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カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales: CRE)病原体サーベイランス, 2017~2023年

(IASR Vol. 46 p43-45: 2025年2月号)

カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)病原体サーベイランスは, 結核感染症課長通知(健感発0328第4号, 2017年3月28日)に基づき, 届出患者分離株を対象として実施されている。地方衛生研究所等で実施されたカルバペネマーゼ遺伝子の検出結果等は, 感染症サーベイランスシステムの病原体検出情報サブシステムに登録され, 集計値は検体採取年ごとに病原微生物検出情報月報(IASR)で報告されている1-6)。本稿では, 2017~2022年のIASR報告集計値および2023年の暫定集計値(2024年12月5日時点の登録情報)を用いて, 7年間のデータの動向を示す。

CRE病原体サーベイランス報告株数をCRE感染症の発生動向調査届出数で除した報告率は, 開始当初の2017年は52%であったが, 翌2018年には74%に達し, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響により低下した期間を含めても70%台を維持している。なお, 年による報告自治体の大幅な変動はなく, サーベイランス開始以降継続して報告のない, もしくは, 報告率の低い自治体が存在している。

図1にCRE病原体サーベイランスにおけるカルバペネマーゼ遺伝子検出株数を示す。全報告株数におけるその割合(図1, 折れ線)は年々減少し, 2023年暫定値はこれまでで最も低い13.3%となった。国内型カルバペネマーゼ遺伝子であるIMP型の検出株数は, 263株であった2019年以降減少し続け, 2023年には最多時の約6割に相当する159株であった。一方で, カルバペネマーゼ遺伝子検出株の総数は, NDM型等の検出株数増加の影響により, 2021年以降横ばいである。

図2に, 海外型カルバペネマーゼ遺伝子と呼ばれるNDM型, KPC型, OXA-48型の検出株数を, 分離患者の海外渡航歴の有無別に示す。NDM型は病原体サーベイランス開始以降減少傾向が続いていたが, 2022年より増加に転じた。NDM型検出株は分離患者に明確な海外渡航歴のない国内例の増加が顕著であり, 国内伝播の拡大が推察された。一方, KPC型およびOXA-48型検出株数は, NDM型に比べ少なく, かつ, 分離患者の約半数に海外渡航歴が確認されている。いずれも2023年に増加していることから, 海外との往来の回復にともなう国内持ち込み頻度の増加, および持ち込み例に関連した国内伝播があったと推察された。また, 海外渡航歴なし/不明患者由来株の報告地域は, 2018年に12都道府県であったが7), 2023年には17都道府県となり, 国内の複数の地域に定着, 拡散しつつあると考えられた。

7年間のCRE病原体サーベイランスデータより, IMP型検出株が減少傾向にある一方で, NDM型, KPC型, OXA-48型の検出株数は増加傾向である, といったわが国におけるCREのカルバペネマーゼ遺伝子型の変化を明らかにすることができた。NDM型, KPC型, OXA-48型は, 海外で多く報告され, わが国での報告が少ない遺伝子型であるため「海外型」と呼ばれているにすぎず, 今後は分離患者の海外渡航歴の有無にかかわらず, 様々なカルバペネマーゼ遺伝子保有株が検出されうることを念頭に置く必要があると考えられる。また, 近年, CRE感染症の治療薬としてイミペネム/レレバクタム, セフィデロコル, セフタジジム/アビバクタムが相次いで発売された。これらの新規抗菌薬は, 産生するカルバペネマーゼの種類に応じて有効性が異なる8)。セフィデロコルに耐性を示すNDM-5 メタロ-β-ラクタマーゼ産生大腸菌の国内分離例も報告されており9), カルバペネマーゼ遺伝子保有状況やその推移を正確に把握するための全国的かつ継続的なCRE病原体サーベイランスの実施と情報還元が重要であると考えられた。

参考文献

国立感染症研究所薬剤耐性研究センター
 松井真理 鈴木里和 稲嶺由羽 菅井基行

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