麻しん
概要
麻しんは麻しんウイルスを病原体とする急性の全身感染症であり、主な感染経路は空気感染である。発熱、発疹、カタル症状を呈し、重症化すると肺炎や脳炎を引き起こす。また、感染・回復後、数年から数十年後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することがある。麻疹ワクチンによって予防が可能である。
病原体
原因ウイルスは、麻しんウイルスである。 麻しんウイルスはパラミクソウイルス科モルビリウイルス属に属するRNAウイルスである。
疫学
世界保健機関(WHO)を中心に各地域において麻しん排除目標が掲げられ、各国で対策が進められている。その一方で、予防接種ならびにサーベイランス強化などの対策が脆弱な地域では流行が起きている。 国内では、2015年に麻しんの排除状態にあることがWHOにより認定され、以降排除状態が維持されている。これ以降は海外からの輸入例とこれらを発端とした感染事例がみられている。
感染経路
自然宿主はヒトのみであり、感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染である。症状出現前から感染力があり、感染力が非常に強い。
臨床像
通常、潜伏期間は10から12日間である。発熱と上気道症状を呈するカタル期、解熱傾向になったのち再発熱して発疹が出現する発疹期を経て、回復期に至る。合併症として肺炎、脳炎などを起こし、死亡することがある。回復後、数年から数十年後に発症する神経疾患の亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を引き起こすことがある。 また、麻しんウイルスへの免疫が不十分な場合、典型的な症状を示さず比較的軽症の修飾麻しんとなることがある。
病原体診断
ウイルス遺伝子の検出、IgM抗体検出、ペア血清での抗体陽転または抗体価の上昇の確認による。
治療
特異的治療法はなく、対症療法を行う。
予防法・ワクチン
空気感染するため、手洗いやマスクのみでは十分な予防はできない。
麻しんワクチンが有効である。定期接種として、MR(麻しん・風しん)ワクチンを用いて1歳と就学前の2回接種が行われている。また、患者発生時には周辺の感受性者に対して緊急ワクチン接種や免疫グロブリン製剤の投与も検討される。
法的取り扱い
感染症法では五類感染症の全数把握対象疾患に定められている。学校保健安全法では第二種感染症に定められている。
病原体検出マニュアル
- 病原体検出マニュアル 麻疹(第4版)(PDF:1,225KB)
- 病原体検出マニュアル <麻疹・風疹同時検査法>(第2版)(PDF:1,083KB)
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更新日(last updated):2025年4月30日
最終確認日(last reviewed):2025年4月30日