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IDWR 2026年第6号<注目すべき感染症> 麻しん

IDWRchumoku.gif 注目すべき感染症 注意:PDF版よりピックアップして掲載しています。

麻しん 2026年第1~6週(2026年2月12日現在)

 麻しんは麻疹ウイルスを病原体とする感染症であり、高熱、全身の発疹、カタル症状を特徴とし、主に空気感染・飛沫感染・接触感染を感染経路とする感染力の非常に強いウイルス感染症である。乳幼児が麻しんに罹患した時に合併することが多い麻しん肺炎、麻しん患者1,000~2,000人に一人の割合で合併する麻しん脳炎は麻しんによる主要な死亡原因である。また、主に乳児期に麻しんに罹患・回復した後、数年~十数年の期間を経て、重篤な亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis:SSPE)を発症することがある。麻しんに対する特異的な治療法はなく対症療法が中心となるが、事前に予防接種を受けることで、麻しんを予防することができる。日本は2015年にWHOの西太平洋地域麻しん排除認定委員会より麻しん排除状態であると認定され、その後も2024年まで排除状態の維持が確認されている。排除状態を維持するためには、高い予防接種率の確保、継続的な麻しんサーベイランスの実施、ならびに迅速なアウトブレイク対応が不可欠であり、国内では麻しんに関する特定感染症予防指針(平成19年厚生労働省告示第442号:https://www.mhlw.go.jp/content/000503060.pdf)に基づき、排除状態の維持が対策目標として掲げられている。本稿は、主に感染症発生動向調査に基づく国内の麻しんの疫学状況に関する直近の情報を提供することを目的としてまとめたものである。

 2026年第1~6週に診断された麻しんの累積報告数(2026年2月12日現在)は32例であり、2020~2025年の同期間におけるいずれの年の累積報告数も上回った。週ごとの報告数は、第1週で1例、第2週で0例、第3週で2例、第4週で5例、第5週で15例、第6週で9例となっている。

 報告された32例のうち、全例が届出に必要な病原体診断を満たした検査診断例であり、うち、臨床症状の3つ(発疹、発熱、カタル症状)すべてを満たす典型的な「麻しん」が24例、臨床3症状のうち、1つもしくは2つを満たす「修飾麻しん」が8例であった。性別では男性20例、女性12例であり、年齢中央値は30.5歳(範囲1~58歳)であった。12都道府県から報告があり、都道府県別の報告数は、東京都で6例、栃木県、新潟県、大阪府で各4例、埼玉県、千葉県で各3例、岩手県、神奈川県で各2例、北海道、茨城県、愛知県、京都府で各1例であった。推定感染地域は国内が14例(うち都道府県不明4例)、国外が11例(インドネシア8例、韓国1例、インドネシア/シンガポール1例、フィンランド/イタリア/フランス1例)、国内・国外不明が7例であった。医療機関や保健所等により収集されたワクチン接種歴の情報について、1~5歳(第1期定期接種済み年齢群)と、6歳以上(第2期定期接種済み年齢群)に分けて接種歴を整理したところ、1~5歳の4例では、接種歴なしが3例、1回が1例であった。一方、6歳以上の28例では、接種歴なしが5例(18%)、1回が9例(32%)、2回が4例(14%)、不明が10例(36%)であった。2回接種歴ありの4例のうち麻しんは3例、修飾麻しんは1例であった。接種歴なしの8例はすべて麻しんであった。

 また、2026年2月12日現在、上記の32例のうち18例から検出された麻疹ウイルスの情報が感染症サーベイランスシステムに報告されており、遺伝子型の内訳はB3型15例(83%)、D8型3例(17%)であった。

 近年、世界各国で麻しんの流行が報告されており、北米でのアウトブレイクの発生や、カナダにおける排除状態の喪失が確認されるなど、国際的な流行状況の変化が認められた。日本では国内感染例の報告もみられる一方で、海外からの輸入症例が引き続き報告されており、海外渡航予定者においては渡航先の流行状況や予防接種歴を確認の上、必要に応じてワクチン接種を受けることが重要である。

 国内における感染拡大の防止のためには、個々の予防と集団免疫の維持のために、予防接種法に基づく麻しん風しん混合(MR)ワクチンの2回の定期接種の徹底が最も重要である。加えて、感染者の早期探知と迅速な対応も欠かせない。接触者への二次感染を防ぐためには、麻しん患者の適切な診断、1例でも報告された時点で各関係機関の協力のもとで行う迅速な接触者調査と対応、地域の医療機関への情報伝達と住民に対する予防のための啓発が重要である。特に、患者の広域移動や県境を越える接触者が想定される場合には、医療機関情報や行動歴等を含めた各関係自治体間での迅速な情報共有が必要である。

 麻しん患者の報告がある地域や海外渡航者を診察する可能性のある医療機関においては、院内感染対策のさらなる徹底が重要である。事務職員等を含む病院関係者全員へのワクチン接種歴・罹患歴の調査や、必要に応じたワクチン接種が求められる。また、麻しん患者との接触のある者が発熱などの体調不良を自覚した場合には、二次感染防止のため、麻しんの可能性があることを事前に医療機関に電話で伝え、可能な限り公共交通機関の利用を避けた上で受診することが重要である。

 麻しんは空気感染するため、手指消毒やマスクのみでは予防することができない。さらに感染力が非常に強く、発熱が出現する前から感染性があることから、1例の麻しん患者を起点として、同一施設や地域で患者数が増加した事例も報告されている。このため、今後も患者の発生が続く可能性があると考えられる。麻しんの感染拡大を防ぐためには、発生時の迅速な対応だけでなく、定期接種の対象年齢である1歳児および小学校入学前1年間の幼児におけるMRワクチンの2回接種の徹底が重要である。麻しんに罹患したことがなく予防接種を受けたことのない者についても、かかりつけの医師にワクチン接種について相談することも重要である。

 また、日本は麻しん排除状態を維持しているものの、海外からの輸入例を契機として散発的な集団発生が生じる可能性があり、人の移動や交流が活発化する場面では特に注意が必要である。本年は第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)など国内外から多くの人々が集まる国際的マスギャザリングイベントが予定されており、感染症の発生リスクが増加することが予想される。特に混雑した空間で不特定多数と接する機会が想定されることから、予防接種歴の確認が推奨される。

 麻しんの感染症発生動向調査等に関する詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい(2026年2月12日現在):



 国立健康危機管理研究機構
  国立感染症研究所
  感染症サーベイランス研究部

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