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IDWR 2026年第35号<注目すべき感染症> インフルエンザ

 注目すべき感染症 注意:PDF版よりピックアップして掲載しています。

インフルエンザ 2026年第1~35週(2026年9月2日現在)

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスを原因病原体とする急性の呼吸器感染症で、世界中で流行がみられる。主な感染経路は、咳、くしゃみ等により発生する飛沫による感染(飛沫感染)であるが、物の表面等に付着した飛沫に触れた手指を介した接触感染でも伝播する。症状としては、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻汁・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常の感冒と比べて全身症状が強いことが特徴であるが、1週間前後の経過で軽快することが多い。症状のみで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との鑑別は困難である。

 2025年第15週より急性呼吸器感染症(ARI)サーベイランスが開始されたことに伴い、インフルエンザの発生状況は、従来のインフルエンザ/COVID-19定点医療機関(全国約5,000カ所)から、全国約3,000カ所の急性呼吸器感染症(ARI)定点医療機関(小児科定点約2,000カ所、内科定点約1,000カ所)からの届出により把握することとなった。そのため、過去シーズンとの比較に際しては、データの解釈に一定の注意を要する。

 わが国ではインフルエンザは冬季に流行が見られ、定点当たり報告数でみると、2022/23シーズン(シーズン:第36週~翌年第35週)では2023年第6週(12.91)、2023/24シーズンでは2023年第49週(33.72)、そして2024/25シーズンでは2024年第52週(64.39)でそれぞれピークに達した。2025/26シーズンにおいては、例年より早い2025年第39週に全国の定点当たり報告数が1.00を超え、第47週に51.12、2026年第6週に43.34と二峰性の流行を呈した。2026年第16週以降は定点当たり報告数1.00未満で推移していたが、第34週に1.11となり、感染症法が施行された1999年以来、2009年に次いで二番目に早い流行入りとなった(インフルエンザの年別・週別発生状況:https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/graph/weekly/Influenza/index.html)。なお、第35週の定点当たり報告数は1.76(患者報告数6,543)であった。

 2026年第35週(2026年8月24~30日)の都道府県別の定点当たり報告数は、沖縄県(8.50)、岩手県(4.33)、新潟県(3.58)、神奈川県(2.99)、青森県(2.88)、東京都(2.65)、埼玉県(2.58)、千葉県(2.51)、宮城県(2.44)、鹿児島県(2.32)、京都府(2.26)、茨城県(2.10)、鳥取県(1.90)、福島県(1.79)、富山県(1.65)、栃木県(1.64)、北海道(1.62)、山口県(1.59)、高知県(1.59)、宮崎県(1.43)、静岡県(1.35)、福岡県(1.31)、山形県(1.28)、滋賀県(1.23)、愛知県(1.10)、山梨県(1.09)、長野県(1.08)、島根県(1.00)、香川県(0.96)、長崎県(0.94)、三重県(0.93)、広島県(0.91)、大分県(0.90)、群馬県(0.87)、秋田県(0.84)、兵庫県(0.83)、熊本県(0.83)、奈良県(0.79)、大阪府(0.77)、徳島県(0.76)、福井県(0.72)、和歌山県(0.49)、岐阜県(0.47)、愛媛県(0.39)、佐賀県(0.38)、岡山県(0.34)、石川県(0.28)の順となった。全国47都道府県中、39都道府県では前週の定点当たり報告数よりも増加し、7都道府県では前週の定点当たり報告数よりも減少した。また、2025年第36週~2026年第35週の定点医療機関からの累積報告数の男女比は、10歳未満の年齢群では1.12:1、10~19歳の年齢群では1.17:1と男性に多いが、20~59歳の年齢群では1:1.19、60歳以上の年齢群では1:1.18と女性に多かった。なお、60歳以上では男女人口差の影響もある点に留意が必要であるが、20歳未満では男性が多く、20歳以上では女性が多い傾向は、例年と同様であった。

 インフルエンザ入院サーベイランス(全国約500カ所の基幹定点医療機関が週毎に報告するインフルエンザによる入院患者数、重症例の推移を反映する)においては、直近5週間(2026年第31~35週)で増加傾向にある(57例→213例)。第35週に報告されたインフルエンザ入院患者の年齢群別の内訳は、1歳未満(4例)、1~4歳(23例)、5~9歳(24例)、10代(10例)、20代(4例)、30代(2例)、40代(3例)、50代(14例)、60代(21例)、70代(46例)、80歳以上(62例)であった。また、2026年9月2日現在、2025/26シーズンのインフルエンザによる入院患者の累積報告数24,929例のうち、10歳未満が9,175例、70歳以上が9,388例であった(インフルエンザの発生状況:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html)。2024/25シーズンの同時期と比較すると、報告された入院例のうち10歳未満が占める割合は増加し(20.2%→36.8%)、70歳以上が占める割合は減少(55.7%→37.7%)していた。

 病原体サーベイランス(インフルエンザウイルス分離・検出状況:https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/graph/virus/index.html)によると、2026年9月2日現在、2025/26シーズンのインフルエンザウイルス分離・検出報告数は9,862例で、AH1pdm09が272例、AH3亜型が5,635例、B型が3,955例(ビクトリア系統3,722例、系統不明233例)であった。また、直近5週間(2026年第31~35週)では37例で、AH1pdm09が36例(97%)、AH3亜型が1例(3%)の順であった。詳細は感染症情報提供サイト「インフルエンザ疫学情報速報」(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/article/influenza/article.html)を参照されたい。

 インフルエンザ脳症(5類感染症全数把握対象疾患である急性脳炎の届出のうち、病型の病原体としてインフルエンザウイルスの記載があったもの)は、2022/23 シーズンで44 例、2023/24シーズンで191例、2024/25シーズンで182例であった。2025/26シーズンは176例報告されており、うち、14例が死亡例であった。また、検出されたインフルエンザウイルスはA型132例(75.0%)、B型29例(16.5%)、血清型の未記載15例(8.5%)であった(2026年9月2日現在)。

 感染症法に基づくサーベイランス以外でインフルエンザの流行状況を示唆する情報として、国立病院機構140病院において医師がインフルエンザを疑い、インフルエンザ迅速抗原検査を実施した検査件数と検査陽性数が報告されることにより、検査陽性率が把握できる「国立病院機構におけるインフルエンザ全国感染動向」(https://nho.hosp.go.jp/cnt1-1_0000202504.html)等がある。

 「国立病院機構におけるインフルエンザ全国感染動向」で、直近の2026年8月1~15日に関して前年同時期の結果と比較すると、検査件数は2,000件ほど少ないものの(6,377件→4,367件)、検査陽性件数は増加し(31件→94件)、検査陽性率も上昇している(0.5%→2.1%)。なお、ARI病原体サーベイランスにおいても、インフルエンザウイルスA型の陽性率は第31週以降上昇傾向を示しており、国立病院機構のデータと同様の傾向が全国的にも確認されている(ARIサーベイランス週報:https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idss/target-diseases/acute-respiratory-infection/weekly-report/index.html)。

 直近の諸外国の発生動向をみると、第34週時点で、北半球の一部の国や地域においてインフルエンザ陽性率の上昇が報告されており(Global Respiratory Virus Activity: Weekly Update N°593:https://www.who.int/publications/m/item/global-respiratory-virus-activity--weekly-update-n--593)、シンガポールでは2026年9月1日にインフルエンザ症例数の増加と陽性率の上昇が発表されている(Update on influenza situation in Singapore:https://www.cda.gov.sg/news-and-events/update-on-influenza-situation-in-singapore/)。

 また、COVID-19については、2026年第35週の定点当たり報告数は1.47で、第34週(1.18)から微増しており、今後の動向の注視が重要である(ARIサーベイランス週報:https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idss/target-diseases/acute-respiratory-infection/weekly-report/index.html)。

 インフルエンザを含む呼吸器感染症への個人の予防策として、マスクの適切な着用を含む咳エチケット、手指衛生の徹底、適切な換気の実施等が推奨される。医療・福祉施設へのウイルスの持ち込みを防ぐことや、ワクチンの接種を検討することも重要である。なお、2026/27シーズンは、A型2亜型とB型ビクトリア系統による3価のインフルエンザワクチンが製造されることが決定しており(インフルエンザワクチン株:https://id-info.jihs.go.jp/immunization/vaccines/influenza/vaccine-strain/index.html)、65歳以上の高齢者、又は60~64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される者、あるいはヒト免疫不全ウイルス(HIV)により免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な者は、予防接種法上の定期接種の対象となっている〔インフルエンザワクチン(季節性):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html〕。2026/27シーズンを通したインフルエンザワクチンの供給量は、約5,190万回分が見込まれている(2026/27シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について:https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001741995.pdf)。

 インフルエンザの今後の発生動向について、引き続き包括的に監視していくことが重要である。インフルエンザの感染症発生動向調査等に関する詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい(引用日付2026年9月2日):

 

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