梅毒
概要
梅毒は、Treponema pallidum subsp. pallidumを病原体とする感染症である。主な感染経路は性行為による粘膜を介した接触である。全身に多彩な症状を引き起こし、進行すると神経障害や心血管障害を起こす。妊娠中に感染することで胎児に先天梅毒を生じる。
病原体
原因菌は、らせん状の形態を持つ梅毒トレポネーマ(T. pallidum subsp. pallidum)である。本菌の宿主はヒトのみである。また本菌は酸素に弱く、体外では非常に短時間しか生存できない。
疫学
古くから報告されている疾患で、ペニシリンの普及により第二次世界大戦以降発生数は減少したが、近年日本を含む複数の国で増加が報告されている。
感染経路
感染経路は、主に性行為を中心とした粘膜接触である。まれに輸血や創傷部位からの感染もあるが、現代では血液製剤のスクリーニングによりほとんど見られない。妊娠中に梅毒に感染していると胎盤を介して胎児が感染し、先天梅毒の原因となる。
臨床像
性的接触後、2から4週間程度の潜伏期ののち、硬性下疳や無痛性リンパ節腫脹などの限局性の病変が出現し(早期顕症梅毒1期)、次いで全身にバラ疹、丘疹性発疹などが生じる(早期顕性梅毒2期)。発症から数週間経過すると、症状は自然に軽快するが、未治療であれば進行し、ゴム種や心血管症状が出現する梅毒に進展する(後期顕性梅毒)。神経症状を有する梅毒は、どの病期においても起こりうる(神経梅毒)。
先天梅毒では皮膚症状や骨軟骨炎、リンパ節腫脹などを伴い、進行と共に眼や耳、歯の症状を呈する。
病原体診断
抗原抗体反応を用いた血清学的診断による。カルジオリピンを用いた非トレポネーマ抗体とトレポネーマ特異抗体の両方の測定により病期と活動性を判定する。
治療
主にペニシリン系抗菌薬による治療が行われる。
予防法・ワクチン
性行為の際にはコンドームを使用するほか、梅毒が疑われる症状を呈した場合は、早期診断、早期治療、性的パートナーへの検査勧奨が重要である。
先天梅毒の予防では、妊婦健診におけるスクリーニング検査、早期検査、早期治療が重要である。
承認されたワクチンは無い。
法的取り扱い
感染症法では五類感染症の全数把握対象疾患に定められている。
病原体検出マニュアル
無し
関連情報
無し
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更新日(last updated):2025年4月30日
最終確認日(last reviewed):2025年4月30日