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デング熱

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(2014年10月14日改訂)

ネッタイシマカなどの蚊によって媒介されるデングウイルスの感染症である。デングウイルスはフラビウイルス科に属し、4種の血清型が存在する。比較的軽症のデング熱と、重症型のデング出血熱とがある。

疫学

デングウイルス感染症がみられるのは、媒介する蚊の存在する熱帯・亜熱帯地域、特に東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国であるが、アフリカ・オーストラリア・中国・台湾においても発生している(図1)。全世界では年間約1億人がデング熱を発症し、約25万人がデング出血熱を発症すると推定されている。海外渡航で感染し国内で発症する例(輸入症例)が増加しつつあり、2014年の夏季には輸入症例により持ち込まれたと考えられるウイルスにより150例以上の国内流行が発生した。

  •  デング熱・デング出血熱の発生地域の画像

    図1.デング熱・デング出血熱の発生地域

感染症法施行後の患者届出数は、1999年(1~3月を除く)9症例、2000年18症例であり、2010年には初めて年間200例を超えた。年度ごとの変動は、流行地への海外渡航者数、日本人旅行者のよく行く流行地でのデング熱の流行状況と関係しているようである。

病原体

デングウイルスは、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科に属するウイルスで、やはり蚊(ネッタイシマカAedes aegypti、ヒトスジシマカAedes albopictus)によって媒介される。4つの血清型(1型、2型、3型、4型)に分類され、たとえば1型にかかった場合、1型に対しては終生免疫であるが、他の血清型に対する交叉防御免疫は数ヶ月で消失し、その後は他の型に感染しうる。この二度目の感染時に、重症化する確率が高くなるといわれている。そのため、型別も含めた実験室内診断が重要である。デングウイルスはヒト→蚊→ヒトの感染環を形成し、日本脳炎ウイルスにおけるブタのような増幅動物は存在しない。

臨床症状

デングウイルスに感染した場合、かなりの割合で不顕性感染に終わると考えられている。しかし、実際には感染者のどのぐらいの率が不顕性感染として終わるかという点は報告によりさまざまであるが、約50~80%が不顕性感染である。

(1)デング熱(DF)

症状を示す患者の大多数はデング熱と呼ばれる一過性熱性疾患の症状を呈する。

感染3~7日後、突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともある。発熱のパターンは二峰性になることが多いようである。発症後、3~4日後より胸部・体幹から始まる発疹が出現し、四肢・顔面へ広がる(図2)。

  • デング熱患者の発疹(日本人男性患者)の画像

    図2.デング熱患者の発疹(日本人男性患者)

これらの症状は1週間程度で消失し、通常後遺症なく回復する。

(2)デング出血熱(DHF)

デングウイルス感染後、デング熱とほぼ同様に発症し経過した患者の一部において突然、血漿漏出と出血傾向を主症状とするデング出血熱となる。重篤な症状は、発熱が終わり平熱に戻りかけたときに起こることが特徴的である。
患者は不安・興奮状態となり、発汗がみられ、四肢は冷たくなる。極めて高率に胸水や腹水がみられる。また、肝臓の腫脹、補体の活性化、血小板減少、血液凝固時間延長がみられる。細かい点状出血が多くの例でみられる。さらに出血熱の名が示すように、10~20%の例で鼻出血・消化管出血等がみられる。しかし、症状の主体は血漿漏出である。血漿漏出がさらに進行すると、循環血液量の不足からhypovolemic shockになることがある。症状の重症度によりGrade1~4の4段階に分けられ、ショック症状を示すGrade3、4はデングショック症候群と呼ばれることもある(表1)。

表1.WHOによるデング出血熱の病態分類
Grade 1 発熱と非特異的症状、出血傾向としてTourniquetテスト(注)陽性。
Grade 2 Grade1に加えて自発的出血が存在する。
Grade 3 頻脈、脈拍微弱、脈圧低下(20mmHg以下)で代表される循環障害
Grade 4 ショック状態、血圧や脈圧測定不能2009年のWHOガイドラインでは、重篤な血漿漏出、重篤な出血、重症臓器障害をあわせて重症デングとすることが提唱されている。

注:Tourniquetテスト:日本では臨床医がデング熱患者を診察した時にあまり実施されていないが、患者の腕を駆血帯で圧迫することにより、点状出血が増加する現象を見ることである。(2.5cm)2あたり10以上の溢血点(点状出血)を観察した場合陽性とする。陽性の場合、デング熱の診断上重要な指標となりうる。

病原診断

病原体診断ではRT‐PCR法による血液中のウイルス遺伝子の検出、非構造タンパク抗原(NS1抗原)の検出および蚊由来C6/36細胞、BHK細胞やVero細胞により、ウイルス分離を行う。型特異プライマーを用いてウイルス遺伝子を検出すれば、型別診断ができる。

血清診断ではIgM捕捉ELISAによるIgM抗体の検出を行う。急性期に比し回復期における特異中和抗体価、HI抗体価の上昇によっても診断可能である。ただし、日本脳炎ウイルスに免疫を有する多くの日本人においては、デングウイルス感染により、日本脳炎ウイルス抗体価も上昇する例が多いので注意を要する。1型から4型のウイルスそれぞれに対するプラーク減少法により、中和抗体価を測定すれば、型別診断も可能である。

治療・予防

通常のデング熱の場合には輸液や解熱鎮痛剤程度にとどまることがほとんどである。ただし、解熱鎮痛剤としてサリチル酸系統のものは出血傾向やアシドーシスを助長することから禁忌であり、アセトアミノフェンが勧められる。

デング出血熱の場合には循環血液量の減少、血液濃縮が問題であり、適切な輸液療法が重要となる。輸液剤としては単純な生理食塩水、乳酸加リンゲル液などの他に新鮮凍結血漿、膠質浸透圧剤などが必要になることもあり、バイタルサインなどとともにヘマトクリット値をモニターしながら投与する。時には、酸素投与や動脈血pHの状況により、重炭酸ナトリウムの投与なども行われる。

予防に関しては、日中に蚊に刺されない工夫が重要である。具体的には、長袖・長ズボンの着用、昆虫忌避剤の使用などである。

感染症法における取り扱い

全数報告対象(4類感染症)であり、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない。

注意:感染症法における取り扱いは変更されることがあります。最新の届出基準はこちら(外部サイトにリンクします)をご覧ください。

(国立感染症研究所ウイルス第一部 高崎智彦)

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