マダニ対策、今できること
最終更新日:2025年8月7日
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や日本紅斑熱等に関連して、一般の方向けのマダニ対策に関するガイドを更新しました(2025年8月6日改訂)
「マダニ対策、今できること」(PDF: 3,5MB)
内容
という5つの項目に関してご紹介します。
また、参考資料として、マダニの分類とマダニ媒介感染症、マダニ媒介SFTSについて、そしてマダニの生活環に関してご紹介します。
1.マダニの生息場所
マダニは、シカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多く生息しています。
また、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道などにも生息しています。
2.マダニから身を守る服装
マダニから身を守るために、野外では、腕・足・首など、肌の露出を少なくしましょう !
首にはタオルを巻くか、ハイネックのシャツを着用しましょう。
シャツの袖口は軍手や手袋の中に入れましょう。
シャツの裾はズボンの中に入れましょう。
ハイキングなどで山林に入る場合は、ズボンの裾に靴下を被せましょう。
農作業や草刈などではズボンの裾は長靴の中に入れましょう。
明るい色の服はマダニが確認しやすいです。
マダニが生息する場所では、半ズボンやサンダル履きは適当ではありません。
3.マダニから身を守る方法
ダニ類の多くは、長時間(10日間以上のこともある)吸血します。
吸血中のマダニを無理に取り除こうとすると、マダニの口器が皮膚の中に残り化膿することがあるので、皮膚科等の医療機関で、適切な処置(マダニの除去や消毒など)を受けて下さい。
マダニに刺されたら、数週間程度は体調の変化に注意し、発熱等の症状が認められた場合は、医療機関で診察を受けて下さい。
野外活動後は、上着や作業着は、家の中に持ち込まないようにしましょう。
また、シャワーや入浴で、ダニが付いていないかチェックしましょう。マダニが付着しているときは、「できもの」のように見えることがあります。
ガムテープや粘着カーペットクリーナーを使って服に付いたダニを取り除く方法も効果的です。
4.忌避剤の効果
マダニに対する忌避剤(虫よけ剤)が、2013年から新たに認可されました。
現在は、ディート、イカリジンの2種類の有効成分を含む忌避剤が市販されています。
忌避剤の使用でマダニの付着数は減少しますが、マダニの付着を完全に防ぐわけではありません。
忌避剤を過信せず、様々な防護手段と組み合わせて対策を取ってください。
5.国内で入手できる忌避剤の種類と特徴
ディートは5~30%の製品が、イカリジンは5%~15%の製品が販売されています。
有効成分の濃度によって効力持続時間が異なり、高濃度の製品ほど長時間効力が持続します。
また、ディートの使用上の注意事項として、例えば30%の製品は12歳未満に使用しないなど、年齢制限があります。
高濃度のディートでは、プラスチック・化学繊維・皮革を腐食することがあります。
参考資料1:マダニの分類とマダニ媒介感染症
マダニは、世界中に800以上の種が知られています。日本からは52種以上が記録されています。
日本で病原体を媒介することで知られるマダニ科は5属48種以上が知られています。
マダニが媒介する感染症としては、ウイルスを病原体とするものとして重症熱性血小板減少症候群、いわゆるSFTS、ダニ媒介脳炎、エゾウイルス感染症、キャサヌル森林病、クリミア・コンゴ出血熱などがあります。
リケッチアを病原体とするものとして、日本紅斑熱やQ熱などがあります。スピロヘータを病原体とするものとして、ライム病などがあります。細菌を病原体とするものとしてボレリア症や野兎病などがあります。
参考資料2:マダニ媒介SFTSとは
SFTSの日本語での正式名称は「重症熱性血小板減少症候群 」です。
2013年から2025年4月30日までに117名の死亡事例を含む1,071名の報告があり、増加傾向にあります。
少なくともフタトゲチマダニとキチマダニが媒介者として知られています。
患者は60代以上の高齢者に多く、中央値は75歳です。
推定感染地域は西日本に多いですが、近年、東日本からも報告されています。
潜伏期間は6日~2週間で、4月~8月に多く発症しています。数は少ないですが、冬期の感染も確認されています。
感染経路としては、マダニによるものの他に、罹患したネコやイヌなどの動物を介して感染することもあります。愛玩動物のマダニ対策も重要です。
参考資料3:マダニの生活環
マダニは、幼ダニ、若ダニ、成ダニの各ステージで1回以上、生涯で少なくとも3回は吸血します。
ヒト以外に、野ネズミ、野ウサギ、シカ、イノシシなどの野生動物や、ネコ、散歩中のイヌなどからも吸血します。
また、マダニの多くは春から秋(3~11月)にかけて活動が活発になりますが、冬季に活動する種類もいます。