コンテンツにジャンプ
国立健康危機管理研究機構
感染症情報提供サイト
言語切り替え English

トップページ > サーベイランス > 病原微生物検出情報 (IASR) > 風疹・先天性風疹症候群 2026年2月現在

風疹・先天性風疹症候群 2026年2月現在

logo35.gif

風疹・先天性風疹症候群 2026年2月現在

(IASR Vol. 47 p59-61: 2026年4月号)

風疹は風疹ウイルスによる急性感染症であり, 発熱, 発疹, リンパ節腫脹を主徴とする。妊娠中の風疹ウイルス感染は, 死産, 流産または児に先天性心疾患, 難聴, 白内障など様々な症状を示す先天性風疹症候群(CRS)を生じる可能性がある。風疹ならびにCRSに対する特異的な治療法はないが, 風しん含有ワクチンを用いての予防が可能であり, 世界保健機関(WHO)を中心に各国における風疹排除に向けた対策が推進されている(本号3ページ)。風疹排除の定義は「適切なサーベイランスが実施されているある地域(国等)において, 12カ月間以上継続して伝播した風疹ウイルス(endemicウイルス)が存在しない状態, さらにendemicウイルスによるCRS児の発生がない状態」であるが, 排除状態の認定にはさらに, 「最後のendemicウイルスによる症例から少なくとも36カ月間, endemicウイルスの伝播がないこと」, 「検証基準を満たすサーベイランス体制が存在すること」, 「endemicウイルスによる伝播がないことを示すウイルス遺伝子の解析データ」を示す必要がある。国内においても, 厚生労働省(厚労省)は2014年に「風しんに関する特定感染症予防指針」を策定し, 2020年度までに風疹排除を達成することを目標にし, 認定基準を満たす体制を構築するための施策の方向性を定めた。さらに風しんの追加的対策として, 過去に風疹の定期予防接種を受ける機会がなく, 特に抗体保有率が低い世代(1962年4月2日~1979年4月1日生まれ)の男性を対象として, 2019~2024年度に定期予防接種(第5期)が実施された。これらを含めた継続的な取り組みを経て, 2025年9月にWHO西太平洋地域麻疹風疹排除認定委員会によって, わが国における風疹排除が新たに認定されるに至った(本号4ページ)。

感染症発生動向調査:風疹は感染症法に基づく5類感染症, 全数把握対象疾患である(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-14-02.html)。2013年には14,344例, 2018年および2019年には年間2,000例以上の患者が届出される流行が発生した(図1)。2020年以降は患者届出数の少ない状況となっており, 特に2021~2025年は年間9-15例にとどまっている。患者届出数の多かった2019年には20歳以上が患者の約94%を占め, 特に40代を中心とする男性の届出が多かった(図2)。風疹患者の予防接種歴別割合では, 特に全国流行が発生した2013年ならびに2018~2019年において, 接種歴不明を除くと「接種歴なし」(全体の21-30%)の割合が多く, 「接種1回あり」(全体の5-8%)および「接種2回あり」(全体の1-2%)の割合は少なかった(図3)。風疹患者が少ない時期であった2014~2017年および2021~2025年においては, 上記のような患者の性別年齢別分布ならびに予防接種歴別割合の特徴は明確でない。

CRSも感染症法に基づく5類感染症, 全数把握対象疾患である(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-10.html)。風疹流行にともなってCRS患者届出数が増加し, 2012~2014年には45例, 2019~2021年には6例の届出があったが, 2021年第3週以降は届出がない(図1)。

風疹の検査:2018年以降, 原則として全例の風疹症例に血清学的検査と遺伝子学的検査の実施が求められるようになり, それ以降は検査診断例による届出割合が増加している(図4)。検査の精度管理に関する様々な取り組みが進められており, 地方衛生研究所等で実施される麻疹ウイルス・風疹ウイルス遺伝子検出による検査に対して, 内在性コントロールであるヒト由来核酸を同時に検出する方法が開発され, 検査の内部精度管理に利用可能となっている(本号5ページ)。また, 厚労省は, 感染症法に基づく行政検査を実施する公的検査機関に対し, 外部精度評価の機会を提供し, 調査結果の評価・還元を通じて精度保証の取り組みを促進し, 検査の信頼性を確保することを目的とした外部精度管理事業を実施している。2025年度の本事業では, 麻疹および風疹のウイルス遺伝子配列の解析と遺伝子型分類に関する外部精度管理が実施され, 75施設の参加があった(本号7ページ)。

予防接種率調査と感染症流行予測調査:2006年度から1歳児ならびに小学校入学前1年間の児に対し, 風疹の定期予防接種(第1期ならびに第2期)が実施されている。毎年の風しん含有ワクチンの全国接種率調査によると, 2020年度以降, 接種率の低下傾向がみられている(本号8ページ)。2024年度の接種率は第1期92.7%, 第2期91.0%であり, 両者ともに前年度からのさらなる低下が認められた。第5期対象者数は2019年度開始時点で15,374,162人であった。うち2025年3月までに抗体検査を受けた人が5,043,900人(対象人口の32.8%), 予防接種を受けた人が1,090,292人(対象人口の7.1%)であった。

感染症流行予測調査における風疹感受性調査は, 2025年度は15都道県4,148名を対象にして実施された(図5)。風疹HI抗体価1:8以上の抗体保有率は, 2歳以降の年齢・年齢群においておおむね90%以上であった(本号10ページ)。第5期予防接種対象の男性の抗体保有率は, 2016~2020年度の調査において継続して80%前後で推移していたが, 2021~2025年度の調査では80%後半まで増加が認められた。同年代の女性の抗体保有率と比較して低いものの, その差は減少した。

今後の課題:2025年にわが国の風疹排除が国際的に認定された。これは行政, 医療, 教育, 保育, 患者会, 事業所等の多くの関係者の尽力が実を結んだ成果であり(本号12ページ), 今後はこの状態を維持することが求められる。海外では, アフリカ地域を中心として定期予防接種に風しん含有ワクチンが未導入であるなど風疹対策が不十分な国が多く存在する。海外から風疹が持ち込まれた場合に国内で再流行させないことが重要であり, 予防接種やサーベイランス, アウトブレイク対応等の継続的な維持・強化が求められる。近年, 小児における風しん含有ワクチン接種率の低下が指摘されており, その対策が喫緊の課題である。対策の1つとして, 令和4(2022)年の予防接種法の改正に基づき, 現在, 予防接種事務のデジタル化および予防接種データベースの整備と活用に関する検討が進められており, 効率的かつ国民が安心して予防接種を受けられる体制の構築が期待されている(本号13ページ)。

PDF・Word・Excelなどのファイルを閲覧するには、ソフトウェアが必要な場合があります。
詳細は「ファイルの閲覧方法」を確認してください。