インフルエンザ抗体保有状況-2025年度速報第3報
公開日:2026年1月20日
2026年1月6日現在
背景及び目的
感染症流行予測調査事業における「インフルエンザ感受性調査」は、毎年、当該シーズンのワクチン接種前・流行前の抗体保有状況(免疫状況)を把握し、当該シーズンに抗体保有率が低い年齢層に対する注意喚起等を目的として実施している。
わが国におけるインフルエンザワクチンは、2015/16シーズンからB型の二系統を含む4価ワクチンの使用が開始されている。今シーズン(2025/26シーズン)は、これまで使用されていたB型山形系統株はWHOの推奨(1)に基づいて製造株として選定されなかったため(2)、A型2系統およびB型ビクトリア系統の計3系統によるワクチン構成となった。本感受性調査では今シーズン(2025/26シーズン)のワクチン株に用いられた3株(3)のインフルエンザウイルスに加えて従来使用されていたB型山形系統を含む4株のウイルスついて抗体保有状況の検討を行った。
1.調査対象および方法
令和7年度(2025年度)の調査は、15都道府県から各おおむね198名(100~200名)、合計2,874名を対象として実施されている。インフルエンザウイルスに対する抗体価の測定は、健常者から採取された血液(血清)を用いて、調査担当の都道府県衛生研究所において赤血球凝集抑制試験(HI法)により行われた。HI法に用いたインフルエンザウイルス(調査株)は以下の4種類であり、各ウイルスの卵増殖株を由来としたHA抗原を測定抗原とした。また、採血時期は原則として2025年7~9月(インフルエンザの流行シーズン前かつ当該シーズンのワクチン接種前)とした。
a)A/Victoria(ビクトリア) /4897/2022 [A(H1N1)亜型]
b)A/Perth(パース)/722/2024 [A(H3N2)亜型]
c)B/Phuket(プーケット)/3073/2013 [B型(山形系統)](2025/26シーズンワクチン非含有株)
d)B/Austria(オーストリア)/1359417/2021 [B型(ビクトリア系統)]
なお、本速報では抗体保有率として、感染リスクを50%に抑える目安と考えられているHI抗体価1:40以上について示した。
2.調査結果
2026年1月6日現在、北海道、茨城県、栃木県、群馬県、神奈川県、新潟県、福井県、山梨県、長野県、静岡県、三重県、愛媛県の12道県から合計2,618名の結果が報告された。5歳ごとの年齢群別対象者数は、0-4歳群:215名、5-9歳群:161名、10-14歳群:174名、15-19歳群:197名、20-24歳群:200名、25-29歳群:251名、30-34歳群:275名、35-39歳群:206名、40-44歳群:149名、45-49歳群:186名、50-54歳群:184名、55-59歳群:181名、60-64歳群:138名、65-69歳群:55名、70歳以上群:46名であった。
【年齢群別抗体保有状況】
A/Victoria(ビクトリア) /4897/2022 [A(H1N1)亜型]:図1上段
今シーズンのA(H1N1)亜型のワクチン株は、昨シーズンから変更されておらず、3年連続で同じ株となった。本調査株に対する1:40 以上のHI抗体保有率は、0-24歳の各年齢群および65-69歳群、70歳以上群で20%以上(24‐32%)であったが、25-64歳の各年齢群では20%未満(11‐19%)であった。
A/Perth(パース)/722/2024[A(H3N2)亜型]:図1下段
今シーズンのA(H3N2)亜型のワクチン株は昨シーズンから変更された。本調査株に対する1:40 以上のHI抗体保有率は、全年齢群で20%を上回り、特に5‐9歳群および10‐14歳群では50%前後と他の年齢群に比べて高い傾向であった。成人では、20‐34歳の各年齢群、55‐59歳群、70歳以上群で低い傾向であった。
B/Phuket(プーケット)/3073/2013 [B型(山形系統)]:図2上段
B型(山形系統)は2025/26シーズンにおいてワクチンに含まれていない。参考として試験が実施され、その結果を示した。1:40以上のHI抗体保有率は、0-4歳群と70歳以上群でそれぞれ10%、11%と低い割合を示した。30-34歳群と55-59歳群をピークに二峰性を示し、20歳以上の成人ではこれまでと同様の結果となったが、19歳以下の各年齢群では例年に比べて低い結果となっている。
B/Austria(オーストリア) /1359417/2021[B型(ビクトリア系統)]:図2下段
B型(ビクトリア系統)のワクチン株は2022/23シーズンから変更されていない。1:40以上のHI抗体保有率は、昨シーズン前の結果とおおむね同様の傾向を示し、60‐64歳群で最も高い抗体保有率(44%)を示したが、50-54歳群以下および70歳以上群で30%未満であった。
コメント
2025/26シーズンの今シーズンは、A(H3N2)亜型のワクチン株が変更となり、A(N1H1)pdm09亜型およびB型ビクトリア系統では変更がなかった。B型山形系統はワクチンに含まれなかったが、参考として測定を実施している。本調査では、インフルエンザ流行前のこれら4つの抗原に対するHI抗体保有状況を調査している。
2025年10月以降のインフルエンザウイルスAおよびBの検出報告数は、2,019件であった。 A HIpdm09およびAノンタイプ(NT)が合計で95件、AH3N2およびAH3NTが合計で1,865件検出された(2026年1月9日現在データ)(4)。
インフルエンザの2025年第52週定点当たり報告数は22.77(患者報告数87,534)となり、前週の定点当たり報告数32.73よりも減少した。基幹定点医療機関から報告された、インフルエンザによる入院報告数は1,401例であり、前週(1,896 例)から減少した。(5)。
今後の推移については不確定であるが、例年の傾向として今後も継続的に感染者が報告される可能性が示唆される。抗体保有率の低い年齢層においては注意が必要である。今回の結果は2026年1月6日時点の暫定値で2025年度インフルエンザ抗体保有状況の速報第33報であり、今後結果が変化する可能性があることに注意が必要である。
国立感染症研究所 予防接種研究部/ インフルエンザ研究センター
参考文献
1. WHO. Recommended composition of influenza virus vaccines for use in the 2025-2026 northern hemisphere influenza season. 1-11, 2025.
2. 長谷川秀樹, 渡邉真治. 令和7(2025)年度インフルエンザワクチン用製造株とその推奨理由. IASR 46, 224-226, 2025.
3. NIID. インフルエンザワクチン株. Available online: https://id-info.jihs.go.jp/diseases/a/influenza/040/atpcs002.html (accessed on November 28, 2025).
4. NIID. 速報集計表(病原体個票による報告)(自動更新)2025/26シーズン 月別. Available online: https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/graphdata/020/index.html#table (accessed on 2026年1月13日).
5. NIID. インフルエンザ疫学情報速報 2025年第51週. Available online: https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/article/influenza/article.html (accessed on 2026年1月13日).


