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感染症法における伝染性紅斑の届出基準とその発生動向:2006年第13週~2025年第41週

感染症法における伝染性紅斑の届出基準とその発生動向:2006年第13週~2025年第41週

公開日:2025年10月28日
国立健康危機管理機構国立感染症研究所
感染症サーベイランス研究部
(掲載日:2025年10月28日)

感染症法における伝染性紅斑と届出基準

 伝染性紅斑(erythema infectiosum)は、ヒトパルボウイルスB19を原因病原体とし、小児を中心に発症する流行性の発疹性疾患である。通常は予後が良好な感染症であるが、妊婦がヒトパルボウイルスB19に感染した場合は、胎盤を通してウイルスが胎児に感染し、胎児水腫や流産などを引き起こすことがある。また鎌状赤血球症などの溶血性貧血患者が貧血発作を引き起したり、免疫不全者が慢性骨髄不全を発症したりすることがあり、血液系の基礎疾患がある症例でも注意が必要である。感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)において5類小児定点把握疾患に定められており、小児科定点医療機関から毎週報告される。左右の頬部の紅斑と四肢のレース様の紅斑の出現を認める患者を、臨床経過も勘案して伝染性紅斑と医師が診断した患者数を集計して、医療機関の管理者が保健所へ届け出る必要がある。なお、急性呼吸器感染症サーベイランスの開始に伴い2025年第15週に感染症発生動向調査実施要綱の改定により定点選定基準が変更され、小児科定点数が従来の全国約3,000定点から約2,000定点とされたため、経時的な流行の推移を評価する際は、注意を要する。

2006年第13週から2025年第41週までの伝染性紅斑の動向

2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前に、定点当たり報告数が1.00を超える比較的大きな流行となったのは2007年、2011年、2015年、2019年であり、ほぼ4~6年ごとの周期で大きな流行が観察され、6~7月(第23~27週)にピークがみられた。2020年から2023年までは通年的に定点当たり報告数が0.02未満という低い水準で推移した。2024年も第19週までは低い水準で推移していたが、その後も増加を続け、第51週は定点当たり報告数0.98(患者報告数3,076)となった。2025年に入っても同程度の水準で報告されていたが、第11週以降さらに増加傾向となり、第20週には2.05(4,834)、第25週には2.53(5,943)となった。以後減少傾向に転じたものの、第35週まで定点当たり報告数2.00程度と高い水準で流行が継続し、第41週時点でも定点当たり報告数1.25(2,928)であり、流行の終息には至っていない (図1)。
fig1.gif

2006年から2020年までの報告の年齢分布をみると3~5歳が最も多く、次いで6~9歳、0~2歳の順であった。COVID-19流行時の2021~2023年では、報告数が大きく減少したとともに、年齢分布にも0~2歳の割合が高くなるという様な変化が見られたが、2024年は報告数がCOVID-19流行前と同じ水準となり、年齢分布もCOVID-19流行前と類似していた(図2)。なお小児科定点把握対象疾患としての調査であるため、成人における発生状況は不明である。
fig2.gif

地方別に週ごとの報告数をみると、流行の立ち上がりは関東地方で最も早く、その後他地方でも立ち上がりが観察される傾向にある。2025年第41週時点で北海道・東北、関東、東海、北陸、近畿、中国地方の報告数は減少に転じており、四国、九州・沖縄地方からの報告数は流行が継続している(図3)。
fig3.gif

まとめ

伝染性紅斑は2025年第41週時点で、1999年に現行のサーベイランス体制が導入されて以来の最大の流行となっている。一方、COVID-19の流行後、様々な感染症でCOVID-19流行以前とは異なる流行が確認されている中、伝染性紅斑はCOVID-19流行以前と同様の年齢分布や地域への経時的な拡がりを示していることが特徴的である。そのため、ハイリスク集団に対して従来通りの対策を継続し、本疾患の流行に関する情報を提供することが引き続き重要である。また、これらの背景を持つ人が体調を崩している小児へケアをする場合や多くの小児と接触する場合においては、手洗いの徹底や、食器の共有をしないこと、マスクを着用することなどを考慮すべきである。

【参考文献】

     

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