カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales: CRE)病原体サーベイランス, 2024年

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales: CRE)病原体サーベイランス, 2024年
(IASR Vol. 47 p97-99: 2026年5月号)
カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)病原体サーベイランスは, 通知(健感発0328第4号, 2017年3月28日)に基づき実施されている。検体採取日が2024年1月1日~12月31日として病原体検出情報サブシステムに登録された株のうち, 保菌例などCRE感染症届出患者以外からの分離株である旨が明記された株を除く1,872株(2026年2月2日現在)の概要を示す。
1,872株のうち, 1,846株(98.6%)には発生動向調査届出患者由来であることを示す発生動向報告IDの記載があり, CRE感染症届出患者1,802名由来(うち40名は複数菌株分離)と考えられた。発生動向報告IDの記載がない残る26株(1.4%)にも届出患者分離株が含まれうるが, その数は不明である。検査実施状況の指標として, 1,872株を2024年のCRE感染症の発生動向調査届出(患者報告)数2,277例(感染症発生動向調査速報)で除した報告率は82.2%であった。
1,872株の分離検体は, 尿(n=540, 28.8%), 血液・髄液(n=459, 24.5%), 呼吸器検体(n=363, 19.4%), 腹腔内検体(n=152, 8.1%), 皮膚・軟部組織検体(n=115, 6.1%), 穿刺液(n=98, 5.2%), 菌種は, Klebsiella aerogenes(n=731, 39.0%), Enterobacter cloacae complex(n=540, 28.8%), Klebsiella pneumoniae(n=247, 13.2%), Escherichia coli(n=127, 6.8%), Serratia marcescens(n=68, 3.6%), Citrobacter freundii(n=45, 2.4%), Klebsiella oxytoca(n=31, 1.7%)の順に多く, 検体の種類および上位5菌種の順は2017年以降1-7)変わらない。
表1に, 地方衛生研究所等で実施された各検査数と陽性数を示す。1,872株のうち, カルバペネマーゼ遺伝子陽性株は273株(14.6%)であった。この割合は, CRE病原体サーベイランス開始以降最も低かった2023年の13.3%7)に次いで2番目に低かった。273株のうち, 3株は複数の遺伝子が陽性となった。内訳は, NDM型とOXA-48型, NDM型とKPC型, IMP型とGES型が各1株である。また, VIM型1株(塩基配列決定による遺伝子型はVIM-1)が, CRE病原体サーベイランス開始以来, はじめて報告された。
IMP型陽性195株の菌種は, E. cloacae complex(n=87, 44.6%), K. pneumoniae(n=50, 25.6%), E. coli(n=29, 14.9%), C. freundii(n=12, 6.2%), K. oxytoca(n=11, 5.6%), S. marcescens(n=3, 1.5%), およびK. aerogenes, Klebsiella variicola, Providencia sp.各1株であった。IMP型カルバペネマーゼ遺伝子の塩基配列が決定された115株(23道府県)の内訳と報告地域は, IMP-1が79株(19道府県)で全ブロックから, IMP-6は34株(9府県)であり, 近畿(n=20), 中国四国(n=8), 東海北陸(n=5), 九州沖縄(n=1)から報告された。それ以外に, 関東甲信静よりIMP-11とIMP-14が各1株報告された。
IMP型はカルバペネマーゼ遺伝子陽性株の大半を占める遺伝子型であり, その割合は2021年までは9割前後で推移していた。しかし, 2022年以降IMP型の占める割合が低下し8), 2024年には約7割(71.4%)となった。
一方, NDM型, KPC型, OXA-48型陽性株はあわせて76株であり, カルバペネマーゼ遺伝子陽性株(n=273)の27.8%を占めた。76株のカルバペネマーゼ遺伝子型および菌種の内訳を表2に示す。76株は71名より分離され, うち63名(88.7%)は海外渡航歴なし, もしくは不明の患者であった。海外渡航歴なし・不明患者由来株の報告地域は, 2018年の12都道府県9), 2023年の17都道府県から, 2024年には25都道府県へと拡大している。
NDM型カルバペネマーゼ産生菌は世界的に増加傾向であり, 米国疾病予防管理センター(CDC)からもその急増が報告されるなど世界的な懸念となっている10)。わが国でもその検出数の増加が顕著であり, E. coliに限っては2024年にNDM型陽性株数(n=42)がIMP型株数(n=29)を大きく上回った。これまでIMP型が大半を占めていたわが国においても, 渡航歴の有無を問わず多様なカルバペネマーゼ遺伝子が検出されており, カルバペネマーゼの型別同定の重要性が高まっていると考えられた。
参考文献
- IASR 39: 162-163, 2018
- IASR 40: 157-158, 2019
- IASR 42: 123-124, 2021
- IASR 43: 215-216, 2022
- IASR 44: 130-131, 2023
- IASR 45: 129-130, 2024
- IASR 47: 52-54, 2026
- 松井真理ら, IASR 46: 26-28, 2025
- IASR 40: 158-159, 2019
- CDC, CDC Report Finds Sharp Rise in Dangerous Drug-Resistant Bacteria(アクセス日:2026年2月27日)
https://www.cdc.gov/media/releases/2025/2025-cdc-report-f inds-sharp-rise-in-dangerous-drug-resistant-bacteria.html
国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所
薬剤耐性研究センター
感染症サーベイランス研究部
全国地方衛生研究所
