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腸管出血性大腸菌感染症における血清群O103とO166の届出状況について(2025年第1週–第30週診断、2025年7月30日時点)

国立健康危機管理研究機構
国立感染症研究所応用疫学研究センター
実地疫学専門家養成コース(FETP)
感染症サーベイランス研究部
(掲載日:2025年8月27日)


腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli: EHEC)はVero毒素(Vero toxin: VTまたはShiga toxin: Stx)を産生する大腸菌である。EHEC感染症は少量の菌数(50個程度)で発症することが報告されている1)

大腸菌の分類ではO抗原とH抗原が血清型別に用いられるが、EHECにおいてはVT毒素産生性が病原性に重要である2)

腸管出血性大腸菌感染症は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」に基づく感染症発生動向調査において、1999年の同法施行時から3類感染症全数把握疾患に指定されている3)

EHEC感染症の主な症状は腹痛, 水様性下痢および血便である。EHEC感染後に溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome: HUS)や脳症等の重篤な合併症を発症する場合がある。HUSを発症した患者の致命率は1-5%と報告されている1)

国内におけるEHECの集団感染事例の原因は食品(牛肉, 牛生肉, 牛レバー刺し, ハンバーグ, サラダ等)や反芻動物との接触等が報告されてきた4)

感染症発生動向調査において、国内における過去5年(2020–2024年)のEHEC感染症の届出数は、各年3088–3822例であり、うち第1週から第30週の届出数は各年累積1200-1628例であった5–10)。そのうち、届出数が最も多い血清群O157が占める割合は50%前後で、次いで多いO26が占める割合は15%前後であった。過去5年間においてO157およびO26以外の血清群が占める割合は高くても5%前後で、多くは1%に満たない値で推移していた。2025年第1週から第30週に届出されたEHEC感染症(累積1500例)では、O157(37%, 556/1500)およびO26(10%, 146/1500)以外の血清群が占める割合は53%(798例)であり、O157やO26以外の血清群の届出が多かった。特に血清群O103は、例年同期の中央値である4.6%(範囲:3.5-9.0%)に比べて9.0%(135/1500)であり、O166の届出数は、例年同期の中央値である0.1%(範囲:0.0-0.3%)に比べて、1.4%(21/1500)と、例年より多い届出数で推移している。例年は届出数の比較的少ない血清群の集積が生じている可能性があることから、O103およびO166の届出状況についてまとめた。

なお、今回解析した情報は2025年7月30日時点の感染症サーベイランスシステムの集計値に基づくものであり、後日更新される場合があることに留意されたい。

O103の発生状況

2015–2024年のO103の年間届出総数は各年126–237例であった(図1)。2025年第1週から第30週におけるO103の届出数は135例で、2015年以降各年の同時期 (中央値:58.5例;範囲:35–107例) と比較して基準上限(平均に標準偏差の2倍を加算したもの)である117例を超えていた(図1)。
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直近のO103の届出数は、第28週までは10例前後であったが、第29週に25例と倍増し、第30週は27例であった(図2A)。都道府県別では北海道から九州まで32都道府県から届出があり、10例以上の届出数があった都道府県は群馬県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県であった(図2B)。
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届出症例(135例)の基本情報は年齢中央値が28歳(範囲:1–95歳)、性別は女性が84例(62.2%)、類型は無症状病原体保有者が75例(55.6%)、届出時点の重症例(HUS、脳症を発症した症例)や死亡例は報告されていない(表1)。

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O166の発生状況

2015–2024年のO166の年間届出総数は各年0–5例であった(図3)。2025年第1週から第30週におけるO166の届出数は21例で、2015年以降各年の同時期(中央値:1.5例;範囲:0–5例)と比較して基準上限である3例を超えていた(図3)。
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直近のO166の届出数は第25週から第28週にかけて2例、第29週は4例であり、第30週に1例報告があるなど継続的に届出がされてきた(図4A)。都道府県別では8県から届出があり、群馬県が最多で6例、3~4例の届出数があった都道府県は宮城県、岩手県、栃木県であった(図4B)。
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届出症例の基本情報は年齢中央値が41歳(範囲:19–60歳)、性別は男性が12例(57.1%)、類型は無症状病原体保有者が81.0%(17/21)、届出時点の重症例(HUS、脳症を発症した症例)や死亡例は報告されていない(表2)。
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広域発生事例の可能性の検討

2025年第30週までに、O103およびO166が過去10年の同時期と比較して基準上限を超えて報告されており、特に直近での届出数の増加が観察された。O103は32都道府県、O166は8県から届出られ、これらの血清群の広域的な集積が生じている可能性が考えられた。同一血清群の広域的な集積が発生した際に、同一感染源の存在の有無を検討することが重要である。なお、他の主要な血清群と同様に、広域発生事例の可能性がある場合は、厚生労働省より発出された「腸管出血性大腸菌による広域的な感染症・食中毒に関する調査(平成30年6月29日付け事務連絡)」11)を参照し、病原体の特性に応じた菌株解析の実施や疫学調査による把握が重要である。

引用文献

  1. 国立健康危機管理研究機構感染症情報サイト, 腸管出血性大腸菌感染症
    https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ta/ehec/010/index.html
  2. 国立健康危機管理研究機構感染症情報サイト, 腸管出血性大腸菌感染症, O抗原
    https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ta/ehec/020/ehec-bac1-o-antigen.html
  3. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
    https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000114/
  4. 厚生労働省, 腸管出血性大腸菌Q&A
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177609.html
  5. 国立感染症研究所. 腸管出血性大腸菌感染症 2025年3月現在 (IASR Vol. 46 p89-91: 2025年5月号)
    https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/IASR/Vol46/543/543t.html
  6. 国立感染症研究所. 腸管出血性大腸菌感染症 2024年3月現在 (IASR Vol. 45 p71-73: 2024年5月号)
    https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/45/531/article/010/index.html
  7. 国立感染症研究所. 腸管出血性大腸菌感染症 2023年3月現在(IASR Vol.44 p67-68:2023年5月号)
    https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/44/519/article/010/index.html
  8. 国立感染症研究所.腸管出血性大腸菌感染症 2022年3月現在 (IASR Vol. 43 p103-104: 2022年5月号)
    https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/ehec-m/ehec-iasrtpc/11138-507t.html
  9. 国立感染症研究所.腸管出血性大腸菌感染症 2021年3月現在 (IASR Vol.42 p87-89: 2021年5月号)
    https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/ehec-m/ehec-iasrtpc/10386-495t.html
  10. 国立感染症研究所.腸管出血性大腸菌感染症 2020年3月現在 (IASR Vol. 41 p65-66: 2020年5月号)
    https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/ehec-m/ehec-iasrtpc/9623-483t.html
  11. 厚生労働省. 腸管出血性大腸菌による広域的な感染症・食中毒に関する調査について(平成30年6月29日付け事務連絡)
    https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000307591.pdf

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