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エムポックス

概要

エムポックスはモンキーポックスウイルス(別名エムポックスウイルス、以後エムポックスウイルスと表記)を病原体とする感染症であり、国内では四類感染症に位置付けられている。主な感染経路は接触感染および飛沫感染である。発熱、皮疹、リンパ節腫脹などの症状を呈し、重症化すると死亡することもある。

病原体

エムポックスウイルスはポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に属する二本鎖DNAウイルスである。エムポックスウイルスにはクレード1とクレード2の二つの遺伝子型があり、さらに1a、1b、2a、2bのサブクレードに分けられる。

疫学

エムポックスは1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国:DRC)で初めて報告されて以降、アフリカ中央部から西部にかけて主に発生していた。過去に流行地域からの帰国者で散発的な発生が報告されていたが、2022年5月以降、欧米を中心に男性間で性交渉を行う者(MSM; men who have sex with men)の間で性的接触に伴う感染によりクレード2のエムポックスが流行した。また、2023年以降はDRCを中心としたアフリカ諸国でクレード1のエムポックスの流行が報告されている。

日本では2022年7月に欧州でエムポックスと診断された者との接触歴のある帰国男性が初の症例として報告された。

感染経路

ヒトからヒトへの感染は、皮膚病変や体液からの接触感染、飛沫感染が主体であり、性的接触や家庭内での接触による感染、リネン類を介した医療従事者への感染が報告されている。

動物由来感染症でもあり、自然宿主はげっ歯類と考えられる。動物からヒトへの感染は、感染動物に咬まれること、体液や皮膚病変への接触、加熱不十分な肉の喫食による。

臨床像

潜伏期間は5から21日(通常6から13日)。発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛で発症し、1から5日後に顔面から皮疹が出現し体幹、四肢へ広がる。水疱、膿疱、痂皮を経て2から4週間で治癒する。粘膜や眼にも発疹が生じ、水痘、手足口病、麻しん、梅毒などとの鑑別が困難なことがある。2022年のクレード2エムポックスウイルスの流行では、発熱やリンパ節腫脹の頻度が低く、肛門・直腸、肛門周囲の病変が多いとされる。

2022年以前は、致命率は0から11%でありクレード1で高い傾向があると報告されているが、2022年以降の流行ではこれよりも低いと報告されている。

病原体診断

水疱内容物や痂皮などを検体として用いた遺伝子検査やウイルス分離による。

治療

治療は支持療法と疼痛管理が中心である。国内では製造販売承認が得られた抗ウイルス薬がある。現在は特定臨床研究の枠組みでの投与が可能である。

予防法・ワクチン

感染対策としては、接触予防策と飛沫予防策が必要であり、手指衛生、リネン類の共用回避、サージカルマスクや眼の防護具を含むPPEの着用が重要である。患者の状態や処置に応じて個室隔離や空気感染予防策も検討される。

ワクチンは痘そうワクチンがエムポックス予防にも有効である。

法的取り扱い

感染症法において四類感染症に定められている。

病原体検出マニュアル

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更新日 (last updated):2025年4月28日

最終確認日(last reviewed):2025年4月28日                         

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