標疾患(届出基準参照)を発症していないもの。
AIDS患者:初回報告時にAIDS指標疾患が認められAIDSと診断されたもの(すでにHIV感染者として報告されている症例がAIDSと診断された場合には含まれない)。ただし, 1999(平成11)年3月31日までのAIDS患者には病状変化によるAIDS患者報告が含まれている。
